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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

9・11テロから15年。オバマ大統領がテロの脅威がさらに高まっていることを認める。先に攻撃したのはアメリカだから。

2016年09月12日 | 人権保障と平和

 

 日本人を含む約3000人が犠牲となったアメリカ同時多発テロから15年となる2016年9月11日、オバマ大統領はテロとの戦いの成果を強調する一方、

「テロの脅威は高まっている」

との認識を示しました。

  オバマ大統領はビデオ演説で、同時多発テロの首謀者とされる国際テロ組織「アルカイダ」のウサマ・ビンラディン容疑者の殺害などテロとの戦いは、この15 年で大きく変化したとその成果を強調した。一方で、「イスラム国」など、過激な思想に感化されたとみられるテロ事件などを挙げ

「ボストンマラソンの爆弾テロ、オーランドの銃乱射などテロの脅威は高まっている。我々はアルカイダや『イスラム国』を壊滅させる」

と言いました。

 

 

 アメリカの歴史上最も長い戦争であるアフガン戦争や、イラク戦争などを経ても、テロの脅威は減るどころか高まっているのです。いかに、「テロとの戦争」というお題目が空虚で、有害なものかがわかります。

 もし、この15年、アメリカが武力行使をせずに、戦争にかかってきた何十兆円というお金を使って、中東などの発展途上国の貧困対策などに努めてきていたなら、絶対にアメリカがこれほどテロの標的になることはなかったのです。

 「テロとの戦争」は報復の連鎖を生むだけで、テロを根絶することなどできません。

 イラク戦争で米軍と有志連合を組んだブレア元首相は

「ISの拡大につながる最大の要因はイラク侵攻だったのでは、との指摘をどう思われるか」。

と問われ、

「一片の真実があると思う。2003年にサダムを排除した者に、2015年現在の状況について責任がないとは言えない」。

と答えました。

ブレア首相が「イラク戦争がイスラム国台頭の原因との見方にも一片の真実」と謝罪。戦争は何も解決しない。

 

 

 オバマ大統領は

「我々はアルカイダや『イスラム国』を壊滅させる」

と言いますが、それが至難の業であることを一番よく知っているのはオバマ大統領でしょうし、仮に万一アルカイダや「イスラム国」をせん滅することができても、武力行使で現地に憎しみの種をまき続ければ、それに倍する新たな組織ができるのは必定です。

 そして、「テロとの戦争」というとテロが先にあって、あとから米国が自衛ないし報復のために戦争を起こしたかのように錯覚させられますが、テロとの戦争は9・11同時多発テロによって始まったのではありません。

 イラク戦争に従軍した米軍の狙撃手を描いたクリント・イーストウッド監督の「アメリカンスナイパー」という映画を見て、私はこう書きました。

『最高の兵器を携えた重装備のアメリカ軍兵士にあれだけストレスがかかるのならば、攻めこまれて蹂躙されるイラクの無辜の民の苦しみはいかばかりでしょうか。

 しかし、「アメリカン・スナイパー」が描くのはもっぱら「アメリカ伝説の狙撃手」とその家族の苦しみだけなのです。』

『この映画の舞台となったイラク戦争「勃発」について、主人公夫婦が世界貿易センタービルに飛行機が突っ込むあの映像をテレビで観ている場面からいきなり戦争突入になるのですが。

 確かに、ブッシュ大統領は9・11テロに対する自衛戦争だと言ってイラク戦争を開戦しました。しかし、9・11テロはイラクの人が攻めてきたのではありませんでしたから、アメリカにとって「自衛」でもなんでもなかったんですよね。

 そして、あの戦争には、独裁者フセイン大統領支配下のイラクが大量破壊兵器を持っているから危険だという大義名分もあったのですが、イラクに大量破壊兵器がなかったことも明らかになっています。

 つまり、イラク戦争が「正義の戦争」ではなかったことには歴史的、国際的な合意があると思うのです(そもそも「正義の戦争」なんてないわけですが、特に不正義といいますか)。

 ところが、この映画のように9・11テロ→イラク戦争とつなげてしまうと、イラク侵攻には何か「大義」があったかのようになってしまいます。』

「アメリカン・スナイパー」 クリント・イーストウッド監督が描かない、「狙われる」イラクの人々の苦悩

 

 9・11テロの前に湾岸戦争とその後の多国籍軍による攻撃があり、さらには連綿と続く英米などによる中東支配の歴史があって、初めて9・11テロがあります。

 3000人もの被害者はほんとうに殺されるような理由は全くなかった人々で、テロは絶対に許されませんが、9・11テロは中東の人にとっては初めての攻撃ではなく、アメリカによる武力行使が先にあって、これに対するある意味報復だったのです。

 繰り返し何度でも言いますが、憎しみと報復の連鎖を断ち切らない限り、世界がテロの脅威から解放される日が来ることはありません。

 テロとの戦争と名付けて武力行使と戦争を正当化することはできないのです。

 

 

そんなアメリカの戦争に加担できるようにした安保法制に一片たりとも合理性などありません。

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 【ニューヨーク共同】日本人24人を含む約3千人が犠牲になった2001年9月の米中枢同時テロは11日、発生から15年を迎えた。航空機が激突 し、崩壊したニューヨークの世界貿易センタービル跡地やワシントン郊外の国防総省などで追悼式典が開かれ、米国は鎮魂の祈りに包まれた。

  過激派組織「イスラム国」(IS)やISに感化されたとみられるテロが世界各地で続いているほか、米国でもフロリダ州などで銃乱射事件が発生。オバマ米大 統領は11日の演説で「テロの脅威は増大している」と指摘し、再び大規模テロが発生する懸念が広がる中での15年の節目となった。

 

 

米同時多発テロ15年

NYで式典 消えぬ過激派への懸念

11日、ニューヨークの米中枢同時テロ追悼式典で犠牲者の遺影を掲げる参列者ら=AP共同

 日本人24人を含む約3000人が犠牲になった2001年9月の米中枢同時テロの発生から15年となった11日、航空機が激突して崩れ落ちたニューヨークの世界貿易センタービル跡地などで、追悼式典が開かれた。

 過激派組織「イスラム国」(IS)や、ISに影響を受けたとみられるテロが世界各地で続発し、米国内でも再び大規模なテロが起きる懸念が消えないまま15年の節目となった。

 3機目が突入したワシントン郊外の国防総省での追悼式典に参加したオバマ大統領は、銃乱射テロが相次ぐなど「テロの脅威は増大している」と述べ、立ち向かう上で国民の団結を求めた。(共同)

 

 

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12 コメント

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911 (1jAP)
2016-09-13 20:21:07
 エマージェンシーコールナンバーを選んでこの日に”彼ら”がやったということになっている、あの攻撃。
 歴史上初めてU$A国家中枢部と言える場を幾つか選んで実際に攻撃を加えた作戦としては、”悪の帝国”を寒からしめた作戦として記されるべきものだろう。しかしながら、あまりにもうまく行き過ぎな作戦は、それを利用しようとする”U$A国家”の側に大きな理があるかのような錯覚や幻想を結果した。
 あの日、公園のテント村のラジオで第一報を知って街角テレビで状況を知って”悪の帝国の中枢が史上初めて攻撃を受けた”と歓喜の雄叫びを上げ、実際、その夜にテント村のある公園でワンカップの鬼殺しを割れんばかりにそれぞれ打ち付けて”悪の帝国に更なる災禍を。”とささやかなる祝杯を上げた記憶が今も。
 そして事件の悲しみばかりを訴えるU$A本国の運動体に”悲しむべきことが起こったかもしれない、だが、それはあなたがたが、向こう岸としてのみ見てきた植民地の日常としての現実が目前にあるだけである。今こそ自己批判せよ。世界一の自由を享受する身で安全な所から、植民地や自らの属国の運動の不甲斐なさとやらをゴタゴタ言ってきた恥知らずを悔いよ。一度も被害に遭うことがなかった身分であったことを!”とすかさず自己批判を迫ったことを思い出す。
 あれから15年… 湾岸・アフガン・湾岸…イスラム圏全域へと自らの”報復”とやらを飽くことなく続けたU$A国家は一向にその牢獄から出ることなく、次から次へと利潤を生むための口実として”見えざる敵”をあの時同様に拵えては自ら泥沼にハマって、"従順な同盟国"とやらに”例えば、オマエは泥沼にハマっている友人にどう友人であることを事実行為として証明してみせるのか”などと迫っている。
 その昔、チョムスキー同志が言った言葉じゃないが、侵略を辞めさせるためには、U$A本国人が、その内国植民地群は言うまでもなくその総ての場で叛乱を組織し、革命を自らの手で行わねばならない…というものは今も有効だと当方などは思っていたりする。
 かつてU$A国家はアフガンで旧ソ連の”赤軍”と闘う名目で反共のムジャヒディンを育て”玩具”を必要なだけ供与してゲリラ戦を戦わせ、その後のスンニ派ジハーディスト組織群を生んだ。このことを触れず、独り歩きさせた幻像としての”アルカイダ”とやらに敵意を向けさせた動きは今も名を変え品を変え行われ続けている。
 一体、彼女彼ら、そして日本列島の”植民現地統治者”どもは、いつまで勝手なワガママのための都合として幻像を次から次へと創り上げては、それへの敵意を実効支配地に住む住民個々人に植え込んで統治の暴力に対する正当なる抗議や、奴ら自らへの住民個々人の正当なる憤怒や不満を逸し続けるのか。
 私が楽しければ良い、楽しいものだけ見ていれば良い…などと寝惚けた文言を垂れ流す”公共放送”や”公器”は、まさに奴らのご都合のツールに過ぎない。
 本当の利己主義が、利他をもって利己と為すことも知らぬ個々人には、”私は無の上に私の事柄を据えた”という言葉を是非知らしめておこう。

 エマージェンシーコール911(日本列島では違うが)は、そして非常ベルは今こそ列島中で躊躇せずに鳴らされるべきである。え? 今が非常時じゃない、今が緊急時じゃないって? こんな状況が平時だというなら、一体どんな状態が非常時や緊急時やのかな?
 
返信する
Unknown (12434)
2016-09-13 19:28:07
「9・11」後、決定的に欠けたもの…中東研究者ら語る
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/ASJ9C4VKWJ9CUHBI009.html
gooニュース
返信する
Unknown (12434)
2016-09-13 18:55:09
「9・11」後、決定的に欠けたもの…中東研究者ら語る
http://n.m.livedoor.com/f/m/12006116
livedoorニュース
返信する
実現可能な撲滅方法 (kei)
2016-09-13 14:31:56
お金だけじゃなく、知恵と技術と人材をセットで出せば良いのです。
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/20/2259544/

「ISは我々が作った」と、ヒラリー氏も認めていますしね。
カダフィやフセインの二の舞になりたくなくて北朝鮮が核で「抑止」しようとするのも頷けます。
日本がイラク戦争に加担したせいで目が曇っている方々に特に観て頂きたいです。
返信する
Unknown (宇治金時)
2016-09-13 10:05:24
アメリカ、中国の戦略は複雑怪奇。一筋縄ではいかない事は明白ですが、客観的には冷静に判断される先生も、それが対日本となると目が曇るようです。
返信する
そりゃそうだわ (リベラ・メ(本物の))
2016-09-13 08:36:10
そりゃそうでしょう。“例外無く”Americaの方から戦争を仕掛けたのだから。狙われる恐怖とはそういう事です。そのせいで、AmericaのIslamの人に対する差別主義が広まり、その環境に不満と怒りを持つIslamの人が、過激派に入りテロに及ぶ。で、又テロに狙われる。狙われるから攻撃を仕掛ける。仕掛けるからIslamに偏見が向けられる。向けられるから過激派に…の悪循環。原因は自らに有るのに、この態度。何時まで経ってもテロの標的でしょうね…。これじゃ。
返信する
火に油 (別視点)
2016-09-13 07:43:32
>先に攻撃したのはアメリカだから

街の喧嘩にしろ戦争にしろ、どっちが先に手を出したか揉めて始まる事が多いので、平和を愛する諸国民はこういうこと言っちゃダメ
返信する
テロ攻撃を受けた後に、 (K)
2016-09-13 06:03:44
> もし、この15年、アメリカが武力行使をせずに、戦争にかかってきた何十兆円というお金を使って、中東などの発展途上国の貧困対策などに努めてきていたなら、絶対にアメリカがこれほどテロの標的になることはなかったのです。

中東に数十兆円の支援策をした場合、アメリカ世論はどうなるだろうか?
また、テロリストに「アメリカは攻撃されると金を出す」と誤ったメッセージを送ることにもなってしまう。

実現可能性をゼロにした机上の空論を唱えても、平和はやってきませんよ。
返信する
ありがとうございます (raymiyatake)
2016-09-13 00:55:34
日付け、直しておきましたm(__)m
返信する
Unknown (Kuwanty(沢井))
2016-09-13 00:35:37
なるほど、クリント.イーストウッド監督の映画は自分たちサイドからしかあの戦争を見ていないもののようですね。

まぁ、自国民の同胞が悲しんでいたり、苦しんでいたりするのを黙っていられない気持ちは理解できますが…

しかし、あの戦争はブッシュ政権の副大統領、チェイニーの持つイラクの石油利権を守るために始めたとも聞いたことがあります。

自国民を死に追いやってまですることではないですよね?

ここでは関係ないですが、日本の起こした先の戦争も大して変わらないのではないでしょうか。

本当の怒りは、始めた側の決定者に向けられるべきです。責任も大してとっていないのですから…


PS 中段以降の3.11テロは9.11テロの間違いですよね?
返信する
テロを無くす方法 (天城冴)
2016-09-13 00:18:27
友人にテロを無くす方法はあるかと聞かれたので、過激派の構成員に家族と仕事、別の生きる意味を見出ださせること、人間として尊重されていると思わせることと答えたことがあります。理想論ですが、恐らく恒久的な解決法になると思う。
それには欧米の過ち、特にアメリカがしてきた人の土地や資源を掠めとり発展したという負の部分にもっと向き合う必要があり、さらに移民により労働力や優秀な頭脳を集められたということを認めなければならない。もちろん武器を間接的かもしれないが、テロリストに渡して経済を持たせてることも。まあ、今のアメリカには無理か。日本人ほどでないにしろ間違いは認めたくない、謝りたくない、謝ったら馬鹿にされるから嫌。掠めとったものでも富は手放したくない。都合の悪いことは見ない人が増えてるし。トランプ支持者のような
トランプ大統領が実現したら日本とどっちが先に独裁国家になるか競うんですかね。反対派をテロリスト呼ばわりして虐殺するんだろうな。軍も中国やらロシアと表だってやりあうわけにいかないので、テロリストがいたほうがいいと思ってる人もいるかも。
テロリストだけでなく、テロリスト殲滅いうひとにも人間の存在意義とか説かないと駄目かもね、そうなると益々テロを無くすのは難しい。双方聞く耳もたないだろうな。でも努力はすべきですが
返信する
一種の自業自得 (一国民)
2016-09-12 23:43:11
アメリカのやる事なす事全てを否定するつもりは毛頭ありません。
でも、アメリカには、特にジャパンハンドラーのような人間には「俺たちこそが世界を動かしている」、「俺たちが世界の中心にいて、一番偉いのだ」という驕りが滲み出ている。

一般のアメリカ人からしてみればいい迷惑なのだが、そういった人物あるいは関係者を政治のトップに据えてきたのだ。だから、アメリカがテロの一番の標的になり犠牲になるのは自業自得だと思う。

アメリカを牛耳っている人物たちが本当に身に染みて謙虚な考えを持ち姿勢を示さない限りは、テロの撲滅など有り得ないと思う。
そして、そんなアメリカのポチに成り下がり、アメリカの望み通りの政治しかしない日本の馬鹿政治家共が蔓延る限り、日本の民主主義定着と経済回復は有り得ない。
返信する

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