ただウェブに駄文を綴るのみ

駄文綴り続けて早1年。
誰かのためになることを書いたら負けかなって思ってる。

ゆう君のブログ巡回記 PHASE1-3

2006-07-04 | Webのお話
■前回までのお話
ゆう君のブログ巡回記 PHASE1-2
ゆう君のブログ巡回記 PHASE1-1


■4
 さて、このお話もいよいよ終わりが近づいてきました。終わりが近づいてきたことでふと思い出したのですが、ゆう君というのはみーちゃんとは親戚同士の関係で、居候しております。その他諸々に設定がごちゃごちゃとあるにはあるのですが、主題とはまったく関係ないことなのですっ飛ばしていきます。ちなみに、後付けのように思われますけども、最初から想定していた設定なのですよ。でも、主題と関係ないし、時間なかったし、書いても大してウケ狙えないなって思って敢えて書かなかっただけですからね。

 言い訳も終わったことですので、続きに入りましょう。

 みねさんと別れたとき、みーちゃんのお父さんとお話してみればと言われたので、早速家に帰ってみーちゃんのお父さん、ゆう君にとってのおじさんとお話することにしました。

 家に帰ってリビングに行くと、みーちゃんのお父さんはTVを見ながらお酒を飲んでいるようです。見ているのは野球で、お気に入りの球団が勝っているようなのでとてもご機嫌な様子。
 機嫌もいいようなので、お話を聞くにはいい機会だと思い、ゆう君は早速声をかけました。

「おじさん、ただいま」

「やぁ、おかえり。夜遅く散歩かい?」

「うん、まぁね。おじさん、少しいいかな?」

 ゆう君は、みーちゃんやみねさんとの話したこと、みねさんにおじさんにも話を聞いてみるといいと言われたことを話しました。

「そんな話があったんだねぇ。私もブログを趣味でやってるけども、そういうのには関心がなかったから全然知らなかったよ」

「そうなの? 結構盛り上がってるからみんな知ってるのかと思った」

「はっはっは。確かに盛り上がってるみたいだけど、あくまでもごく一部のことだからね。ネットはもっとずっと広いんだ。ごく一部で有名といっても、個人のサイトで盛り上がってる話題なんてネット全体で見たらマイナーでしかないんだよ」

 ゆう君は、自分では誰もが知ってると思っていたことがマイナー扱いされて少しムッとしながらも、そういうものなのかもしれないと納得もしていました。

「ねぇ、おじさん。おじさんはこの問題についてどうするべきだと思ってる?」

「そうだねぇ。おじさんには中絶しろとも子供を産めとも言えないかな。いや、昔は中絶しろって立場だったんだけどね。今はそうじゃない」

「なんで考えが変わったんだい?」

「そうか、ゆう君は知らなかったのか。これから話すことはみーには内緒だよ」

「うん、漢の約束だね」

「ああ。私の妻はみーを産んだときに死んでしまったのは知ってるよね」

「うん」

「実はだね、考えが変わったのはその妻のことがあったからなんだ」

「どういうこと?」

「娘のみーは…、私の本当の子供じゃないんだよ」

「それって…」

「私の妻はレイプされてね。みーはそのときに出来た子供なんだ」

 おじさんから語り出される言葉に、ゆう君は言葉を失ってしまいました。

「私の子供じゃないと知ったとき、私は妻に子供を墜ろせと言った。親戚や両親、私や妻の友人も皆墜ろせと言ったんだ。それでも妻は子供は産むって言ってね。私たちは皆激怒した。妻のことを思って言ってるのに、妻はそれを拒否したんだ」

「どうして…」

「妻はね、たとえきっかけがなんであろうと産まれてくる子供を殺したくないって言ったんだ。誰に言われたわけでもなく、自分で産むって決心したんだ。でも、誰も納得できなかった。そうやって皆が妻を責めた。絶縁する親戚や友人だっていた。それでも屈しなかった。
 でもね、ただ一度だけ屈しそうになったことがあるんだ。それは私も妻の前から消えようとしたときなんだ。そのとき初めて彼女は泣いた。それまで何を言われても泣き言一つ言わなかった妻が、私が離婚しようって言ったとき、初めて泣いた。
 そのときにね、「この子は私とあなたの子よ。私が産む子は誰がなんと言おうと私とあなたの子なの。それなのに私とこの子を見捨てるの?」って言われてね、初めて気づいた。誰よりも妻が一番つらい思いをしたのに、その彼女が決めたことを誰もが責めた。私もだ。妻が泣き言も言わなかったから気づかずに、ずっと傷つけていたんだ。
 いや、本当は気づいていたのかもしれない。それでも、自分は悪くない、彼女のために言ってるんだって。本当は私が嫌だから言ってたに過ぎないのにね。理解しているつもりで、実は何も分かっていなかったんだよ。いや、分かろうともしてなかった。
 そして気づいたんだ。ああしろ、こうしろなんて言うんじゃない。何よりも妻が決めたことを理解し、尊重しようと。そして、妻が決めたことに対して責める人がいるならば、何があっても私は彼女を守ろうと思ったんだ」

「つまり、中絶するしないじゃなく、どうするかを決めた女性を守るってこと?」

「ああ、そうだよ。答えに絶対の正解なんてない。だから、どっちを選んだとしても正しいし、間違っているかもしれない。たとえ間違っていたとしても、世間から非難されようとも、私は、彼女の傍に寄り添って支え、守るべきだと思ったんだ。だから私は妻が産むと決心したことに対して、否定せず、傍で支えることを決めたんだ。おかげで、多くの友人からは見放されてしまったけどね。それでもよかった。誰よりも大事な人を守ることの方がずっと大事だったからね」

「みーちゃんを産んだことでおばさんが死んでしまったけど、おじさんはみーちゃんを恨んでないの?」

「とんでもない。なんで恨むんだい? あの子は私の子供だよ」

「でも…」

「確かに血の繋がりはないかもしれない。それでも、妻は私の子供だと言ったんだ。私の子供なんだから愛そうと誓ったんだ。それが妻との約束でもあるからね。
 それに、みーにとっては私は唯一の親なんだ。その私が娘を恨むことなんてできないよ。それでは妻に面目が立たないし、怒られてしまうよ」

 そう言ったときのおじさんの顔は、どこか笑顔が見えた。つらい過去のはずなのに、それでも暗い顔一つ見せないおじさんには、どこか圧倒される思いを感じさせた。

「おじさんは、そういう考えを書く気はないんだね」

「ああ、これはあくまでも私はそうするってだけだし、誰かに偉そうに言えることでもないからね」


■5
 おじさんとのお話が終わった後、ゆう君はまたパソコンの前に座って何やら何かを考え込んでいました。モニタの画面を見てみると、どうやらブログの編集画面のようです。どうも中絶等の記事を書いているようです。

 考え事をしているかと思ったら、何かをひらめいたかのような顔をしたかと思ったら、おもむろにマウスに触れ、少し戸惑いながらも先ほどまで書いていた記事を削除していました。

「これでいいんだ」

 そう呟くゆう君の顔は、どこか清々しくもありました。

(おわり)

最新の画像もっと見る