(有)妄想心霊屋敷

ここは小説(?)サイトです
心霊と銘打っていますが、
お気楽な内容ばかりなので気軽にどうぞ
ほぼ一日一更新中

欲たすご縁は女の子52 日永君にそれ言ってあげなさい

2007-01-26 21:51:54 | 欲たすご縁は女の子   四日目
「じゃあ、今日はそろそろ……」
「あら、もう? あ、そうか。自転車で色々行ってみるんだったっけ」
「はい」
そう言って立ち上がり、部屋を出ようとした。
「あ、忘れるところだった。ねえセン。あんた明日からも学校行くつもり?」
見送ってくれようとしたのか、一緒に立ち上がった春菜さんが訊いてきた。
「そのつもりですけど」
「じゃあちょっと待ってて。渡すものがあるから」
そう言って春菜さんは部屋の押入れを開け、
『冬物』と書かれた紙が貼ってある箱を引っ張り出した。
春菜さんが箱を開けると、なんだか嫌な匂いがした。
「さすがにちょっと防虫剤臭いけど、まあすぐに抜けるでしょ。はい」
そう言う春菜さんに渡されたのは、学校の制服だった。
「これ……」
「毎回制服が手に入るわけじゃないだろうからね。
 カッターも何着か持ってるからあげるわ」
と、今度はタンスを開けて、いつも着ている制服を一着くれた。
「いいんですか?」
「いいも何も、使わないもの今の時期。なら有効活用したほうがいいじゃない?
 あ、ネクタイないけど一番上のボタン外してれば多分大丈夫だから。
 革靴は……まあそれっぽい靴はいてりゃ大丈夫でしょ」
「ありがとうございます!」
「袋……あ、これでいいか」
傍に置いてあったビニール袋の中身を出した。
中から出てきたのはノートと消しゴム。春菜さんらしいというかなんと言うか。
「はいじゃあ入れちゃってー」
と袋の口をこっちに向ける。言われた通り、手にもった制服をその袋に入れた。
「はいっ。じゃーこれで明日からも頑張って登校してくださいっ」
「はい!」
「それと、靴代ね。さっき買い物に行ったお釣りだけど」
小銭をいくつか受け取った。早速頂きます。
「靴、あった?」
「はい。今日は本当にありがとうございました」
「どういたしまして」

小銭を返して、玄関で靴を履く。
「それじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
一歩前に出て、戸に手を掛ける。そのまま振り返って、
「……春菜お姉ちゃん、大好きですよ」
言ってみたくなったので、言ってみた。けどやっぱりちょっと恥ずかしかった。
「だから恥ずかしいって……ちなみにその場合、『ですよ』は余計ね」
「?」
予想外の反応だった。
「春菜お姉ちゃん、大好き」
言い直してみた。
「うわぁ…………あ、ごめん。ちょっと悪ノリだった」
喜んでるんだか引いてるんだか微妙な表情でそう言われた。
……よく解らなかった。
「私もあんたのこと、好きだからね」
「はい」
「それじゃあ車とかに気をつけて。暗くなる前に帰るのよ」
「はい」
「あ、もちろん日永家に、だからね」
「はい。それじゃあ」
「また明日」
「また明日」
戸に掛かったままだった手を引く。そして戸を閉める時、春菜さんにもう一度頭を下げた。

家を出て自転車に乗る。……鍵かけるの忘れてた。危ない危ない。
スピードが出てちょっと怖いのでブレーキを多めに掛けつつ、裏の坂道を下る。
坂を抜けるとまた元の平らな道へ。
今度はどこに行こうかな?
……って言ってもまだ知ってるところ少ないんだけどね。
コンビニと、学校と、駅と、デパートぐらいかぁ。どうしよう。
コンビニは今向かってるのと逆方向だし、学校は行っても誰も居ないし……
デパートは? 遠いか。線路辿るだけだから道は解るんだけど。

じゃあ駅まで行って、切符売り機からご馳走になっちゃおう。


コメントを投稿