返答に困っていると、春菜さんが木刀を置いて話し出した。
「大丈夫よ。そんな返事するわけないし、そもそもこんなこと訊くわけないでしょ。
口裂け女じゃあるまいし」
「は、はあ……」
まだ何も言ってないのに『大丈夫』って言われちゃった。
春菜さんにはセンの考えが解るのかな。自分でもよく解らないのに。
本当になんなんだろう?
「日永君と逢ってから四日目か……」
独り言のように春菜さんが呟いた。
「ねえセン」
と思ったら、今度は真っ直ぐこっちに視線を向けた。
「なんですか?」
「あの日……日永君が神社に来た日、
もし私が通りかからなかったら黙って出て行くつもりだった?」
「…………はい」
そう訊いてくるってことは、解っているんだろう。嘘ついても無意味なんだろうな。
「そう……」
「あ、あの、別に春菜さんが嫌いになったとか、悪く思ってるとかじゃないですから。
ただ、その……」
その先は、言えなかった。どんな言い訳も思いつかなかった。
どう考えたって、逃げでしかなかった。
閉じこもって顔も見えないのに、毎日話し相手になってくれる春菜さん。
どうしてそんなに優しくしてくれるんだろう。
どうしてその優しさにいつまでも甘えているんだろう。
自分は……
人間じゃないのに。
暗くなって春菜さんが家に入ると、いつもそう思っていた。
「はぁ……解ってるわよそんなこと」
溜息を一つついて、春菜さんが答えた。
「あんたが人を嫌うなんて考えられないしね。
誰にでも懐いちゃうでしょ? あんた。
そんなのに嫌われるほど悪人な覚えはないわよ私」
腕組みをして、軽口っぽく言う。
「春菜さん……どうして、そんなに良くしてくれるんですか?
センは、自分から閉じこもっちゃったようなものだったのに……」
今更こんなことを訊くのは失礼かもしれない。でも訊いておきたかった。
安心する為に。逃げ道を得るために。
「……あんまりこういうこと言わせないでよね。恥ずかしいんだから」
そう言った後、おほん、とわざとらしい咳払いをして自分を指差し、
「かぞ」
そしてセンを指差して、
「く。……あーもう、くっさいドラマじゃないのこれじゃ。
えー、とにかく。『岩白セン』って名乗るようになったのは四日前からだけど、
生まれた時からあんたはうちの家族なの。解った!?」
「……はい!」
嬉しかったからか、それとも春菜さんの声に釣られてか、センの声も大きくなった。
「泣かない泣かない。……全く、手の掛かる妹だこと」
「妹って、生まれたのほんの何日か違うだけじゃないですか~」
泣いてたらしいので、手で拭う。
「あら。双子でも姉と妹に分けるくらいなのよ? ましてや日にちが違えば決定的ね」
そうだけど……
「……お姉ちゃん?」
「なあに? センちゃん」
「…………」
「…………」
「は、恥ずかしいですね」
「私はこれでもいいけど?」
「う……」
「まあ呼びやすい呼び方でいいわよ。……やっぱりちょっと恥ずかしいし」
「い、一応設定では関係無いことになってますしね」
「設定ではね。でも、帰ってきたかったらいつでも来ていいわよ。
ここは岩白家なんだから」
「はい!」
ここは岩白家。わたしは岩白セン。春菜お姉ちゃんの、妹。
「大丈夫よ。そんな返事するわけないし、そもそもこんなこと訊くわけないでしょ。
口裂け女じゃあるまいし」
「は、はあ……」
まだ何も言ってないのに『大丈夫』って言われちゃった。
春菜さんにはセンの考えが解るのかな。自分でもよく解らないのに。
本当になんなんだろう?
「日永君と逢ってから四日目か……」
独り言のように春菜さんが呟いた。
「ねえセン」
と思ったら、今度は真っ直ぐこっちに視線を向けた。
「なんですか?」
「あの日……日永君が神社に来た日、
もし私が通りかからなかったら黙って出て行くつもりだった?」
「…………はい」
そう訊いてくるってことは、解っているんだろう。嘘ついても無意味なんだろうな。
「そう……」
「あ、あの、別に春菜さんが嫌いになったとか、悪く思ってるとかじゃないですから。
ただ、その……」
その先は、言えなかった。どんな言い訳も思いつかなかった。
どう考えたって、逃げでしかなかった。
閉じこもって顔も見えないのに、毎日話し相手になってくれる春菜さん。
どうしてそんなに優しくしてくれるんだろう。
どうしてその優しさにいつまでも甘えているんだろう。
自分は……
人間じゃないのに。
暗くなって春菜さんが家に入ると、いつもそう思っていた。
「はぁ……解ってるわよそんなこと」
溜息を一つついて、春菜さんが答えた。
「あんたが人を嫌うなんて考えられないしね。
誰にでも懐いちゃうでしょ? あんた。
そんなのに嫌われるほど悪人な覚えはないわよ私」
腕組みをして、軽口っぽく言う。
「春菜さん……どうして、そんなに良くしてくれるんですか?
センは、自分から閉じこもっちゃったようなものだったのに……」
今更こんなことを訊くのは失礼かもしれない。でも訊いておきたかった。
安心する為に。逃げ道を得るために。
「……あんまりこういうこと言わせないでよね。恥ずかしいんだから」
そう言った後、おほん、とわざとらしい咳払いをして自分を指差し、
「かぞ」
そしてセンを指差して、
「く。……あーもう、くっさいドラマじゃないのこれじゃ。
えー、とにかく。『岩白セン』って名乗るようになったのは四日前からだけど、
生まれた時からあんたはうちの家族なの。解った!?」
「……はい!」
嬉しかったからか、それとも春菜さんの声に釣られてか、センの声も大きくなった。
「泣かない泣かない。……全く、手の掛かる妹だこと」
「妹って、生まれたのほんの何日か違うだけじゃないですか~」
泣いてたらしいので、手で拭う。
「あら。双子でも姉と妹に分けるくらいなのよ? ましてや日にちが違えば決定的ね」
そうだけど……
「……お姉ちゃん?」
「なあに? センちゃん」
「…………」
「…………」
「は、恥ずかしいですね」
「私はこれでもいいけど?」
「う……」
「まあ呼びやすい呼び方でいいわよ。……やっぱりちょっと恥ずかしいし」
「い、一応設定では関係無いことになってますしね」
「設定ではね。でも、帰ってきたかったらいつでも来ていいわよ。
ここは岩白家なんだから」
「はい!」
ここは岩白家。わたしは岩白セン。春菜お姉ちゃんの、妹。
これからの展開に期待!
いやもうこんなに先の事考えて書くの初めてですよ。
この事についての話は、
一応脳内で出来上がってはいるんですが……
いつもの気まぐれで、
いつ設定が変わるか解りゃしませんのでね。
ぶっちゃけ以前の話でも、
長谷川母なんてのは居ないはずだったんですよ。
急造キャラです。長谷川家へ行く目的としての。
写真は森口が取れる筈だったのに……
まあ、それはそれで楽しいですがね。