『傘』
① 《「笠」と同語源》雨・雪・日光などがじかに当たらないように、広げて頭上に差しかざすもの。竹や金属の骨に紙や布をはり、柄をすえて開閉ができるようにしたもので、「笠」と区別するために「さしがさ」ともいう。「―を差す」
② 一本足に目がついていると、妖怪。
「・・・ふっ、男に傘など、必要ない・・・」
そううそぶいていたのは、いつの頃だったか・・・ハードボイルドは傘などささず、レインコートとボルサリーノで雨に打たれるまま・・・なものだが、こんな夏に近い季節では、そんな暑い格好は出来ない。
だからと言うわけでもないが、傘は一応持っていた。どこかで貰った、折り畳みの、やけに小さい傘だ。会社で乾かす度に子供用と間違えられ、雨の日はいつも靴だけでなくズボンもびしょ濡れ・・・
「・・・そろそろ、新しい傘でも、買うか・・・」
ある給料日の翌日、おれはデスクの横の窓に打ち付ける雨を眺めながら、そう決意した。飲食物と本(大人用)以外はここ数ヶ月購入していない貧乏・・・いや、エコなおれは、会社帰りに東急ハンズへと向かった。デパートでブランド物など買わずに、東急ハンズでお買い物・・・この辺がまたエコだと、自画自賛しながら。
東急ハンズで傘売り場へと向かったおれは、さっそくハードボイルドな一本を探し始めた。すると・・・
「・・・な、なんだ、これは・・・!!」
おれは、驚愕の一本を見つけた。いや、一本だけではなく、数本あったが・・・ともかく、その傘は、折り畳みにも関わらず、ボタン一押しでバサッ!と開いた。
「・・・い、いや、それだけでは博識なおれは驚かない・・・しかし・・・!!」
おれは、その開いた傘の根元にあるボタンを、もう一押しする。すると、なんとその開いていた傘は、自動的に閉じるのだった・・・!こんな高次元な傘が存在するとは・・・ここは未来か!?おれは驚きを隠しきれず、傘売り場に数人の客がいるにも関わらず、その後数回は傘を開閉した。その後、他の傘を手にとっては、ボタン一押しで傘の開閉を繰り返した。かなり、楽しかった。だが、いつの間にか傘売り場に他の客はいなくなっていたが。
「2500円になります♪」
「・・・」
不機嫌になったのは、レジのお姉さんがあまり可愛くなかったからだけでは無い。低年収…いや、無駄遣いをしないおれにとって、たかが傘の為に2000円以上の出費をするのは、非常に痛かった。さらに、20回払いも断られていた。
しかし・・・このボタン一つでの自動開閉、止められなかった。おれは次の雨はいつ降るかウキウキしながら、しっかり雨が止んで星空が覗く帰り道をスキップを交えながら歩いた。その後、その傘の重さと、ボタンで閉じても手動で短くしてくるくる巻く面倒臭さに辟易したのは、言うまでも無い。
そして、傘を家に忘れ、濡れながら帰路につく日が続いているのも、これまた言うまでも無い。
【続く】
Reo.
① 《「笠」と同語源》雨・雪・日光などがじかに当たらないように、広げて頭上に差しかざすもの。竹や金属の骨に紙や布をはり、柄をすえて開閉ができるようにしたもので、「笠」と区別するために「さしがさ」ともいう。「―を差す」
② 一本足に目がついていると、妖怪。
「・・・ふっ、男に傘など、必要ない・・・」
そううそぶいていたのは、いつの頃だったか・・・ハードボイルドは傘などささず、レインコートとボルサリーノで雨に打たれるまま・・・なものだが、こんな夏に近い季節では、そんな暑い格好は出来ない。
だからと言うわけでもないが、傘は一応持っていた。どこかで貰った、折り畳みの、やけに小さい傘だ。会社で乾かす度に子供用と間違えられ、雨の日はいつも靴だけでなくズボンもびしょ濡れ・・・
「・・・そろそろ、新しい傘でも、買うか・・・」
ある給料日の翌日、おれはデスクの横の窓に打ち付ける雨を眺めながら、そう決意した。飲食物と本(大人用)以外はここ数ヶ月購入していない貧乏・・・いや、エコなおれは、会社帰りに東急ハンズへと向かった。デパートでブランド物など買わずに、東急ハンズでお買い物・・・この辺がまたエコだと、自画自賛しながら。
東急ハンズで傘売り場へと向かったおれは、さっそくハードボイルドな一本を探し始めた。すると・・・
「・・・な、なんだ、これは・・・!!」
おれは、驚愕の一本を見つけた。いや、一本だけではなく、数本あったが・・・ともかく、その傘は、折り畳みにも関わらず、ボタン一押しでバサッ!と開いた。
「・・・い、いや、それだけでは博識なおれは驚かない・・・しかし・・・!!」
おれは、その開いた傘の根元にあるボタンを、もう一押しする。すると、なんとその開いていた傘は、自動的に閉じるのだった・・・!こんな高次元な傘が存在するとは・・・ここは未来か!?おれは驚きを隠しきれず、傘売り場に数人の客がいるにも関わらず、その後数回は傘を開閉した。その後、他の傘を手にとっては、ボタン一押しで傘の開閉を繰り返した。かなり、楽しかった。だが、いつの間にか傘売り場に他の客はいなくなっていたが。
「2500円になります♪」
「・・・」
不機嫌になったのは、レジのお姉さんがあまり可愛くなかったからだけでは無い。低年収…いや、無駄遣いをしないおれにとって、たかが傘の為に2000円以上の出費をするのは、非常に痛かった。さらに、20回払いも断られていた。
しかし・・・このボタン一つでの自動開閉、止められなかった。おれは次の雨はいつ降るかウキウキしながら、しっかり雨が止んで星空が覗く帰り道をスキップを交えながら歩いた。その後、その傘の重さと、ボタンで閉じても手動で短くしてくるくる巻く面倒臭さに辟易したのは、言うまでも無い。
そして、傘を家に忘れ、濡れながら帰路につく日が続いているのも、これまた言うまでも無い。
【続く】
Reo.