(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子51 ここはどこ? わたしはだれ? だれのなんなの?

2007-01-25 21:48:18 | 欲たすご縁は女の子   四日目
返答に困っていると、春菜さんが木刀を置いて話し出した。
「大丈夫よ。そんな返事するわけないし、そもそもこんなこと訊くわけないでしょ。
 口裂け女じゃあるまいし」
「は、はあ……」
まだ何も言ってないのに『大丈夫』って言われちゃった。
春菜さんにはセンの考えが解るのかな。自分でもよく解らないのに。
本当になんなんだろう?
「日永君と逢ってから四日目か……」
独り言のように春菜さんが呟いた。
「ねえセン」
と思ったら、今度は真っ直ぐこっちに視線を向けた。
「なんですか?」
「あの日……日永君が神社に来た日、
 もし私が通りかからなかったら黙って出て行くつもりだった?」
「…………はい」
そう訊いてくるってことは、解っているんだろう。嘘ついても無意味なんだろうな。
「そう……」
「あ、あの、別に春菜さんが嫌いになったとか、悪く思ってるとかじゃないですから。
 ただ、その……」
その先は、言えなかった。どんな言い訳も思いつかなかった。
どう考えたって、逃げでしかなかった。
閉じこもって顔も見えないのに、毎日話し相手になってくれる春菜さん。
どうしてそんなに優しくしてくれるんだろう。
どうしてその優しさにいつまでも甘えているんだろう。
自分は……
人間じゃないのに。
暗くなって春菜さんが家に入ると、いつもそう思っていた。
「はぁ……解ってるわよそんなこと」
溜息を一つついて、春菜さんが答えた。
「あんたが人を嫌うなんて考えられないしね。
 誰にでも懐いちゃうでしょ? あんた。
 そんなのに嫌われるほど悪人な覚えはないわよ私」
腕組みをして、軽口っぽく言う。
「春菜さん……どうして、そんなに良くしてくれるんですか?
 センは、自分から閉じこもっちゃったようなものだったのに……」
今更こんなことを訊くのは失礼かもしれない。でも訊いておきたかった。
安心する為に。逃げ道を得るために。
「……あんまりこういうこと言わせないでよね。恥ずかしいんだから」
そう言った後、おほん、とわざとらしい咳払いをして自分を指差し、
「かぞ」
そしてセンを指差して、
「く。……あーもう、くっさいドラマじゃないのこれじゃ。
 えー、とにかく。『岩白セン』って名乗るようになったのは四日前からだけど、
 生まれた時からあんたはうちの家族なの。解った!?」
「……はい!」
嬉しかったからか、それとも春菜さんの声に釣られてか、センの声も大きくなった。
「泣かない泣かない。……全く、手の掛かる妹だこと」
「妹って、生まれたのほんの何日か違うだけじゃないですか~」
泣いてたらしいので、手で拭う。
「あら。双子でも姉と妹に分けるくらいなのよ? ましてや日にちが違えば決定的ね」
そうだけど……
「……お姉ちゃん?」
「なあに? センちゃん」
「…………」
「…………」
「は、恥ずかしいですね」
「私はこれでもいいけど?」
「う……」
「まあ呼びやすい呼び方でいいわよ。……やっぱりちょっと恥ずかしいし」
「い、一応設定では関係無いことになってますしね」
「設定ではね。でも、帰ってきたかったらいつでも来ていいわよ。
 ここは岩白家なんだから」
「はい!」

ここは岩白家。わたしは岩白セン。春菜お姉ちゃんの、妹。


2 コメント

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Unknown (Unknown)
2007-01-26 17:44:17
昔、一体何があったのか・・・

これからの展開に期待!
Unknown (代表取り締まられ役)
2007-01-26 22:00:45
コメントありがとうございます。

いやもうこんなに先の事考えて書くの初めてですよ。
この事についての話は、
一応脳内で出来上がってはいるんですが……
いつもの気まぐれで、
いつ設定が変わるか解りゃしませんのでね。

ぶっちゃけ以前の話でも、
長谷川母なんてのは居ないはずだったんですよ。
急造キャラです。長谷川家へ行く目的としての。
写真は森口が取れる筈だったのに……

まあ、それはそれで楽しいですがね。

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