「えっ?ええ? ああ・・さ、三号絹糸です・・」といったら、「おまえなぁ~太い腋窩動脈に3号は細すぎるだろう。ほら、もうはじけそうだぞ!」と怒られた。そうだ、これでは細すぎた。またやっちまった。でもあの現場の壮絶な状況で出血をとめるために血管を糸で縛るという発想があっただけ自分ではよしという感覚であった。患者の頭側にたって麻酔をかけながら術野をみるとこちらも壮絶であった。まさに上腕が骨と皮のみで肩にくっついているという感じであった。筋肉は断裂すると収縮して奥に引っ込んでしまうようだ。その両端をさがして引っ張り出す作業も大変そうだった。そして延々と手術は続き、断裂した血管や神経を縫合し、そして挫滅した筋肉などもできるだけ可及的につなぎ合わせた(ようだ)。左腕に血流は再開しピンク色に戻った皮膚色を見て、どうやらうまくいったらしいのは素人研修医の自分にも理解できた。まあ手術の成功に自分も少しは加担できたのだろうと勘違いしながら少しまた嬉しくなった。