(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子56 眠れない、眠れない、解らない

2007-01-30 21:06:11 | 欲たすご縁は女の子   四日目
部屋のドアを開けると、廊下からの明かりがセンの顔を照らす。
「うぅん……」
少し眩しそうに顔をしかめたので、すぐにドアを閉める。
センは予想通り既に眠っていた。
俺のベッドの横にぴったりと布団を敷いて。
「なんなんだよ……」
溜息混じりに、思わず口からそうこぼした。
電気を消したままセンを跨いでベッドに潜る。
さすが今日干しただけあって布団がかなりフカフカで気持ちいい。
一応センの布団も干したんだが……意味なかったかな。こいつ寝汗もかかないだろうし。
それでは、
「おやすみ」
もちろん返事はなかった。

「……逆だっつーの」
いつもの向きで寝ると、センの頭が俺の足側に、センの足が俺の頭側に来てしまう。
気にしないことにしていたが、すぐに限界がきて枕と自分の向きを変える。
さあ、今度こそ寝よう。

…………眠れない。
もうどのくらい目を閉じていたか解らないが、とにかく眠れない。
眠ろうとすればするほど、余計に眠気が遠ざかっていくようだった。
目を凝らして時計を見ると、十一時。二時間ほどこうしていたらしい。
だからといって今更起きて何かする気にはならなかったので、そのまま布団を被る。
その時傾いた、と言うほどではないが、ベッドの端の方に何か力が加わった。
「ん?」
そっちの方を見てみると、
「あ、あれ? 起きてたんですか? もももしかして、起こしちゃいました?」
ベッドの縁に手をついて、センがこちらを覗き込んでいた。
暗くて表情までは解らないが。
「いや、眠れなかったんだが……お前こそ起きてたのか?」
「あ、そ、それが同じく眠れなくて……ごめんなさいっ!」
そう言って、布団に頭まで潜ってしまった。
「じゃあ今度こそおやすみ」
「……おやすみなさい」
潜ったままなので、なんだかこもった声だった。

……駄目だ。やっぱり眠れない。
もう時間を確認するのもおっくうだった。
首の向きを変えてみたり、体の向きを変えてみたりしても、
いっこうに眠気がやってくる気配はない。
もう意地だった。なんとしてでも寝てやる。
しっかりと目を閉じ! 体の向きを固定し! 頭の中は真っ白に!
「明さん。もう、寝ちゃいましたか?」
寝たよ! 寝たから寝かせてくれ!
真っ白に! 真っ白に! 真っ白に! 真っ白……ん? なんか近……
目を開けた。
「ふぇ?」
「ん?」
目と鼻の先に、センの顔があった。
「…………」
「…………」
「ふぇえええぇぇぇっ!?」
「ぬおおおおおおおっ!? っご!」
お互いに奇声を発しながら、後ずさりする。
ちなみに俺は壁に頭をぶつけた。
「ななななんなんだよ! 近いよ!」
「なんで、なんで起きてるんですか!? さっき寝たかどうか訊いたじゃないですか!」
「…………」
「…………」
「……お前、ホントにどうしたんだ? 帰ってきてから変だぞ?
 今の、どう考えたってその……」
「……自分でも解らないんです。春菜さんとお話してから、なんだか……」
だってお前、そういうのよく解らないって……いや、解ってないんだよな。
「……あの、春菜さんも、明さんも、大好きです」
ほらだから岩白と並べてるしさぁ……

「でも、でも違うんです! 明さんは……よく解らないけど、明さんは……!」


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