(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子49 昨日一日、振り返り

2007-01-23 22:21:42 | 欲たすご縁は女の子   四日目
拝殿の方から春菜さんが出てきた。つまりは家の裏からだね。
右手にはビニール袋、左手には木刀が握られていた。
……できれば、木刀はあまり見たくないなぁ。あの日のことを思い出してしまうから。
だから、そのことには触れないことにした。
「今日は一人で来ました。明さんには家でゆっくりしてもらってます。
 昨日は結局、暗くなるまで付き合ってもらっちゃいましたから」
本当なら昨日だって、一日ゆっくりできた筈なんだし。
だったら、今日まで付き合ってもらうのは悪いよね。
「ふーん。まあ中入ろっか。立ち話もなんだし」
春菜さんが家の引き戸を開けて、中に入る。
「ただいまー」
返事はない。今は誰も居ないようだ。
春菜さんが靴を脱ぎ、上にあがる。
続くように中に入ると、春菜さんがこちらを向いた。
「おかえり、セン」
「ただいま、春菜さん」

春菜さんの部屋に入り、二人で向かい合って座る。
「で? 昨日はデパートで何したの?」
傍に木刀とビニール袋を置き、春菜さんが訊いてきた。
「最初はレジをまわってお腹一杯になるまで食べまわりました。
 久しぶりでしたよ。食べられなくなるまで食べたのは。
 気持ち悪くなっちゃいましたよ~。明さん、ガンガン次に行くんですもん」
「あるだけ全部食べようとするあんたもどうかと思うわよ」
「う」
春菜さんが少し笑う。それにつられてこっちも笑う。苦笑いだけど。
「その後は? ペットショップは行ったの?」
「はい! ダックスフンド? だったかな? 確かそんな感じの犬が居たんです!
 そりゃもう家で飼いたいぐらい可愛かったですよ!」
「……やっぱり、飼うのは無理だった?」
「さすがにそこまでは頼めませんよ……
 明日香さんに訊かれてた時も、『見に来ただけだ』って明さん……」
「明日香さん?」
あ、そうだそうだ。
「そこで知り合ったんです。広瀬明日香さん。
 明さんのクラスメイトで、なんかこう、独特な喋り方な人なんです」
「ああ、その人知ってるかも。双子だったりしない? 今日香さんって人と」
「そうですそうです! お知り合いだったんですか?」
「学校行く時に会うのよ。今日香さんとは同じクラスだし」
「そうだったんですか」
そう言えば神社側に住んでるって明日香さん、言ってたな。
……明さんは家出るの早いし、会わないよね。ちょっと皆で会ってみたいな。
「それから、四人で映画見たんですよ!
 四人ともそれ見て泣いちゃったんです。凄い感動しましたよ~」
「なんて映画?」
「えっと、確か……『ふたり』? だったと思います」
「ふーん。今度見てみようかしら」
「その時はぜひ呼んで欲しいです! 何度でも見たいです、あれは」
春菜さんとだったら、タダ見しても大丈夫だしね。明さんも来てくれるかな?
「もしその気になったらね。それで外に出たら真っ暗だったってわけ?」
「はい」
「よかったじゃないの。楽しかったんでしょ?」
「そうなんですけど、明さんに悪かったかなって……せっかくのお休みだったのに」
すると、また少し春菜さんが笑った。
「映画見て泣いてたんでしょ? 日永君だってしっかり楽しんでるんじゃないの。
 それで文句なんて出るわけないわ」
「そ、そうなんでしょうか?」
「そうよ。それにね、
 そんなことで文句言ってたら人一人引き取るなんて大仕事、引き受けないわよ」
「明さん、いい人ですよね」
あの時は必死だったけど、まさか本当に連れて行ってもらえるなんて思わなかったし。
「いい人って言うか……日永君は流れに飲まれるタイプなのかもね。
 デパート行くのだって最初はいやいやだったし」
「それでも、いい人ですよね」
「あれ? ちょっとムキになった?」

……あれ?


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