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烏鷺鳩(うろく)

切手・鉱物・文学。好きな事楽しい事についてのブログ

インドネシアのブルーアンバー:青く蛍光する琥珀

2018-09-04 | 鉱物


インドネシア・スマトラ島産の「ブルーアンバー」である。
「新生代 古第三紀 始新世 およそ5,600万年~3,390万年(前)の地層より出土」とカードに記載されていた。
装飾品に加工された、例えばバルト海沿岸で産出するバルティックアンバーと比べると、色が大分濃い。黒いに近いように見える。


秋葉原ミネラルマルシェで、ぐるぐる会場を巡りながら迷ったあげく、思い切って買ってみた琥珀の原石である。「原石」という言い方が正しいか分からない。英語では”raw chunk”と呼ぶらしい。「未加工(生)の塊」という意味だ。



白というかクリーム色っぽいインクリュージョンが見える。
お店の方によると、この白っぽいインクリュージョンを含む物を「ロイヤル・ブルー・アンバー」と呼び、少し希少性が高いのだそうだ。
いくつかのブースで「アンバー(琥珀)」の塊が売っていたので、色々見比べてみた。色、ツヤ、インクリュージョンの有無、そして値段。私の決め手は色とツヤ。



黒に近い琥珀色、黄色っぽい部分、赤く見えるところ。光にかざしてよく見てみると、この小さな塊に、色んな色が見える。


さて、「アンバー(琥珀)」というのは、一体どういうものだろう。

琥珀 Amber 
琥珀は、主として針葉樹の松ヤニが化石になったものである。しかし、もっと古い樹木からも琥珀に似た物質が見いだされている。琥珀は、樹木や他の植物の遺骸が化石になった亜炭にともなって産出することが多い。琥珀や、部分的に石化した松ヤニには、産出地、石化の程度、含有する他の化学物質の種類によって、鉱物に似た名称が使われることがある。たとえば、ロンドン粘土から産出する松ヤニや、似た見かけのコーパル樹脂はコーパライトとよばれる。性質が少しづつ異なる琥珀の仲間に対して、12の名前が使われている。エレクトリシティ(電気)という言葉は、もともと琥珀を表したギリシャ語のelectrumが語源である。琥珀を摩擦すると静電気が起こることに因んでいる。琥珀のこの性質は紀元前600年頃にターレスによって記述されている。摩擦電気の有無は琥珀の鑑定に役立つ。数千年の間、琥珀の最大の供給源はバルチック海に沿って、グダンスクのすぐそばからデンマーク、スウェーデンの海岸にわたって広く分布する地層であった。地層の中から採掘されるほか、嵐の後で海岸に打ち寄せられた物が回収された。(『岩石と宝石の大図鑑』p.314)


アンバーは鉱物ではなく、有機物なのである。天然の樹脂だから、とても軽い。
そして、これは気のせいかどうか分からないのだが、ほんのりと匂いがするのだ。
何というか、杉とかの樹木の匂いを濃厚にしたような、多分、男性用の香水に似たような匂いが用いられていると思う。なんとも形容しがたい匂いがするのだ。


そして、この琥珀、「ブルーアンバー」という名前の通り、UVライトで照らすと真っ青に蛍光する!



ちょっとわかりにくいのだけど、写真ではなく肉眼で見ると、まるでトルコ石のように真っ青、水色に蛍光するのである。
月光が照らす夜の海辺に夜光虫が光を発しているかのように、不思議な青い光を発するのである。

この蛍光の原因を調べて見るも、「含まれる不純物が原因」としか書かれておらず、中には、「大量の貝殻と共に見つかる事もあるので、リンが作用しているのでは」と書かれた記事もあったのだが、なかなか原因成分を明確に記述している記事が他に見つからなかった。今後も情報収集を怠らないようにしようと思う。

手のひらの中にすっぽりと収まる大きさ。なんとなく手に取って触っていたくなる、そんな琥珀。そしてついついUVライトを当ててその幻想的な光を見つめ続けたくなるのである。



【引用文献】
・『岩石と宝石の大図鑑 岩石・鉱物・化石の決定版ガイドブック』 青木正博 翻訳 (誠文堂新光社 2007年4月10日)

湖南省のフローライト(蛍石)

2018-09-02 | 鉱物


紫の透明な立方体が大小複雑に入り組んでいるように見える。
氷の塊が少しずつ溶け出し、紫色の蛍石が姿を現したかのようだ。

湖南省産のパープルフローライトである。大きな水晶の母岩の上に顔を出している。

蛍石というは、様々な色合いを表す、サファイアと同じ位カラーバリエーションの豊富な鉱物と言えるかもしれない。
非常に美しい標本に出会うと、その魅力に取り憑かれてしまうようで、フローライトは私から見ると玄人向けとも言える鉱物の一つである。
有名な産地が幾つもあり、それぞれに特徴的な美しい結晶が産出されている。

正直、私が普段ならばあまり手を出そうと思わない鉱物が、この蛍石である。ところが、この標本を目にしてしまったら、不思議な魅力に取り憑かれてしまったようだ。
秋葉原ミネラルマルシェでの漁獲の中の、coro coro stoneさんで一目惚れした蛍石である。




透明な立方体の内側に、縁が濃い紫の立方体がもう一つ入っている。
蛍石の色の原因は微量な元素の混入による。組成はCaF2、ハロゲン化鉱物の一種である。

蛍石はカルシウムのフッ化物で、明瞭な結晶形を示し、多様な色調を持って産出する。紫、緑、黄色は最も普通の色調である。微量な異質成分が含まれていないときは無色、白色になる。最大20%程度まで、イットリウムとセリウムがカルシウムを置換したものがある。着色部は結晶の輪郭に平行な縞模様を作る。結晶形は立方体が普通で、8面体はどちらかと言えばめずらしい。8面体結晶は透入双晶をつくっていることが多い。塊状、粒状、細粒緻密な状態でも産出する。紫外線を照射したときに可視光を発散する蛍光現象は、蛍石で最初に発見された。そのため蛍石の英名フローライトをもとに、蛍光現象をフローレッセンスとよぶようになった。蛍石の英名フローライトの由来は、“流れる”を意味するラテン語fluereで、金属を精錬するときのフラックスとして用いたときに容易に溶けることに関係している。蛍石の古い名称“フロースパー”は、今日では工業原料となる塊状集合体を表す言葉として用いられている(『岩石と宝石の大図鑑』p.172)

「着色部は結晶の輪郭に平行な縞模様を作る」とあるので、立方体の中の立方体は、最初にできた結晶で、その後、その上にまた結晶が成長したということだろうか。水晶の結晶で言うところの「ファントム」というものなのかもしれない。




よく見ると、手前の面とその隣の面のほぼ対角線上に紫の線が見える。一つの角を共有して、角度をずらしてもう一つの結晶構造ができたような跡なのだ。
フローライトも、「エイリアンアイ」というような、結晶が外側と内部に別の角度でできているような色合いの物があったり、かなり奥深い鉱物のようだ。




大小様々な立体が重なり合っている。



水晶らしき小さな結晶も。


今回の秋葉原ミネラルマルシェでは、普段ではまず手に取らないフローライトに心惹かれた。なんとなく、「フローライトは人気過ぎるので、あまり興味がわかない」と思っていたのだが、美しく興味深い結晶を見ると、そんな偏見も吹き飛んだかのようである。
「食わず嫌い」が一つ減ったというのが、今回の大きな収穫でもあったか。



【引用文献】
・『岩石と宝石の大図鑑 岩石・鉱物・化石の決定版ガイドブック』 青木正博 翻訳 (誠文堂新光社 2007年4月10日)

秋葉原ミネラルマルシェ 2018年

2018-09-01 | 鉱物


夏の終わり。冒険したくなる季節もあと少し。
夏の終わりに宝探しに秋葉原へ。

ということで「秋葉原ミネラルマルシェ」に行ってきた!
お仕事帰りの皆さんのために、初日の8月31日は午後4時から開場である。
(開催は8月31日~9月2日。)


実は生まれて初めて秋葉原駅に降りる。方向音痴の私は乗り換える時に、いつも「迷路だよなあ」と思っていたが、降りてみると予想以上に広々とした駅だった。
ミネラルマルシェの会場は「秋葉スクエア」という所だ。電気街口を出ろとの指示。改札へ向かおうと一階まで降りたところ・・・。



おや!? なんだこの豊富なガチャガチャの数は!!さすが秋葉原!!
ショッピングモールのガチャコーナー以上に台数がそろっているではないか?ざっと数えても100台近くが並んでいる! と・・・。



「ジュラシック・ワールド 炎の王国」のガチャ発見!!早速回してみる。



なんと!!ブルーがお出ましではないか!! これはかなり嬉しかったのだ。この「デスクトップフィギュア」のシリーズは見たことがなかった。前にストラップのガチャは見たことあったが、売り切れで悔しい思いをしたのである。
そして、このデスクトップフィギュア、ちゃんと机上で働いてくれる仕組みになっている。



ほらね!!ブルーはペンを支えてくれる仕組みになっているのだ。だが彼女、「あたし、箸より重いもの持ったことないのよね」と仰っているのか、細身のシャープペンシルを持って頂いたところ、前に倒れてしまった。だから、鉛筆までが限界なのである。かわいい。
私としては彼女にはそこに居てくれるだけで仕事や勉強がはかどるというものだ。


さて、ミネラルマルシェの会場に向かうと、もうすでにすごい熱気。
お仕事帰りのみなさんが、スーツ姿や作業着姿で石をご覧になっている。かなり広いスペースだけど、お店も人もぎっしりだった。

まずはなじみのcoro coro stoneさんへ。
今回は高級ブレスレットを激安にて提供なさっている!!信じられない値段がついてるものがどっさり並んでいた。
ブレスレットもいいのだけど、ふと目にとまったのが湖南省産の「フローライト」(蛍石)。
水晶と思われる母岩の上にちょこっとのった紫色のフローライトが面白い。
ひとしきり石話をしてお別れした。

続いてぐるぐると会場を周ってみる。
今回は、私としては珍しく、「ノープラン」でミネラルマルシェにやってきた。つまり、「あれを買おうか、これを見つけようか」といった計画をほとんど行わず、「面白い物に出会ったら買おう」という姿勢で臨んだのである。初めての事だから、どうだろう。
「ミネラルショー初心者のためのガイド」というような記事を見てみると、
「予め、欲しい石とその予算や産地などを調べて、メモをとっておくようにしましょう」
と書かれている。今までの私も、結構念入りに欲しい石について調べてショーに臨んでいた。
だが、今回は初めての試み。メモ無し!!

というわけで、今回の漁獲はこちら!



やはり色味がちょっと・・・。しかししかしである。今回の試み、大成功だったのである!
と言うのも、ちょっと希少な石(でない物も含む)、面白いものを捕獲することに成功したのだ。
左上から、「コロンビアナイト」、「フローライト」、右端のガチャは「ブルー」(正確にはこれはミネラルマルシェの会場で捕獲したものではない)。
左下が「ブルーアンバーの原石」、そしてその隣が「クトゥナホライト」(クトナホラ石)。

こちらの鉱物達(というか、この内半分は正確には石ではない)も是非、一つずつご紹介していくつもりなのでお楽しみに!


今回の秋葉原ミネラルマルシェでは、ちょっと「冷静に望む」というのができたのではないかと思う。ちょっと成長したか、私。
前もって「買いたい物リスト」をきちんと作っておくのは非常に大切なことだ。これは初心者だけでなくとも言えることだと思う。
ただ、少し慣れてきたら、今回のように、

①まずは会場を一巡りして、どんな物が何処にあるのかチェック。
②同じものが複数箇所で見つかれば、値段と質を見比べてみる。
③初めて観るものについて積極的にお店の人に尋ねてみる。

というような楽しみ方も有りではないだろうか。嗅覚を研ぎ澄まし、面白い石を発見し、出会うという楽しみ方もけっこうスリルがあるし、自分の知識を試してみる機会にもなるのではないだろうか。

万珠鉱山のヌケガラ水晶:仮晶(2)

2018-08-09 | 鉱物


非常に奇妙な水晶である。
これを売っていた作業着姿のおっちゃんが、
「万珠鉱山でとってきた。重晶石の後のヌケガラ水晶だよ」
と、おっしゃっていた。

裏側を見るとこんな感じだ。



おっちゃんが、「ヌケガラ水晶」と言っていたこの奇妙な水晶は、いわゆる「仮晶」の一種である。

重晶石というのも、板状だったり、鳥のとさか状だったりと、様々な形状をあらわす鉱物なので、こんな形というのもあり得るのだろうか。そういえば、柱状の結晶もあるらしいので、こんな角張った形になることもあるのかもしれない。

その道のプロっぽいおっちゃんとその友達が言ってたのだから、きっと重晶石の後にできた水晶なんだろう。だから、「重晶石の仮晶をなす水晶」とちょっと専門家っぽく呼んであげていいものなんだろう。




表側を見てみると、結晶がびっしり寄り集まっているらしく、こんな風にもこもことした形状になっている。半透明な色合いは、「カルセドニー」かなと思わせる。でも、よくみると、先の尖ったちっさな結晶がたくさん見えるのだ。



色も色んな色が混ざり合って、まるで色んな絵の具を置いて絵を描いているときのパレットみたいだ。



断面図を見てみても面白い。
重晶石のすぐ上を覆っていた半透明の水晶の層、その上には、酸化鉄のような赤茶色の薄い層が見える。さらにその上を正体不明の岩石の層が覆って、一番上に細かい結晶の水晶が覆っている。ざっと見てみるだけでも4層構造だ。


ブルガリアの仮晶は真っ白で、ほんのり一部ピンク色に色付いていた。繊細な感じの結晶だ。
栃木県・万珠(まんじゅ)鉱山の仮晶は、見た目は無骨なのだけど、見る度にちょっとした発見があったりして、なかなか味わい深い結晶だと思う。

なにより、これを売っていたおっちゃんの笑顔が楽しそうで嬉しそうで、なんだか忘れられなくてこれを見る度にっこりしてしまうのだ。

ブルガリアの「方解石の仮晶をなす水晶」:仮晶(1)

2018-08-06 | 鉱物



細かな氷の粒がオオカミの牙を覆っているようだ。



これは、「方解石」(Calcite)の結晶の形である犬牙状の形態を形作っている、細かな「水晶」の結晶の集まりである。

つまり、まず方解石の結晶ができる。次にその結晶を覆うように水晶が形成される。そして形成された水晶を残して、中の方解石が溶けるか崩壊して無くなる。すると、外側を覆っていた水晶だけが、方解石の形をとどめて残る。こうした結晶形態を「仮晶」と呼ぶ。



だから、結晶の内側はこんな風に空洞となっているのだ。


「仮晶」にも4つのパターンがあるので、それぞれ見てみよう。

仮晶(pseudomorph) 結晶の内部構造はその外形を変化させずに変えることはできない。内部構造がその外形に適合しないときに、その物体を仮晶と呼んでいる。
たとえばオウテッ鉱の結晶が、外形を元のままにして内容がカッテッ鉱に変じているようなものである。これをオウテッ鉱の仮晶をなすカッテッ鉱(limonite after pyrite)という。
仮晶形成作用は次の如く区分される。

ⅰ)転移(inversion)
アラレ石の結晶は結晶構造を変じてホウカイ石となるが、この場合、化学組成には何等の変化はない。これを同質異像仮晶(paramorph)という。
ある場合には外形が新しい構造の複雑な双晶作用によって保持されることがある。このような転移は物理性に何等の変化もないので、新しい相も古い相も同じ名称で呼ばれている。
・・・
同じようにセキエイ(SiO2)も575℃で高温型から低温型へと転移するが、両形ともセキエイといっている(α型、β型とは区別するが)。(『鉱物概論』p.213)


アラレ石(霰石)はホウカイ石(方解石)と同じ成分でできているが、結晶の構造が異なるのだ。同じ成分でできているが、結晶構造が異なるので異なる形状を成しているというわけだ。

ⅱ)変質(alteration)
結晶の化学組成に新しい物質の添加されたとき、または元の物質のあるものが他に移されたとき(あるいは両者)元の形態をそのままに保つことがある。その例はコウセッコウ(CaSo4)がセッコウ(CaSo4・2H2O)に、ホウエン鉱(PbS)がリュウサンエン鉱(PbSo4)に、オウテッ鉱(FeS2)がカッテッ鉱(FeSo4・nH2O)にと変化したときに観察される。

ⅲ)交代(置換)(substitution)
ある場合に結晶を構成している物質が全く同時に沈殿する他の物質の溶液中に徐々に移り去られてしまうことがある。
蛍石がセキエイまたはギョクズイで交代されてできる仮晶はその恒例である。

ⅳ)被覆、渗透、充填(incrustation, infiltration, deposition)
一つの鉱物の結晶の表面に他の鉱物が沈殿して被殻を作る例がある。蛍石の結晶をセキエイが被覆するのはその例である。
またある鉱物の結晶が溶け去ってできた空隙に別の鉱物が溶液から沈積して、元の結晶空隙を充填して、元の結晶をなすことがある。(『鉱物概論』p.214)




おそらく今回の「方解石の仮晶をなす水晶」は、この4つめのパターンの「被覆」なのではないかと思われる。


また、「トルコのクリソプレーズ」の回でご紹介したこちら



も、クリソプレーズを水晶が被覆しているパターンであり、これも仮晶の一種だということがわかった。確かに、細かな水晶の煌めく結晶を見比べると、よく似た形状である。


さて、もう一つの仮晶も次回にご紹介したいと思う。


【参考文献】
・『鉱物概論 第2版』 原田準平 著 (岩波書店、1978年11月30日)
・『鉱物の博物学』 松原聰/宮脇律郞/門馬鋼一 著 (秀和システム、2016年3月1日)