4月です。病院も新人や、異動の季節です。
北海道内の知人医者が、新しく異動してきた医者はもう卒後3年目だか4年目になるのに、1から全部教えなければいけないとボヤいていました。
その医者自身の問題では全然なく(やる気のある頭のいい先生であるとのこと)、首都圏の大きな病院から来たことが、実は問題のもとになっていました。
現在、新人医者は(昔のように医局が決めた病院に強制的に派遣されるのではなく)自分で探して好きな病院で研修することができます。それで、多くの研修医が首都圏の大病院に殺到し、地方と首都圏の格差、大病院と小規模病院の格差が生まれてしまっています。
ところが、溢れるほどに医者が集まった大病院では、一人あたりの研修医が受け持たせてもらえる患者の数や、やらせてもらえる検査などが格段に少ないのでした。さらに、なまじっか医者がいるので、専門分野はさらに細分化し、そこで専門に研修した医者は、その分野以外がわからない、という矛盾した状況が生まれてしまっているのでした。
地方の病院では、新人と言えども、泣きながらでも一人で何でもやらされます。受け持たされる患者の数も半端じゃない。数分野にわたって対応することも求められます。
そんな地方病院に、前述のような大病院で細分化された専門をもっぱら研修してきた医者が来ても、たとえ3年目4年目の医師でも、すぐには戦力にならないのです。へたすると、地方でもまれてる新人研修医の方がはるかに色々知っていたりする。
現在、ひたすら医者の「数」を増やすことが言われているけれど、実際「数」だけ揃えても、研修してきた内容によって、「人数相当」にはならないことにも注意しなければなりません。首都圏の大病院だから良い研修、とは限らないのです。
思えば、私が卒業したてのまだ15年も前の時点でも差はありました。私がいた東北地方では、当時もうとにかく医者が足りないから、学生のうちに毎日のように手術室に入って手伝わされ、挿管もできるよう訓練されていました。命の助からないような手術や、いろんな患者さんに接しました。学生時代の夏休みは「憧れの北海道に行ける」というだけの理由で、北海道内のあちこちの病院で、武者修行のように実習してまわりました。卒業して、他の地域から来た同じく新人医師と会ってみると、まだ手術室に入れてもらったことのない医者や、喉頭鏡を使わせてもらったことのない医者がいてびっくりしたものです。医師不足の東北・北海道の方が、はるかに勉強になっているのでした。
だから、新人研修医にこそ言いたい。研修は地方でしろ! 先輩医師たちは、早く独り立ちするよう本気で熱心に教え(そうじゃないと医師不足で大変だし!)、経験できる分野や内容や患者数は半端じゃないです。そして、地方の地域の人たちが、患者として、かつ、近所の生身の隣人として、新人医者を育てていくと思うんですけど。どうでしょうかね。