ちぎれ雲

熊野取材中民俗写真家/田舎医者 栂嶺レイのフォトエッセイや医療への思いなど

警戒情報(避難勧告)はどこまで有効か

2013-10-30 | 危機管理と災害
2011年9月の台風12号で那智勝浦町を襲った土石流の一つ。


 先日10月16日未明に、台風26号で発生した大島の広範土石流で、避難勧告のあるなしが議論になっています。
 40名を越える犠牲者不明者のニュースに、2011年に紀伊半島を襲った台風12号被害を思い出しました。

 当時私は、地元の熊野新聞に、自宅が土石流に丸呑みにされたにもかかわらず助かった人の例を紹介し、被害を最小限にとどめるには、「この程度で?」「結局何も起こらなかったら恥ずかしい」etcという気持ちは一切取り払って、個人一人一人のレベルで、とにかくこまめに逃げる(避難する)習慣をつけておくしかないことを書きました。(熊野新聞2011年9月26日記事。有料100円かかりますが、新聞オンライン(http://www.shimbun-online.com)で読めます。2面まるまる記事です。)

 ちなみに私が取材した人は、普段から大雨になると車で平坦な峠まで出て、車中泊していたそうで、台風12号の時は4度目の避難でした。斜面にあるその人の家が土石流で流される1時間前のことでした。
 (被害の写真は当時の私のブログ→ http://blog.goo.ne.jp/reitsugamine/e/d6b37123d1c62a17e993c14a9f83ba34

 この台風12号の時も、紀伊半島の市町村が避難勧告を出そうか迷い始めた時には、すでに川は増水し、雨もひどくなり、真夜中で、「避難を促したら、逆に怪我や遭難を引き起こしてしまうのではないか?」という状況になってしまっていました。(それで迷っているうちに勧告が遅れ、みんな流されたり、崖崩れにのまれてしまった。今回の大島町の状況によく似ています)


  では、実際に避難勧告はどのくらい有効なんでしょうか?

 ここに、興味深い資料があります。
 国土交通省が出している、 「土砂災害警戒情報の運用成績」という報告です。
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/dosya/24part1/24-1-shiryo3.pdf
 平成20年(2008年)から紀伊半島大災害の平成23年(2011年)までの4年間の、災害警報発令と、実際に災害が起きたかどうか、避難は的確に行われたか、をまとめたものです。

 私が一番驚いたのは、
「警戒情報が発表されて、実際に災害が起こった率は、わずか3.5%(4年間平均)」
 
 つまり、避難警報なり避難勧告なりが出て100回逃げても、実際に災害に遭遇するのは3回か4回ということです。
 残りの96回か97回は、「なーんだ、何も起こらなかったじゃん」「無駄足だった」「逃げちゃって、恥ずかしー」という状況になるわけです。
 この数字を多いとみるか、少ないとみるか。
 96回か97回は大丈夫なんじゃん、と軽くみていると、その3回か4回に巻き込まれて、ひどい時には命を落とすことになる。
 最初から100回逃げるくらいの心づもりでいないと、その3回か4回の災害を回避することができない、ということなんです。

 じゃあ、警戒警報はそれだけ精度が悪いんか?ということになってしまうかと思いますが、すぐ下のデータを見るとそうでもない。「災害捕捉率」、つまり、災害が起こった時に、実際に警戒警報が発表されていた割合は75.1%。4分の3は、災害を見逃すことなく発表をしていたことになります。

 ……と書きつつ、私が次に驚いたのは、ここでした。
「起こった災害のうち、警戒警報が発表されなかったものが4分の1(災害見逃し率24.9%)もある!」
 つまり、災害全体のうち4分の1は、警戒警報とは無関係に起こっている、警戒警報が出ようが出まいが、災害に遭遇する時は遭遇する、ということです。

 これに加えて、3つめに重要だと思ったデータは、
「災害のうち3割は、警戒警報が発表される前に起こっている」
 警戒警報が発表された時には、3割はもう起こっちゃってるんです……。

 行政が警報を出すのが遅すぎるんじゃー!と責めるのはたやすいですけど、4年間の全国の平均でこれですからね。「ではもっと早く警報を出すようにしよう!」と、行政が少々の予測でも警戒警報を出すように努力すれば、上記の「3.5%」という数字はもっと下がってしまうわけで……。

 ………結局のところ、行政からの警報とか勧告とかに頼り切るのは命取りだということです。
 おかしいと思ったら、自分でさっさと逃げておかないといけない。200回くらいは、たとえ無駄足でも、逃げるつもりでいるしかないんです。
 
 さらにデータは続きます。
「災害の半分(5割)は、警戒警報発表1時間後までに起こっている」
 3割は発表前に起こってしまっているわけですから、災害のうち2割が、警報発表後1時間以内に発生している計算になります。
 つまり、警戒警報が出たらボヤボヤしている暇はない。災害の半数はすでに起こっているか、あと1時間のうちに起こる、躊躇しないですぐさま逃げろ!!ということになります。その100回のうち96~97回は無駄足かもしれなくても、です。

 ということで、

警戒警報が出なくても、自分で逃げないといけない。
警戒警報が出たら、もっと逃げないといけない。
何はともあれ、何回でも逃げる、無駄足でも恥ずかしくても逃げる。
そうでなければ自分の身は守れない。


(実際それで命が助かったのが、熊野新聞に書いた人の例だし)
 ……というのが私の結論です。
 

こちらは、2011年9月の台風12号、新宮市熊野川町の被害

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苫小牧演習林

2013-10-30 | 写真
 前の投稿で、苫小牧は紅葉綺麗じゃないです、と書いてしまったので、それでも苫小牧の綺麗な所を紹介。
 北大の苫小牧演習林です。森あり、湖(湧水)あり、森の中の小川あり、樹木園(様々な北方圏樹木が植えられている)あり、毎年春にはクマゲラの繁殖も見られます。ここも市民の憩いの場所になっていて、ジョギングする人やバードウォッチャー、デートの学生さんなど、いろんな人が歩きに来ていました。

 札幌近郊のように、山1つがまるごと紅葉というのではないけれど、秋深い北海道の森の美しさを堪能できる場所です。

 ちなみに息子は、お約束というか、やるだろうなーと思っていたら本当にやったというか、上の写真の直後、川にボッチャンしました(汗) いや、お着替え持ってたからいいんですけどね。本人的にはびしょぬれがヒットだったのか(?)「お池にはまってさあ大変~♪」とか歌ってハイになっていて、本人としては楽しかったみたいです………(_ _;;; 川は危ないんだよというのを言い聞かせる良い機会にはなりました(汗)

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