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吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています

宙ぶらりん その2

2011年07月13日 06時42分07秒 | インポート

 病院の救急車で現場の工場につくと、工場長らしき人が「おぉ助かります。すみませんこちらですと」いやに天井の高い現場まで案内してくれた。現場は本当に地上4mくらいの足場であり、左上腕を機械の歯車に巻き込まれてまさに「宙ぶらりん」状態の工場職員がうんうんと唸っていた。幸い周囲に飛び散っているような大出血はない。傷病者周囲の人だかりが私の到着を見ると、ささーっと動き、自分の前に導入路がひらけた。まさにモーゼの十戒で海の中に突然道が開けたような印象であった。しかし「ち、ち、違うんだ。自分はそんな実力があるような大それた医者じゃない。ただの研修医なんだ」と叫びたい心境であった。まあ昔の話で、しかも田舎での事である。若造が立ち入るには荷が重すぎる場面ではあったが世の中はきっと大らかだったのだろう。でもその時は頼れるものは自分しかいないと身震いがした。「こんなことするのは初めてなんだけどなぁ・・」と口の中でつぶやきながら医者とは因果な職業であると実感したのである。