烏鷺鳩(うろく)

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湖南省のフローライト(蛍石)

2018-09-02 | 鉱物


紫の透明な立方体が大小複雑に入り組んでいるように見える。
氷の塊が少しずつ溶け出し、紫色の蛍石が姿を現したかのようだ。

湖南省産のパープルフローライトである。大きな水晶の母岩の上に顔を出している。

蛍石というは、様々な色合いを表す、サファイアと同じ位カラーバリエーションの豊富な鉱物と言えるかもしれない。
非常に美しい標本に出会うと、その魅力に取り憑かれてしまうようで、フローライトは私から見ると玄人向けとも言える鉱物の一つである。
有名な産地が幾つもあり、それぞれに特徴的な美しい結晶が産出されている。

正直、私が普段ならばあまり手を出そうと思わない鉱物が、この蛍石である。ところが、この標本を目にしてしまったら、不思議な魅力に取り憑かれてしまったようだ。
秋葉原ミネラルマルシェでの漁獲の中の、coro coro stoneさんで一目惚れした蛍石である。




透明な立方体の内側に、縁が濃い紫の立方体がもう一つ入っている。
蛍石の色の原因は微量な元素の混入による。組成はCaF2、ハロゲン化鉱物の一種である。

蛍石はカルシウムのフッ化物で、明瞭な結晶形を示し、多様な色調を持って産出する。紫、緑、黄色は最も普通の色調である。微量な異質成分が含まれていないときは無色、白色になる。最大20%程度まで、イットリウムとセリウムがカルシウムを置換したものがある。着色部は結晶の輪郭に平行な縞模様を作る。結晶形は立方体が普通で、8面体はどちらかと言えばめずらしい。8面体結晶は透入双晶をつくっていることが多い。塊状、粒状、細粒緻密な状態でも産出する。紫外線を照射したときに可視光を発散する蛍光現象は、蛍石で最初に発見された。そのため蛍石の英名フローライトをもとに、蛍光現象をフローレッセンスとよぶようになった。蛍石の英名フローライトの由来は、“流れる”を意味するラテン語fluereで、金属を精錬するときのフラックスとして用いたときに容易に溶けることに関係している。蛍石の古い名称“フロースパー”は、今日では工業原料となる塊状集合体を表す言葉として用いられている(『岩石と宝石の大図鑑』p.172)

「着色部は結晶の輪郭に平行な縞模様を作る」とあるので、立方体の中の立方体は、最初にできた結晶で、その後、その上にまた結晶が成長したということだろうか。水晶の結晶で言うところの「ファントム」というものなのかもしれない。




よく見ると、手前の面とその隣の面のほぼ対角線上に紫の線が見える。一つの角を共有して、角度をずらしてもう一つの結晶構造ができたような跡なのだ。
フローライトも、「エイリアンアイ」というような、結晶が外側と内部に別の角度でできているような色合いの物があったり、かなり奥深い鉱物のようだ。




大小様々な立体が重なり合っている。



水晶らしき小さな結晶も。


今回の秋葉原ミネラルマルシェでは、普段ではまず手に取らないフローライトに心惹かれた。なんとなく、「フローライトは人気過ぎるので、あまり興味がわかない」と思っていたのだが、美しく興味深い結晶を見ると、そんな偏見も吹き飛んだかのようである。
「食わず嫌い」が一つ減ったというのが、今回の大きな収穫でもあったか。



【引用文献】
・『岩石と宝石の大図鑑 岩石・鉱物・化石の決定版ガイドブック』 青木正博 翻訳 (誠文堂新光社 2007年4月10日)

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