稲敷資料館日々抄

稲敷市立歴史民俗資料館の活動を広く周知し、文化財保護や資料館活動への理解を深めてもらうことを目的にしています。

骨董市と文書目録作成

2012年09月08日 | 日記

実習生のK子です。

実習レポートの続きです。


9月2日(日)

この日はお隣の香取市の八坂神社の骨董市に出向き、
資料収集活動の実地研修ということで各種資料の市場調査を行いました。

…が、朝からあいにくの雨で、あまり出店されていませんでした…
それでも、陶器をはじめ、戦時中のお弁当箱や勲章、
アンティークの時計など様々なものが並んでいました。
今度は賑わっているときに足を運んでみたいです。

ちなみに、雨が降らなかった去年の写真だとこんな感じの様子らしいです…


骨董市には、時折、資料館の担当者でも見たことの無いような
資料が出てくるということで、モノを見ながらモノを学ぶ、
そして市場の価格を調査する、色々なことが市場では学べる
のだそうです。

また、佐原は稲敷市から近いので、稲敷市の文化財クラスの資料も
極く稀に出てくる、とのことでした。

佐原の旧三菱銀行や小堀屋そば店、小野川沿いの街並みなどを見て歩きました。
ここでも伊能忠敬の旧宅が工事中で見学ができませんでした。
それでも小野川沿いは柳の並木がきれいです。



帰りには横利根川の閘門を見て帰りました。





9月5日(水)

この日は資料館にて、浮島・宮本市郎兵衛家の資料台帳の作成を行いました。
資料は未整理で、段ボール箱にたくさん。。。
一冊一冊、タイトルや出版年、著編集者などを調べていきます。



この日担当した資料の多くは、農会の会報でした。
土がついており使用感たっぷりのものや、虫害が酷くなかなか開けないものなど、
様々な状態の資料を目にし、手にすることができました。
文書というと、普段は博物館に展示してあるきれいな状態のものや
複写本などを目にすることが多いので、
貴重な体験をすることができました。


今回は資料収集から整理の段階を経験しました。
展示ケースに並んでいるきれいな状態のもの、それ以外にも
表には並ばないたくさんの資料があり、それらをどう扱っていくかが
博物館や学芸員の仕事のポイントになると思います。


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様々な仏像

2012年09月08日 | 日記

実習生のK子です。

早いもので稲敷市の資料館での実習も終了してしまいました…。
これから後半で行った実習の内容を紹介させていただきます。


9月4日(火)

この日は仏像取扱実習を行いました。

まずは仏像を借用し、研修の会場まで運搬します。


今回、特別に実習のため借用させて頂くのは、遺存高が約140㎝ほどの
木造天王立像です。長さ180㎝ほどの桁に載せて運搬する計画です。



綿座布団やエアパッキンでクッションを作り、それらを桁に取り付け、
その上に仏像を仰向けに寝かせます。



足先や顔など養生が必要な部分や、ひもが当たる部分は中性紙や綿座布団などで手当します。
この天王立像は、内刳り(うちぐり)を施していない一木造りなので、とても重く、
また虫害や腐食が進んでいたため御像を傷めないよう細心の注意が求められました。

梱包が終了した仏像です。



この状態の仏像を、資料館の学芸担当の指導の下、
今回は仏像運搬が初めてという3人で運び出しました。

***

その後、研修先の神宮寺にて、この日の講師を務めてくださった仏師の小松崎卓さんと合流し、
同寺の聖観音菩薩立像と、借用してきた天王立像とを見比べながら解説を頂き、拝観しました。


こちらは神宮寺の聖観音菩薩立像です。
平安時代末の作品で、茨城県の有形文化財に指定されています。
木造の寄木造で、虫害が多かったものを小松崎さんが修復し、今の状態となっています。

背中側から内側を刳り抜いてあり、背板と呼ばれる板を当てています。
横から見ると木材の丸みがあまり感じられず、平たい印象があります。
また、割首といって、一旦制作した御像を首から上下に分割し、
後で付け直しています。



こちらは私たちが運搬してきた天王立像です。
内刳りの無い一木造で制作されています。

両肩より先、そして両足首より先を欠失しており、自力で立つことができません。
表面にも虫害や腐食、摩耗、干割れが目立ちます。
特に側面から見ると一本の丸太材から彫り出したことが感じられる、
厚みのある丸い印象があります。
時代は平安時代のもの、との学芸担当者のお話でした。


1枚目が天王立像の頭上からの撮影、2枚目が足先側からです。
頭上から右の太もも付近に木の芯が通っており、一木造であることがうかがえる他、
表面には沢山の節が見られます。このことから、この材木はそれほど大きく無く、
用材としては造像にあまり適さないモノを敢えて選んでいることも分かります。
このような場合、仏像制作に用いられた材木が御神木等の特殊な材だったことなどが
考えられることもあるそうです。


***

この日の午後は仏師の小松崎さんのアトリエにお邪魔し、お話を伺いました。


仏像を彫るのに使用される代表的な木材を、実際に手に取って見せていただきました。
楠、カヤ、檜、白檀、桜などです。
一つ一つ、色味や重さ、香りが違っており、とても興味深いです。

仏像に使用される木材は、これら代表的なもののほかに、
ご神木や雷に打たれた木など加工しにくくても
特別の意味を持って使われている木材というものがあるそうです。

ご神木で仏像を彫る…。
そこには神仏習合や「木」という素材にこだわってきた日本人の
感性がうかがえるようです。

このように仏像を見てみると単なる美術品としてではなく、
信仰の対象として造られていた様がよく表されていることに気付きます。


小松崎さんが仏像を彫るのに使用しているノミです。
反りや刃の向きなどがすべて違っており、彫りやすいよう使い分けたり作ったりされているそうです。


生漆を材料と混ぜているところです。
漆は、麦漆やコクソ漆、サビ漆など、混ぜ合わせる材料によって呼び名が変わり、
それぞれ接着剤やパテ、下地材の役割をします。
コクソ漆は木粉や上新粉などを混ぜて作ります。
これを虫害で空いた穴などに埋め込み仏像を修復します。


小松崎さん制作の仏像のミニチュア。隣に写っているのはカメラのレンズキャップで、直径6cmほどのものです。
手先の器用さがうかがえます。


仏像についていろいろなお話を伺うことができました。
仏像には制作者の魂がこもっており、それが各仏像の迫力に現れていると強く感じました。

***



帰りには妙香寺に立ち寄り、県指定文化財の薬師如来立像を拝観しました。
高さ4.8mの寄木造の仏像です。
震災にも負けずに佇んでいる姿は圧巻です。

この日だけで様々な仏像と出会う事が出来ました。
普段1つ1つ拝観することの多い仏像ですが、製作技法などを間近で比較しながら
見てみるのも興味深いです。



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資料館内大掃除&資料の写真撮影

2012年09月03日 | 日記

8月31日(金)
館内清掃、写真撮影

実習生のK子です。
この日は、館内整理日で資料館は閉館し、大掃除を実施しました。
市町村合併後、江戸崎や新利根などから新たに入ってきた資料や図書、
新たに作った館報などが床をふさいでいたため、それらを一旦外に出し、
半年に一度の床掃除を行います。




物を運び出した後の燻蒸室兼物品庫です。
床掃除後、資料の燻蒸を兼ねてバルサンを焚きました。

展示室では、吸湿剤の取り換えを行いました。
展示ケースの床下には、ニッカペレットという吸湿剤が入っています。


この交換を行うには、展示ケースの中に入る必要があります。
そのために、まず展示中の資料を外したり退けたりします。


企画展示中の掛け軸の取り外しです。


第三展示室のケースの中での作業の様子です。
大型の資料が多く、簡単に出し入れができないため、
資料と共に展示ケース内に入り交換を行いました。

絵画や掛け軸など様々な資料に触れられる機会であり、
緊張もしましたが良い経験となりました。



この日の午後は、資料の写真撮影をしました。
被写体は、現在企画展示中の、鈴木草牛の『江戸崎風景』と『新利根川』です。

ポスト塗替えや掃除の様子など記録用の写真は一眼レフデジカメで撮影していますが、
ポスターや図録に使用する資料を撮影する時には、6×7の中判のフィルムカメラで撮影します。
普段からイチデジを愛用しているカメラ女子の私でも見たことのないような立派なカメラです。


図書館の会議室を借り、ボードで窓から入る光を遮断し、写場を作りました。
完全に光を遮断できませんでしたが、この中で資料にライトを当て撮影します。

フィルムカメラはデジカメと違い、撮影した写真をすぐに確認できないので、
ポラロイドで撮影し露出やアングルを調整していきます。

この日私たちは1枚の絵のアングルを決めるのに1時間近く要しました…。
まだフィルムで撮った写真を現像していませんが、
出来上がりが心配でもあり楽しみでもあります。

学芸員の仕事には、企画展や講座開催など華やかに見える仕事もたくさんありますが、
それを行うまでの準備だったり、資料保存の為に行う地味で体力勝負といった作業もたくさんあります。

実習はあと1週間です。
学芸員の仕事は数え切れないほどありますが、できるだけ多くの経験をしたいと思います。

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郵便差出箱一号丸型(丸型ポスト)のペンキ塗り替えをしました!

2012年09月02日 | 日記

博物館実習生のK子です。

8月28、29日と屋外展示の丸型ポストのペンキの塗り直しをしました。
以前のポストはこのような状態でした。



全体的に紫外線に焼かれて色褪せていたり、塗料がはげたり浮いたりしているのが目立ちます。
まだまだ厳しい夏の日差しを避けるためテントを立て、ポスト再生作業のスタートです。

まずは現在の塗装を落とします。
浮いている塗料の上からではきれいに塗れないだけでなく、
そこからポストが錆びやすくなってしまうからです。
グラインダーで塗料を大まかに落としたあと、細かな部分をサンドペーパーで磨き、
最後に、洗剤でポストを洗い、油分を落としました。



塗料の浮いている箇所や塗りムラがなくなり、つるつるになりました。
白字部分もすっかり色が落ちてしまいました。
本来ならば、以前のペンキはすべて落とし下地を作るのですが、今回はそこまで手が回らず…。
ある程度落としたところで、次の作業に移ります。

土台の石に塗料がつかないよう、新聞紙で養生して塗装します。
まずは、下地となる白いペンキを使いポストを塗っていきました。
下地を白で塗ることで、ポスト本体が錆びにくくなり、上から塗る赤の発色もよくなります。
また、もし白いペンキが下から出てくれば、再び塗替えの時が来たことを知ることもできます。



真っ白の斬新な(!?)ポストが出来上がりました。

この珍しい白色ポスト、このまま単純に真っ赤に染めるのは味気無い…。
ということで、急きょ、この真っ白なポストに記念を残そうということで、
来館していた皆さんに呼びかけ、メッセージを書いていただきました。
イラストや夢、抱負などみなさん思い思いに描いてくれました。



参加してくださったみなさん、ありがとうございました!
願いが叶うといいですね。

さて、いよいよポストを本来の赤い色にする作業へと移ります。
みなさんの想いが強くこもっているのか、一度の塗りでは書いて頂いたメッセージがまだ浮き出ていました。
赤いペンキは簡単に落ちたり褪せたりしないよう、数度塗り重ね、厚塗りしていきます。



今度は全身真っ赤なポストが出来上がりました。
この赤い塗料が乾いた後、ポストの顔、白字の部分を塗って完成です!




最初の状態と比べ、見違えるようにきれいになりました。
赤が鮮やかで、屋外展示の中でもひときわ目立つようになったと思います。
来館した際は、目にとめて見てみてください。
このポストに下には、みんなのメッセージが込められているのですから。

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石臼の修理と団子作り実験

2012年09月02日 | 日記

8月28日(火)。

実習生のM子です。
この日には、石臼の修理を行いました。

修理前の石臼は軸受が壊れ、粉を挽けない状態でした。


①下臼の中心の穴に詰まっている、「壊れた軸受の撤去」から作業が始まります。
石臼の中心の穴に詰まっているものを取り出すと、錆ついた金属の心棒と、
これを支えていた木製の軸受が出てきました。
心棒は先がとがり、和釘状で木製軸受に打ちつけられていましたが、赤錆にまみれ、
とても使用できる状態ではありませんでした。


②次の行程は「軸受作り」です。
新しい軸受を作り、下臼の穴にはめ込みます。
心棒にはステンレス製のネジを、木材には桧を使い、壊れにくい軸受を目指しました。
心棒は金属用のこぎりを使い、事前に計っておいた長さ(下臼から1.5㎝出る)に切断しました。

桧は必要な分だけ切断し、穴の内径(2.87㎝~3.19㎝)に合わせるために、
角材を鉈と金づちで裂き、それでも足りない部分はノミなどで削り、丸く成形していきました。
資料館の皆さんから多大なる助力を得て、長い時間をかけて進めていきました。


③下臼の穴に木材をあてがいながら成形を進めていき、入ったら完成です。
心棒が中心から若干ずれてしまいましたが、ぴったりとはまる軸受が出来上がりました。


しかし、ここで問題が…。
実際に粉を挽いてみると、手応えがあまり無いことが判明しました。
原因は「心棒が長い」こと。ここで、心棒の長さを調整しました。

心棒を金ヤスリで削り、短くしていきます。
徐々に削っていきましたが、非常に時間が掛りました。



8月30日(木)。

④この日は、「石臼表面の調整」を行いました。
修理が終わった石臼でしたが、実際に粉を挽くと、上手く挽けないことが分かりました。
原因は「下臼の表面が平坦でない」こと。均等に粉が挽けるように、表面の調整をします。

計ってみると、かなり傾きがあることが判明しました。

まずは、チョークで表面を塗り、石臼を空挽きして、当たっている部分を見つけ、
その部分に印を付けます。


そして、出っ張っている部分をサンダーで削ります。


「チョークで印を付ける→削る」この一連の作業を、表面が平坦になるまで繰り返します。
平坦になったことを確認して終了です。


⑤次に「石臼の目立て」を行います。
ノミと金づちを用いて、外側まで溝を作り、目安が出来次第、ノミで削って溝を深くします。



⑥最後に石臼を実際に挽き、米粉を作りました。


最初は力が要るため、手で石臼を掴んで回し、馴れてきたら取っ手を掴んで回します。


完成した米粉がこれです。



○団子作り

石臼で挽いた米粉を使って、団子を作りました。
米粉に水を混ぜ、手で練って、成形します。


団子を茹で、醤油と砂糖で作ったみたらし団子のたれをかけて出来上がりです。



講座にすることを目指して粉を挽き、団子を作りましたが、石臼の粉のようなものが入って
しまいました。講座にするレベルに持っていくには今後の研究が必要、という結論が出ました。


まとめ
私は今回の博物館実習を通し、利用者として来館するだけでは知り得なかった、学芸員として、
博物館職員としての業務がどれほど多くあり、いかに大切かという点に気付く機会を得ました。
また、自分の知識がいかに少ないかという点について、改めて考えさせられました。
 特に印象に残っているのが「石臼の修理と表面の調整」で、事前に調べて臨みましたが、
実際に作業してみると、非常に時間がかかり、手間取ってしまいました。事前の研究がどれほ
ど重要かを学びました。今回の石臼の研究のように、自分なりにテーマを設定して、何か一つ
のものを探求していくのも面白いのではないかという発見をしました。
 様々な体験をすることができ、非常に勉強になりました。








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