(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子55 予想外で不意打ちなお願い

2007-01-29 21:53:27 | 欲たすご縁は女の子   四日目
「泣いてないです」
うつむいたまま、そう答える。
「あ、そう? ならいいけど」
気のせいだったのか?

部屋に戻ると、センもついて来た。
「それ、なんだ?」
センが手に持っているビニール袋を指差す。
「あっ、これは春菜さんに貰った……」
袋を漁り、中身を取り出す。
「制服です!」
カッターシャツを広げ、嬉しそうに微笑んだ。
なるほど。学校行くならこれ使えってことか。気が利くな岩白。
「ってことは、神社に行ってたのか?」
「はい!」
「じゃあ自転車はもう乗れるようになったんだな。良かったじゃないか。
 これで一人で色々行けるな」
「え……」
センの笑顔が曇り、なにやら考え始めた。
なんだ? なにか問題でも?
「あ、あの!」
「な、なんだよ」
急にでかい声出すなよ。ビックリした。
「乗れたのはいいんですけど、まだその、どこに何があるとか全然解らなくて……
 だから、また一緒に……」
最初は大きな声だったのに、だんだん声は小さくなった。
何か不安なことでもあるかのように。
「まあ別に構わんけど」
と答えれば、またいつものように元気よく
「……ありがとう、ございます……」
……あれ。予想外。
「お前、何かあったのか?」
「え? な、なんでですか?」
「いや……その、元気ないかなって」
それに……
「な、何もないですよ。元気です」
「そうか。ならいいんだが」
目が赤いんだよ。どう考えても何かあっただろこれ。

「今日、この部屋で寝てもいいですか?」
「……何言い出すんだお前は」
センが風呂から上がり後は部屋で寝るんだろうと思っていると、
部屋から布団を抱えてきた上、全くの不意打ちで予想外の提案をされた。
おかげで反応が一瞬遅れる俺。
「お願いです! 絶対、邪魔にはなりませんから!」
「いや、邪魔とかそういうことじゃなくて……」
再起不能のピンチ、再び。
「怖いんです……! 一緒に、居させてください……!」
……なんて、軽口言ってられる雰囲気ではなさそうだ。なんだってんだよ、もう。
「解ったよ。ただし、この部屋カーテンないからな。しかも日当たり抜群だぞ」
カーテン動かせよ。とかいう突っ込みはなしだぞ。今日一日だけだろうし。
……そうだよな?
「それは大丈夫です。……ごめんなさい。わがまま、言っちゃって……」
「いいよ別に。俺に害はないし。もう寝るんだろ? 電気消しとくな」
「あ、お構いなく。迷惑でしょうし……」
「いいって。俺だって風呂入ったらもうやることないから、今日はすぐ寝る」
「でも……」
まだ何か言いたげだったが無視して電気を消し、部屋を出る。
「おやすみ」
「……おやすみなさい」

「やっぱり変だよな……」
風呂に入ること三十分。ずっとそんなことを考えていた。
帰ってきたら泣きそうだし、顔見たら目赤いし、
元気ないし、俺の部屋で寝るとか言い出すし。
外出先で何かあったんだろうがそんなの俺が知るわけない。
神社に行ったそうだが、岩白があいつを泣かせるなんて考えにくいし……
他にどこか行ったんだろうか?
なにも答えが出ないまま、風呂を上がる。……出るわけないだろうが。

三十分も経ってるんだ。あいつはもう寝てるだろう。


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