「……怒ってないんですか?」
「当たり前だろ」
そう。俺は別に怒ってない。
この程度でいちいち怒ってたらキリがないし身が保たないからな。
こいつと一緒に暮らしてると特に。
だからさっきのは、ただちょっと恥ずかしかっただけだからな。
「よかった……あ、でも、ごめんなさいっ」
悪いことをしたと思っているのか、センは頭を下げた。
すると身長差があるので、後頭部がこちらを向く。
「謝るようなことじゃないっての。俺はなんとも思ってないんだから」
その後頭部に手を乗せて、軽く撫でてやった。
「ごめんなさ……」
「それ以上謝ったらここからアイアンクローに移行するからな」
センが一瞬停止した後、俺の手を離れて頭を持ち上げ始める。
「…………はい!」
そして現れたその表情は、笑顔だった。
ふぅ。一件落着。
「明、あんたええやっちゃなぁ。見直したわ」
さっきまで岩白と一緒ににやにやしていた明日香だが、今度は何やら感心した様子だった。
ひねくれ者は褒められると辛いって言ってるだろ。……まあ、言ってないけど。
「何がだよ。俺はただこいつにアイアンクローをだな……」
右手をワキワキさせながら自分のために言い訳をしようとしたところ、
「ですよね! 明さん、いい人ですよね!」
邪魔が入った。
「やねぇ。センちゃんが好きになんのも無理ないかもな」
「はい! 普段はいじわるなんですけど、たまにこうして凄く優しく」
「アイアァン・クロォーッ!」
炸裂。
「いた、いたたたたた! な、なんでですか!? ご、ごめんなさいぃたたたたた!」
「明、あんたおもろいやっちゃなあ。見直したわ」
さっきまで感心した様子だった明日香だが、今度はなにやら楽しそうだった。
「見直すというか馬鹿にしてるんじゃないのか?」
多分そうだ。
「うぅ……まだ痛いです……」
頭を抱えるセン。そりゃ悪かったな。普段はいじわるだからな俺は。
「だ、大丈夫? センちゃん」
広瀬姉が心配して傍につく。
「ご、ご心配には及びませんです……」
口調とその発言内容に食い違いが認められた。
これで心配しなかったらいつ心配しろと? 俺はしてやらんがな。
「この様子じゃあいつも大変そうね日永君」
岩白姉が心配? して傍につく。
「ご心配には及びまくりだ」
そりゃもう大変で大変で、
「でも楽しいでしょ? 一緒に居て」
ぐっ!? 考えを読まれてる!?
「……そりゃ、まあな」
「ありゃりゃ、そういうとこは素直やねぇ。お熱いこって」
だんだんどつぼに嵌まって、いや嵌められていってるような……
結局、それから学校に着くまで話題が変わることは残念ながらなかった。
「ではまたお昼休みに!」
学校に到着すると、早々に集団から抜け出るセン。
駆けて行くその背中を眺めながら今日香が言うには、
「センちゃん今日も係の仕事なん? 大変そやねぇ」
まあ一応そういうことになってるな。もちろんセンに係の仕事などあるわけがないのだが。
「じゃあまた昼休みに来るわね」
1-1教室前で岩白、今日香と別れる。
昼休みに全員集合するのはどうやら恒例行事になりそうだ。
六人揃ってる様子を頭に浮かべながら教室に入ろうとすると、
明日香がその場で話し掛けてきた。
「あの……あん時は悪かったな。気ぃ遣わせてもうて」
「ん? なんだよ急に。いつの話だ?」
俺が明日香に気を遣うっていうと……あったっけそんなこと。
「ほら、さっき学校来てる途中、うちの話になった時……」
「……ああ。あ、いやいや別にそんな気を遣ったとかじゃないけど」
やっぱり気にしてたのか? そんな風には見えなかったが。
「当たり前だろ」
そう。俺は別に怒ってない。
この程度でいちいち怒ってたらキリがないし身が保たないからな。
こいつと一緒に暮らしてると特に。
だからさっきのは、ただちょっと恥ずかしかっただけだからな。
「よかった……あ、でも、ごめんなさいっ」
悪いことをしたと思っているのか、センは頭を下げた。
すると身長差があるので、後頭部がこちらを向く。
「謝るようなことじゃないっての。俺はなんとも思ってないんだから」
その後頭部に手を乗せて、軽く撫でてやった。
「ごめんなさ……」
「それ以上謝ったらここからアイアンクローに移行するからな」
センが一瞬停止した後、俺の手を離れて頭を持ち上げ始める。
「…………はい!」
そして現れたその表情は、笑顔だった。
ふぅ。一件落着。
「明、あんたええやっちゃなぁ。見直したわ」
さっきまで岩白と一緒ににやにやしていた明日香だが、今度は何やら感心した様子だった。
ひねくれ者は褒められると辛いって言ってるだろ。……まあ、言ってないけど。
「何がだよ。俺はただこいつにアイアンクローをだな……」
右手をワキワキさせながら自分のために言い訳をしようとしたところ、
「ですよね! 明さん、いい人ですよね!」
邪魔が入った。
「やねぇ。センちゃんが好きになんのも無理ないかもな」
「はい! 普段はいじわるなんですけど、たまにこうして凄く優しく」
「アイアァン・クロォーッ!」
炸裂。
「いた、いたたたたた! な、なんでですか!? ご、ごめんなさいぃたたたたた!」
「明、あんたおもろいやっちゃなあ。見直したわ」
さっきまで感心した様子だった明日香だが、今度はなにやら楽しそうだった。
「見直すというか馬鹿にしてるんじゃないのか?」
多分そうだ。
「うぅ……まだ痛いです……」
頭を抱えるセン。そりゃ悪かったな。普段はいじわるだからな俺は。
「だ、大丈夫? センちゃん」
広瀬姉が心配して傍につく。
「ご、ご心配には及びませんです……」
口調とその発言内容に食い違いが認められた。
これで心配しなかったらいつ心配しろと? 俺はしてやらんがな。
「この様子じゃあいつも大変そうね日永君」
岩白姉が心配? して傍につく。
「ご心配には及びまくりだ」
そりゃもう大変で大変で、
「でも楽しいでしょ? 一緒に居て」
ぐっ!? 考えを読まれてる!?
「……そりゃ、まあな」
「ありゃりゃ、そういうとこは素直やねぇ。お熱いこって」
だんだんどつぼに嵌まって、いや嵌められていってるような……
結局、それから学校に着くまで話題が変わることは残念ながらなかった。
「ではまたお昼休みに!」
学校に到着すると、早々に集団から抜け出るセン。
駆けて行くその背中を眺めながら今日香が言うには、
「センちゃん今日も係の仕事なん? 大変そやねぇ」
まあ一応そういうことになってるな。もちろんセンに係の仕事などあるわけがないのだが。
「じゃあまた昼休みに来るわね」
1-1教室前で岩白、今日香と別れる。
昼休みに全員集合するのはどうやら恒例行事になりそうだ。
六人揃ってる様子を頭に浮かべながら教室に入ろうとすると、
明日香がその場で話し掛けてきた。
「あの……あん時は悪かったな。気ぃ遣わせてもうて」
「ん? なんだよ急に。いつの話だ?」
俺が明日香に気を遣うっていうと……あったっけそんなこと。
「ほら、さっき学校来てる途中、うちの話になった時……」
「……ああ。あ、いやいや別にそんな気を遣ったとかじゃないけど」
やっぱり気にしてたのか? そんな風には見えなかったが。