ちぎれ雲

熊野取材中民俗写真家/田舎医者 栂嶺レイのフォトエッセイや医療への思いなど

沼津市江浦(えのうら)の水祝儀

2014-01-20 | 民俗・信仰
 寒中お見舞い申し上げます。
 今年は喪中なので、寒中お見舞いからご挨拶申し上げます。

 …といういきさつもあって、お正月はめずらしく実家のある静岡に帰りました。
 生まれ育った土地の民俗や行事は意外に知らないとかよく聞きますが、私も例外ではなく、成人した後、実家に寄りつかなかったのもあって、静岡の民俗行事にはほとほと縁がありませんでした。

 というわけで、せっかくなので静岡のお正月行事を見てみよう~。

 1月2日は、朝は熱海市下多賀・下多賀神社の「水浴びせ式」を、晩は沼津市江浦・住吉神社の「水祝儀」を見学してきました。どちらも、昨年結婚した新婚男子に清めの海水をかける行事です。伊豆半島のくびれの東側と西側に残っているという位置関係も面白い。

 熱海市下多賀の方が、本当にササにつけた海水をチョンチョンと新郎にふりかけて「清める」という感じなのに対して、沼津市江浦の方は、文字通り「ぶっかけ」ます、樽ごと宙を舞い(!)ます。新郎はびしょぬれの濡れねずみ。(↑上の写真)

 この沼津の水祝儀、試練を与えることで成人の仲間入りをさせるという成人式の意味合いで説明されていることもあるのですが、取材してみると実際は、結婚した男性が、所帯を持ったことで、昔から集落の男性が必ず所属した青年団(10代をメインとした男だけの集団)から脱退し、新たに集落の成人の団体に入会する祝いの式なのでした。
 なので、一般的には水をかける所が有名ですが、祭事自体は、新郎に後見人(添婿)がついて集落の成人に迎え入れる「レイ酒」と呼ばれる儀式がメインでした。
(男性のみ参加と聞かされて「?」と思っていたのですが、これも青年団の入退会の儀式とわかれば理解しやすいですね)

 だから、青年団の男子たちからすれば、友が結婚して仲間から抜けて行く淋しさもあるし、所帯を持ったことや成人の仲間入りをしたことへの盛大な祝福とともに、羨ましさややっかみが入り交じっているわけです。

 まさに、
「このヤロー、幸せになりやがれ、この幸せもの!!」(と実際に言ってるわけじゃないですが)
 (写真の上の方で、水をかけた人たちがみんな、祝福の喝采を送っているのが見えるかと思います)

 昔は青年団がすべて取り仕切っていたそうです。

 この後20時半から、青年団がふんどし姿で松明を掲げ、集落内の祠を参拝してまわる裸参りが行われたはずですが、そんな時間に小さい子供を連れて追いかけるのは無理なので断念しました。昔はたくさんの祠をまわったそうですが、今は8カ所ほどに減ったとのこと。

 見学できなかった所は、また改めてじっくり見に来たいと思いました。

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