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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

航空自衛隊が敵基地攻撃研究 安倍政権は専守防衛を放棄しようとしている

2014年01月04日 | 安倍政権の戦争法

 

 敵基地攻撃能力とは、弾道ミサイル発射基地など相手国の基地を攻撃する装備能力のことです。

(1)敵基地の所在確認(2)敵の防空能力の無力化(3)十分な打撃力―が必要とされます。敵基地攻撃能力が想定しているのは、日本を標的とした弾道ミサイル発射の兆候をつかんだ場合、他に手段がなければ巡航ミサイルで発射施設をたたくというものです。これは北朝鮮による核・ミサイル開発を念頭に置いているわけですが。

たしかに、1956年の鳩山内閣の政府見解は、誘導弾攻撃など急迫不正の侵害で、他に防御手段がない場合には

「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない」

として必要最小限度で「誘導弾等の基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれ可能だ」との立場をとりました。

そして、産経新聞によると、政府が今夏、航空自衛隊に「航空戦術教導団」(仮称)を新編し、戦闘機と地対空誘導弾の戦闘技術を高める教導隊を集約したうえで、北朝鮮の弾道ミサイル発射基地を念頭に敵基地攻撃能力の研究に着手するというのです。

この敵基地攻撃は先制攻撃をするというものですから、専守防衛の範囲を越えるものといえます。ましてや憲法の平和主義、戦争を放棄した憲法9条とは相いれないということで、政府見解とは違い憲法学会の多数説では、違憲とされてきました。そこで、歴代内閣も、専守防衛の立場から攻撃的兵器の保有はしない方針を維持してきました。

だからこそ、敵基地攻撃の代わりに、曲がりなりにも専守防衛の一環として、高いイージス艦を5隻も購入し、1兆円もかけてミサイル防衛システムを導入しつつあるのではなかったのか。敵基地攻撃となれば、さらにトマホーク巡航ミサイルなどを購入することになりますが、いくら防衛費がかかるのか。またアジアをはじめとする国際社会での信用失墜はいかばかりか。

だいたい、日本が敵基地攻撃能力を持っても、たとえば北朝鮮も移動式ミサイルや地下式など、攻撃されないようにしてくるに決まっていて、敵の基地を先に攻撃しても、単に戦争の引き金を引くだけで、戦争を未然に防げるわけではないのです。単にアメリカや軍需産業を儲けさせるだけの机上の空論が「敵基地攻撃能力」なるものです。

それなのに、安倍内閣はこんな敵基地攻撃を導入して、専守防衛の枠組みを一気に覆そうとしているのです。安倍首相は敵基地攻撃だけでなく、憲法が禁じている集団的自衛権の行使や、9条改定による国防軍創設や交戦権の行使を目指しています。その先にあるのは「戦争ができる国」でしょう。

日本が専守防衛を放棄して先制攻撃の準備を始めれば、東アジアの緊張は一気に高まり、先に戦争を仕掛けられるなど戦争の危険性が大きくなります。もちろん敵基地に攻撃ができるようになれば、日本から戦争を起こす可能性も出てきます。

しかし、憲法前文は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」と宣言しています。これは、日本の侵略によるアジア太平洋諸国の惨状や、その結果としての沖縄、東京、広島・長崎などでおびただしい数の命が奪われた第2次大戦を教訓にしているのです。

安倍政権による事実上の専守防衛の放棄の動きは、平和国家として再出発した戦後日本の原点を否定するもので到底容認できません。

 

返す返すも残念な安倍「軍国主義」政権の誕生。

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空自に今夏「航空戦術団」 敵基地攻撃能力を研究 北ミサイル念頭に

2014.1.3 07:00 産経新聞

 政府が今夏、航空自衛隊に「航空戦術教導団」(仮称)を新編することが2日、分かった。戦闘機と地対空誘導弾の戦闘技術を高める教導隊を集約し、北朝鮮の弾道ミサイル発射基地を念頭に敵基地攻撃能力の研究に着手。東シナ海に防空識別圏を設定した中国の戦闘機が領空を侵犯する恐れも強まる中、敵のレーダーを無力化するための電子戦の能力向上に向けて「電子作戦群」も新設する。

 航空戦術教導団を新たに編成するのは、昨年12月に閣議決定した平成26年度から5年間の中期防衛力整備計画(中期防)を受けた措置。中期防には敵基地攻撃能力の保有に関し「弾道ミサイル発射手段への対応能力のあり方を検討し、必要な措置を講じる」と間接的な表現で盛り込んでいる。

 戦術教導団は空自の作戦中枢である航空総隊に属させる方針で、すでに準備要員を総隊司令部に配置。新編時は団司令部に約100人、団全体では約1千人の規模を想定する。

 戦術教導団は新田原基地(宮崎県)の飛行教導隊と浜松基地(静岡県)の高射教導隊を傘下に集める。飛行教導隊は戦闘機部隊、高射教導隊は地対空誘導弾部隊の戦技の向上や研究を行っている。戦術教導団に集約することで、攻撃と防御に分かれ実戦に則した作戦構想を研究するのが狙い。

総隊司令部飛行隊に属している電子戦支援隊なども戦術教導団に移し、「電子作戦群」に改編。空自は電子戦訓練機EC1を運用しており、敵の地上レーダーや地対空ミサイルを無力化する電子戦の技術向上や態勢強化を研究する。

 第3航空団(青森県)に属する航空支援隊も戦術教導団に移す。航空支援隊の隊員には、ミサイル基地などの攻撃目標に近づき、空自戦闘機の飛行経路や爆弾投下のタイミングを指示する「爆撃誘導員」の任務が期待され、戦術教導団は誘導員の育成や訓練の内容を具体化させる。

 現有装備で敵基地攻撃を実行する場合、衛星誘導爆弾を投下する支援戦闘機F2のほか、それを護衛する迎撃戦闘機F15、敵レーダーを妨害するEC1、空中給油機KC767が随伴。将来的には爆撃誘導員が敵地へ潜入する。平成28年度に最新鋭ステルス戦闘機F35Aライトニング2の調達が始まれば、F2の任務を代替させる。

 戦術教導団はこの作戦を遂行できるよう各分野での課題を検証し、新規に導入すべき装備も洗い出す。

 敵基地攻撃弾道ミサイル発射基地などへの攻撃は法理的に可能と解釈されてきた。昭和31年の鳩山一郎内閣の「他に手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれ、可能」との政府統一見解が代表的。

 

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29 コメント

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何たる話か (AS)
2014-01-04 21:15:14
でもネット右翼達は大喜びでしょうね。「うるさいシナチョンを黙らせるためにはまだ足りない」とか言い出すかも。
彼らが求めるのは中国・朝鮮半島支配、大日本帝国の復活です。
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机上の空論 (リベラル国士)
2014-01-04 22:50:55
 敵基地攻撃能力=戦争の引き金ひくということです。ミサイル打ってハイオシマイなんて単純なものではないと思います。
 あくまでも日本が単独で敵国の戦意を挫く、戦争終結できる能力をもつということです。当然それなりの戦力ももたないといけませんし人もカネもかかる。そもそもそんな戦力もつことをアメリカが許すとも思えませんし周辺国との問題もあります。そのために信頼関係築かなければいけないのに歴史修正に靖国参拝と逆に信頼損なうことしているのには呆れます。
返信する
今の抑止力では不十分? (N.O.)
2014-01-04 23:51:02
現存のミサイル防衛システムでは、敵のミサイルが発射されると同時に把握できるのではなかったのですか。それなら各地に配備した長距離ミサイルですぐに報復できるので抑止力になるのでは?
国際世論の問題もあり、先制攻撃したほうが有利になるとは限らないですよね。
返信する
自民党に破防法を (某臨床心理士)
2014-01-05 00:06:26
安倍氏や菅官房長官の最近の物言いは、子供の意地っ張りにしか思えません。
そしてわざと相手国を挑発する。
そこに快感を感じているようにすら思えてきます。
まあ、安倍氏にとっては、敵(仮想敵にしろ現実的な敵にしろ)に挑戦する英雄的自己イメージは、祖父や父に従ってばかりで本当には自分を作ってこなかった空虚さを隠してくれますしね

しかしともかく国民を危険にさらすだけです。

もしかしたら、潜在的に、安倍氏には国民殺害の願望があるのでしょうか。
信念の為に、国民を総玉砕させた大将ということが名誉だと考えているのでしょうか。
自分の信念を奉じて多くの国民が死んでくれた、ということにロマンを感じるのでしょうか。
ありえるかも知れません。
同胞集団を殺しえることはその集団の神の位置に来るということですから。
カルトの集団自殺みたいなものですね。

自民党に破防法をかけたほうが良いのではないでしょうか。

以下、Wikipedia 破壊活動防止法より抜粋。
『破壊的団体の規制 
団体活動の制限 要件(両方を充足すること) 1.団体の活動として暴力主義的破壊活動を行った団体であること
2.継続又は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行うおそれがあると明らかに認められるに足りる十分な理由があること』

そろそろ引っかかってきそうにも思えるのですが。
返信する
Unknown (戦争はしてはいけない)
2014-01-05 13:51:08
独自の軍隊ではなく
米軍の先兵として日本の自衛隊
石破さんの望む国防軍は
米軍が中東で戦争する時の地上軍を日本にやってもらおうとしている。
アメリカ人は死なないで日本人の貧乏人の息子が死ぬし地上戦で目の前で殺す役割になる。
息子が亡くなってしまうか帰還できても廃人になってしまうのが見えるようです。
アメリカではそのようなことが耐えられなくなって日本に集団的自衛権という戦争準備をさせようとしている。
返信する
Unknown (リベラル国士)
2014-01-05 21:59:04
 勇ましいのはいいのですがその”勇ましいこと”をするのは自衛隊の人達です。安倍や石破、石原、西村慎吾、中山成彬らが鉄砲かついで戦場駆けずり回るわけではありませんからね・・・。もっとも戦場に出てこられても何の役にも立ちませんが。
返信する
Unknown (12434)
2014-01-06 12:40:15
>某臨床心理士様

案外それはあり得るかもしれません。自民党の柴山昌彦氏も、自己の権利を主張することを卑下して自己犠牲を賛美していました。
http://m.togetter.com/li/573158

去年のJR横浜線で、自分の命を犠牲にして他人を助けた話のことなんですが、私は柴山議員の人間性を疑いますね。まともじゃないですよ。

いや確かに、自己犠牲の精神自体は崇高だと思いますが、こんな風に比較するものではないでしょう。ヘドがでますね。
返信する
柴山氏は亡くなられたかたを冒涜している (某臨床心理士)
2014-01-06 16:45:16
12434様、レスありがとうございます。
ホント、柴山氏のは「あなたがたに生きる権利はない、自民党のために死ね」という発想ですね。

「自己の権利を声高に主張する人たち」ってどんな人を想定してるのでしょう。

あまりそういう人は居ないのでは。

結局、人権派を想定しているんでしょうかね。「人間の権利」を主張しているだけなんですが・・。

もし、人権派への文句であれば、件の女性や職員は人権を重んじたからこそ助けたのだと思いますが・・・。
彼女らは人権を重んじる人ではなかった・・というなら彼女らへの冒涜ですね。

それとも、柴山氏は人権を叫ぶ人は自己の権利のみを主張している人だと思ってるのでしょうか。他者の権利も当然含めて叫んでいるのですが・・・。

柴山氏自身が、自分のことしか考えたことがないから、人権を言うときは人は当然他者の人権も考えている、ということが想像もできないのでしょうか? あるいは人が他者の為に行動するのは、上からの命令や上が決めた秩序に強制されてでしかありえない、と考えてるのでしょうか?  「国民が権利は天から付与される、義務は果たさなくていいと思ってしまうような天賦人権論をとるのは止めよう、というのが私たちの基本的考え方です。」と言う片山さつきは同種ですね。”義務で”彼女ら(上記女性や職員)は人を助けた、としか考えられないのでしょうか(これもまた冒涜ですね)。他者の人権も考えるからこそ、義務ではない倫理観が自然に持ち得るはずなのに、そういうレベルで、柴山氏や片山氏は生きたことがないからこんな愚かなことしか考えられないのでしょうね。

以下、12434様より、ご紹介されたところからの抜粋。:

>しばやま昌彦です。よろしくお願いします。 【経歴】 1965(S40)年12月5日生。A型。身長178cm体重76kg。空手(和道流2段)。東大法学部卒・住友不動産㈱・弁護士。 2004年(H16)4月から衆議院議員(4期、埼玉8区(所沢・大井・三芳))。総務副大臣。★自由民主党初の全国公募による新人候補として立候補

>自己の権利を声高に主張する人たちは、身を呈して電車にひかれそうなお年寄りを助けようとした横浜の女性や、震災時に命にかえて最後まで避難放送を続けた南三陸の職員を、どう捉えているのだろう。:
返信する
Unknown (12434)
2014-01-06 22:03:06
>某臨床心理士様

なんていいますかね。柴山議員には、「自己の権利を高らかに主張する人たち」の定義を是非教えていただきたいですな。
こんなもん極端な話解釈次第じゃ、国民の知る権利を守るために特定秘密保護法案に反対した我々だってそれに該当しますよ。

石破幹事長が反対活動をテロ呼ばわりしたことも考えると、柴山氏が我々をそんな風に思っている可能性は否定できません。

天賦人権論についていうなら、これを本気で「義務を果たさなくてもいいという概念だ」と思う政治家の気がしれません。
天賦人権論は西欧で生まれたものですが、片山さんはヨーロッパやアメリカの人々が無責任を肯定してきたといいたいのでしょうかね?

私はこの概念はむしろ、ある意味人間としての義務や責任を重んじるものだと考えています。
「すべての人間は人である時点で尊重され、個性をもった存在であり、皆幸福に生きる権利をもっている」という前提は、言い換えれば、「誰でも尊い存在であり幸福に生きる権利を持つ以上は、理不尽に他者の人権を踏みにじる行為は許されない」ということになると思います。

人権を制限するときは、それぞれの人権が対立した場合を基本として、なにかしらの落としどころを着ければいいでしょう。もっとも例外もあるようです。公正な裁判や選挙の実現のために制限するとかね。
そういう意味では、自民党がいうように「人権同士の衝突以外にも、人権を制限できる理由はある」という主張も一理あるでしょう。

しかしだからといって、なんでも制限していいわけはありません。従って、我々国民は権力者が「公益もしくは公共の福祉」という理論を濫用させないように気を付けないといけません。
あと、「権利や自由には義務と責任が伴うものだ!」と強く主張する人も多いけど、そもそも権利には義務を伴うものとそうでないもの両方存在しています。
誰かに金を貸したら返してもらう権利を持ちますが、基本的にこれに義務は伴わないでしょう。他にもたくさんあるとは思いますが。

だから自民党改憲案による「国民の権利と義務」の改悪は大反対です。
返信する
無題 (AS)
2014-01-07 12:17:48
“某臨床心理士”さん

横浜事故は単なる素人の蛮勇でしかないと思います、私は。
警察官消防士自衛官が国民のために命を懸けるのはそれが仕事にして義務であり、万一の場合には補償もされるから。
一般の国民には何らそんなものはない。褒章や表彰がせいぜい。最悪の場合は丸損・死に損です。
私は赤十字の災害救援ボランティアに登録しているのですが、「絶対に自分の安全と引き換えに行動するようなことはするな、それはプロの仕事。後の補償もないあなた方はしてはならない」とうるさく指導されます(プロだって自分の安全を確保した上で行動するんですよ)。
自民党って、全国民が国(=自分達)の為に犠牲になる、戦中の日本みたいな国が望みのようですね。教育勅語にも記されてますし。
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