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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

平和構想提言会議が岸田政権の安保3文書を批判して「戦争ではなく平和の準備を―“抑止力”で戦争は防げない―」を発表!「軍拡のための『戦略』ではなく、平和のための『構想』こそが求められている」。

2022年12月16日 | 人権保障と平和

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  岸田政権は2022年12月16日、いわゆるなど安保関連3文書、すなわち外交や防衛などの指針である

1 国家安全保障戦略(NSS)

2 防衛の目標や達成する方法を示した「国家防衛戦略」(現・防衛計画の大綱)

3 自衛隊の体制や5年間の経費の総額などをまとめた「防衛力整備計画」(現・中期防衛力整備計画)

を閣議決定し、岸田首相は今晩記者会見してこれを説明しました。

【#自民党に投票するからこうなる】岸田政権が参院選の公約になかった負担増と悪政を乱発。原発新・増設、防衛費5年で43兆円+防衛増税、健康・介護保険料の負担増。#岸田総理の辞任を求めます

 

 

 このうちNSSでは、安保環境は

「戦後最も厳しい」

とし、相手の領域内を直接攻撃する

「敵基地攻撃能力」「反撃能力」

との名称で保有すると明記しました。

 そもそも旧ソ連が存在して、日本の領空をガンガンに侵犯している中、アフガニスタンに侵攻した時より今の方が安保環境が厳しいだなんてありえないのですが、とにかく、平和憲法に基づいて専守防衛に徹し、軍事大国とはならないとした戦後日本の防衛政策を岸田政権は大きく転換させようとしています。

岸田首相が防衛予算を5年後までに2倍増してGDP比2%(11兆円)まで引き上げるように正式に指示。コロナ予算まで流用する、百害あって一利なしの危険な軍国主義政策を取る余裕など日本にはない。

 

 

 この安保3文書に対する批判はこれからずっと書いていくとして。

 今日は、このの安全保障関連3文書改定を前に、憲法学や国際法などの学者と平和運動家の市民や国際政治の専門家やジャーナリストらが創設した「平和構想提言会議」が12月15日、国会内で記者会見して発表した平和構想提言

戦争ではなく平和の準備を―“抑止力”で戦争は防げない―」

をご紹介したいと思います。

 

 

 この提言は、他国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力=敵基地攻撃能力=先制攻撃能力の保有などで

「軍事的リスクは高まる」

と指摘し、日米同盟一辺倒から脱し、アジア重視の平和外交を強めるよう求めています。

 

 

 

 この平和構想提言は、政府の「国家安全保障戦略」など安保関連3文書に対置する「平和構想」を提起し、戦後の安全保障政策を大転換させる敵基地攻撃能力の保有や軍事費の倍増などの強行を厳しく批判して、

「軍拡のための『戦略』ではなく、平和のための『構想』こそが求められている」

と訴えています。

 

 そして、政府・与党の議論の中心にある

「軍事力の増強が抑止力を強め、平和を担保する」

という考え方を

「極めて短絡的で危険」

と批判。

 防衛力強化がかえって周辺国との軍拡競争を招いて戦争のリスクを高めると警鐘を鳴らし、今こそ憲法9条が定める平和主義の原則に立ち返るべきだと強調して、軍事力中心主義や「抑止力」至上主義から脱却すべきだと指摘し、日本国憲法の基本原則に立ち返るよう求めるとともに、東南アジア諸国連合(ASEAN)などの枠組みが果たす役割の重要性を強調しています。

 

 

 さらに、この提言では「平和のために何をすべきか」として、

1 「攻撃的兵器の不保持」の原則を明確化・厳格化

2 辺野古新基地建設と南西諸島への自衛隊基地建設の中止

3 核兵器禁止条約への署名・批准

などを具体的に提案しています。

 岸田政権の安保3文書は安倍晋三元首相がやりたくて仕方なかったことを具体化していて、「安倍晋三の亡霊」という言葉が頭に浮かぶのですが、この平和構想提言会議の共同座長である憲法学の青井未帆学習院大学教授は、安倍政権による2015年の安保法制の強行に続く大軍拡が進められているとして、

「今回の提言がきっかけとなり、戦争ではなく平和の構築に歩んでいくことを強く願います」

と述べました。

 

 

 今年に入ってから日本の世論が軍拡容認に傾いたきっかけはロシアによるウクライナ侵略にあるわけですが、ウクライナはロシアによる2014年のクリミア半島併合から急ピッチに軍拡を進め、西側の軍事同盟であるNATOにも加盟しようとしていました。

 しかし、ロシアにとっては隣国のウクライナまでNATOに加盟することが許せず、ウクライナの軍拡などものともせずに侵略戦争を開始して、今の泥沼の惨状になっているわけです。

 ウクライナのゼレンスキー大統領だって時計を去年に巻き戻せたら、ロシアの反対を押し切ってNATOに強行加盟しようとするのではなく、戦争回避のためにウクライナの軍事的中立化こそ目指したのではないでしょうか。

 戦争を抑止するために有効なのは軍備や軍事同盟ではなく、粘り強い平和外交であることは世界普遍の原理原則です。

 まして、戦争放棄と武力不保持を定めた憲法9条を持つ日本が軍事大国になってどうするんですか。

終戦記念日に岸田首相が「私たちが享受している平和と繁栄は戦没者の皆さまの尊い命と苦難の歴史の上に築かれたもの」。日本が侵略戦争をしたことで2000万人のアジアの方々の命を奪ったことを忘れるな。

 

 
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この平和構想提言については、この会議に参加されている「社会権の会」会長の国際人権法の申先生からうかがっていました。

全国紙では毎日新聞、地方紙では東京新聞と広島新聞しか報道が見つからないのですが、マスメディアには政府に対する市民の対案をもっと報道してほしいし、野党第1党の立憲民主党などもどんどんこういう提言を自分たちの政策に取り入れるべきですね。

それにしても、日本という国のあり方を根本的に変える先制攻撃能力具備や大軍拡について、国会が終わってから発表して議論させない岸田首相のやり方は言語道断です。

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安保関連3文書を閣議決定 安保政策転換 反撃能力の保有明記

首相官邸=竹内幹撮影

 政府は16日、外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を改定し、閣議決定した。安保戦略は、相手国のミサイル発射拠点などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を明記した。2027年度に防衛費と関連経費を合わせた予算水準を現在の国内総生産(GDP)比2%に増額する方針も掲げた。専守防衛に徹する方針は今後も変わらないとしたが、相手国内を攻撃する能力を保有してこなかった従来の安保政策を大きく転換することになる。

 閣議決定した3文書は安保戦略のほか、国家防衛戦略と防衛力整備計画。防衛戦略と整備計画は、従来の防衛計画の大綱(防衛大綱)と中期防衛力整備計画(中期防)から改称した。安保戦略は13年に第2次安倍政権下で初めて作られ、改定は今回が初めて。

 安保戦略は反撃能力について、既存の「武力行使の3要件」に基づき「攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置」と定義した。北朝鮮や中国を念頭に「我が国周辺」のミサイル能力の向上に言及し「相手からの更なる武力攻撃を防ぐために必要」と強調した。「日米が協力して対処していく」と掲げた。

 政府は反撃手段に長射程ミサイルを想定する。整備計画は、陸上自衛隊の地対艦ミサイルの改良型や、米国製巡航ミサイル「トマホーク」を配備する方針を盛り込んだ。防衛費は23~27年度の5年間で43兆円程度とした。19~23年度の中期防の1・5倍を超える水準に相当する。

 安保戦略は、中国の動向について、国際秩序に対する「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と表現した。前回の安保戦略で日本や国際社会の「懸念事項」とした表現も「深刻な懸念事項」に強めた。

 核・ミサイル開発を進める北朝鮮は前回の「重大な脅威」から「一層重大かつ差し迫った脅威」に変更した。ロシアは前回、協力相手との位置付けだったが、今回はウクライナ侵攻などを受け「安全保障上の強い懸念」に改めた。

 重要物資のサプライチェーン(供給網)強化など経済安全保障政策の推進も盛り込んだ。【日下部元美】

 

 

 

提言を公表する「平和構想提言会議」のメンバーら。左から武器取引反対ネットワーク・杉原浩司代表、ピースボート・川崎哲共同代表、ピースボート・畠山澄子氏、上智大・中野晃一教授=15日、国会で(高嶋ちぐさ撮影)

提言を公表する「平和構想提言会議」のメンバーら。左から武器取引反対ネットワーク・杉原浩司代表、ピースボート・川崎哲共同代表、ピースボート・畠山澄子氏、上智大・中野晃一教授=15日、国会で(高嶋ちぐさ撮影)

 政府が16日に閣議決定する方針である外交・防衛の指針「国家安全保障戦略」など安全保障関連3文書に関し、憲法学者らによる「平和構想提言会議」は15日、3文書に現行憲法では認められないような内容が盛り込まれているとして、対案と位置付ける提言「戦争ではなく平和の準備を—”抑止力”で戦争は防げない—」を公表した。政府が進める敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛費の大幅増を批判し、憲法9条に基づく専守防衛の堅持や、外交交渉で緊張緩和を実現する重要性を訴えている。 (柚木まり)

◆政府・与党の考え方「極めて短絡的で危険」

 提言では、3文書改定は日本の安保政策の大転換となり、「日本が自ら戦争をする国家に変わる」と指摘。改憲が必要になるほどの重大な政策転換であるにもかかわらず、「国会の徹底的審議もないままに憲法の実質が勝手に上書きされようとしている」と懸念を示した。
 その上で、政府・与党の議論の中心にある「軍事力の増強が抑止力を強め、平和を担保する」という考え方を「極めて短絡的で危険」と問題視。防衛力強化がかえって周辺国との軍拡競争を招いて戦争のリスクを高めると警鐘を鳴らし、今こそ憲法9条が定める平和主義の原則に立ち返るべきだと強調する。

◆「国民的な議論もなく勝手に決めていいわけがない」

 今後、取り組むべき具体策として、朝鮮半島の非核化に向けた外交交渉の再開や中国を「脅威」と認定しないことなど、アジア諸国との対話の強化を提唱。専守防衛の堅持も明記し、米国製巡航ミサイル「トマホーク」など敵基地攻撃能力の保有につながる兵器の購入や開発の中止を求めた。
 憲法や国際政治、軍縮の専門家、市民団体代表ら有志の15人でつくる同会議は15日、国会内で記者会見した。共同座長の学習院大の青井未帆教授(憲法学)はオンラインで参加し、「憲法9条があるのに、なぜ先制的な反撃が可能になるのか。議論が圧倒的に足りない」と幅広い議論を呼びかけた。
 上智大の中野晃一教授(政治学)は敵基地攻撃能力の保有に関して「国民的な議論もなく勝手に決めていいわけがない。認めないとはっきり言っていく必要がある」と訴えた。
 
平和構想提言「戦争ではなく平和の準備を―”抑止力”で戦争は防げない―」の要旨は次の通り。
 (1)いま何が起きているのか
 安全保障関連3文書改定は、日本の安全保障政策を根本的に変更し、自ら戦争をする国家に変貌する。国民投票を通じて憲法を明文的に変えなければ許されないほどの重大な変更だ。憲法の実質が勝手に上書きされようとしている。
 政府・与党は「抑止力を高める」とするが、実際には戦争のリスクを高める。北朝鮮の核ミサイル開発、中国の軍備増強や海洋進出は重大な問題だが、日本の対応策が軍備増強や攻撃態勢強化ばかりなら、平和的解決は遠のく一方だ。
 今日の軍事的緊張がエスカレートすれば、戦争は現実となる。東アジアにおける戦争は世界の経済、食料、環境に壊滅的な影響をもたらす。軍事的な「勝利」の想定に意味はない。
 米中対立の中で、「日米同盟強化」一辺倒の姿勢をとり、米国との軍事協力関係の強化に突き進んでいくことは極めて危険。その失敗は、世界大戦となるリスクと背中合わせだからだ。
 (2)「国家安全保障戦略」改定のどこが問題なのか

 敵基地攻撃能力の保有について、政府・与党は「専守防衛の考え方の下」で進めると強弁するが、専守防衛の肝は、隣国に届く武器を持たないことで他国への脅威とならないようにすること。この大原則が根本から覆されようとしている。相手国にミサイルを撃ち込めば、当然、日本は報復攻撃を受ける。その先はミサイルの撃ち合いの戦争だ。
 首相は、防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)の2%程度に増額するよう指示した。実現すれば、世界第3位の軍事費大国となる。増額論の前に、その透明性と説明責任の確立こそ急務だ。
 防衛装備移転3原則の運用指針を改定し、殺傷能力のある大型武器の輸出も検討されている。日本製の武器によって他国の人々が殺傷されることが現実となる。紛争当事国に肩入れすることは、日本が紛争の予防や解決の仲介者となるための国際的信用を失わせる。
 政府は米国による核の使用・威嚇政策を支える側に回っている。核兵器禁止条約にも背を向けたままだ。
 (3)考え方をどう転換すべきなのか
 軍事力中心主義や「抑止力」至上主義は、極めて短絡的で危険だ。抑止力は、武力による威嚇に限りなく近い概念。安保論議の中心に据えられている状況は憂慮すべきだ。持続可能な安保のため、抑止力の限界を認識し「抑止力神話」から脱却しなければならない。
 民主主義や人権、法の支配といった基本的価値は妥協すべきではない。平和もまた基本的人権で、紛争を平和的に解決することは国際法の要請だ。民主主義のためだと称して、戦争の準備に突き進むべきではない。米国への過度な軍事的依存を正し、アジア外交と多国間主義を強化すべきだ。平和は一国で作れない。中国との緊張緩和と関係改善、朝鮮半島との関係の安定化は、日本の社会・経済をより豊かにする。
 (4)平和のために何をすべきか―今後の課題
・朝鮮半島の平和と非核化に向けた外交交渉を再開させる
・元徴用工問題について、過去の被害を踏まえた解決策を探る
・中国への「敵視」政策を停止する
・日中の首脳レベル相互訪問の早期再開に合意する
・日中間の安全保障対話を進める
・「攻撃的兵器の不保持」の原則を明確化・厳格化する
・トマホークを含め「敵基地攻撃能力」を構成し得るあらゆる兵器の購入や開発を中止する
・辺野古新基地建設と南西諸島への自衛隊基地建設を中止する
・核兵器の先制不使用を米国をはじめ核保有国に働きかける
・核兵器禁止条約への署名、批准。まずは同条約締約国会議にオブザーバー参加する
 
 
 

「戦争ではなく平和の準備を」平和構想会議提言 安保3文書対案

提言を発表する「平和構想提言会議」共同座長の川崎哲さん(奥左から2人目)=東京都千代田区の参院議員会館で2022年12月15日午後4時ごろ、木村健二撮影

 政府・与党による防衛力の抜本的な強化の検討が大詰めを迎える中、NGO関係者や研究者らでつくる「平和構想提言会議」は15日、「戦争ではなく平和の準備を」と題する提言を発表した。政府が16日にも閣議決定する国家安全保障戦略など安保関連3文書の対案と位置付け、軍事力に頼り過ぎずに平和を築く道筋を描いている。

 同会議は政府・与党の検討をにらみながら、10月29日に発足。青井未帆・学習院大教授(憲法)とピースボート共同代表の川崎哲さんを共同座長に、計15人がメンバーに名を連ねる。

 岸田文雄政権は2023~27年度の防衛費として43兆円を確保する方針だが、提言は「コロナ禍や物価高とそれにともなう貧困・格差が拡大する中で、なぜ軍事が聖域とされるのか。社会保障、医療、教育など、人々の命と権利のための施策がますます犠牲にされていくことは必至だ」と疑問を投げかける。

 相手国のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)については、ミサイルの撃ち合いによる戦争に発展する恐れがあると指摘。反撃能力の保有などは憲法9条の下で「専守防衛」を基本にしてきた日本の防衛・安全保障政策の大きな転換となるが、提言は「憲法の実質が勝手に上書きされようとしている」と批判する。

 提言は「平和の準備」を進めるための課題として、中国への「敵視」政策の停止、「攻撃的兵器の不保持」の原則の厳格化、核兵器禁止条約への批准などを挙げた。国境を越えた市民社会の連携が極めて重要だとして、今回の提言を各国語に翻訳して対話や議論を促すことにしている。<picture>「平和構想提言会議」が対面とオンラインで行った公開会議=東京都文京区で2022年11月21日、木村健二撮影</picture>拡大

「平和構想提言会議」が対面とオンラインで行った公開会議=東京都文京区で2022年11月21日、木村健二撮影

 同会議はこの日、参院議員会館で提言を発表し、オンラインで参加した青井教授は「議論が圧倒的に足りない。平和の問題を自分たちの手に取り戻さなければいけないのではないか。この文書がきっかけとなり、平和の構築に歩んでいければと強く念じている」と語った。【木村健二】

「戦争ではなく平和の準備を」の骨子

1.いま何が起きているのか

・政府が勝手に憲法を上書きしようとしている

2.「国家安全保障戦略」改定のどこが問題なのか

・敵基地攻撃能力/反撃能力

・防衛費倍増

・武器輸出の全面解禁

・軍事が経済・社会・学術を支配する

3.考え方をどう転換すべきなのか

・軍事力中心主義と「抑止力神話」からの脱却

・日本国憲法の基本原則に立ち返れ

4.平和のために何をすべきか――今後の課題

・日本の「専守防衛」の堅持と強化

・緊張緩和と信頼醸成

・核・ミサイルの軍縮の促進

 

 

「戦争を回避せよ」安全保障で民間提言相次ぐ 政府の防衛力強化に

「新外交イニシアティブ(ND)」のオンラインシンポジウムで発言する猿田佐世さん(右)と柳沢協二さん=2022年11月28日

 

 政府・与党による防衛力の抜本的な強化の検討が大詰めを迎える中、平和外交を重視する民間のグループで提言をまとめる動きが相次いでいる。財源には増税や国債の発行が検討されているほか、いざ戦争が起きれば自分が攻撃の被害者になる恐れもある。各グループは、安全保障のあり方を「自分ごと」として関心を持つよう呼び掛ける。

 「戦争を回避せよ」。日米や東アジアの外交の多様化を図る民間シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」は11月28日、こんなタイトルの政策提言を発表した。NDは、2013年に弁護士の猿田佐世さんらが設立し、沖縄県の米軍基地問題をめぐる米国でのロビー活動などに取り組んできた。

 政府は、相手国のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有を目指すが、これまで自衛隊が基本としてきた「専守防衛」の考えから外れかねない。NDの政策提言は「すべてのミサイル施設を破壊することは不可能であり、必ずミサイルによる報復がある」と指摘。沖縄だけではなく、本土の基地が攻撃されるリスクがあるとする。

 政策提言を発表したオンラインシンポジウムでは、ND評議員で元内閣官房副長官補の柳沢協二さんが「この提言で一番大事なメッセージは、最後の最後まで戦争は回避しなければいけないということ。外交の失敗で戦争になるのは政治の問題。その政治(家)を選んでいるのは国民だ」と強調した。

 日本の防衛予算は国内総生産(GDP)比1%程度を目安に推移してきたが、岸田文雄首相は11月28日、防衛費など関連予算を27年度に2%に引き上げるよう指示した。米国の軍事情報サイト「グローバル・ファイアパワー」によると、22年の国防費支出の推計で日本は474億ドルで世界7位に位置する。2倍に増やしても、米国(7700億ドル)に次ぐ2位の中国(2300億ドル)にはほど遠い。

 猿田さんは「日本が中国と同じだけ軍事力を高めようと思った場合、どれだけ生活を切り詰めても及ばず、全く現実的じゃない」と語った。政策提言は全国会議員や中央省庁に送り、質問や政策立案の参考にしてもらう。<picture>「平和構想提言会議」の公開会議で発言する川崎哲さん(右)ら=東京都文京区で2022年11月21日、木村健二撮影</picture>拡大

「平和構想提言会議」の公開会議で発言する川崎哲さん(右)ら=東京都文京区で2022年11月21日、木村健二撮影

 また、政府の軍拡路線に危機感を抱いたNGO関係者や研究者、ジャーナリストらは10月29日に「平和構想提言会議」を発足し、平和構想の取りまとめを始めた。共同座長は、青井未帆・学習院大教授(憲法)とピースボート共同代表の川崎哲さんが務める。議論を広げていこうと、11月21日には東京都文京区で、対面とオンラインを組み合わせた公開会議を開いた。

 申惠丰(シン・ヘボン)・青山学院大教授(国際人権法)は、軍事支出とは対照的に低水準にある日本の教育支出に触れた。経済協力開発機構(OECD)によると、19年のGDPに占める教育機関への公的支出の割合は2・8%で、データのある加盟37カ国の中で下から2番目。申教授は「日本は武器ばかり買い込んで、人を育てる意味では、どんどん先細りしていく国になろうとしている。多くの有権者が本当に結果を引き受ける覚悟があるのか。『自分ごと』として考えなければいけない」と問い掛けた。

 川崎さんは、核兵器禁止条約の採択に貢献したとして17年のノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」で国際運営委員を務めてきた。日本は唯一の戦争被爆国でありながら核禁条約に参加しないままで、川崎さんは「日本政府の消極姿勢の根っこには、米国の軍事力に依存する日本の基本姿勢がある。ここを何とか転換させない限り、日本が核禁条約に加わる道も見えてこない。軍事力一辺倒ではない形の安全保障を議論することが今、本当に大切だ」と話す。

 平和構想提言会議は12月中旬に平和構想をまとめ、政府が改定を進める「国家安全保障戦略」など安保関連3文書の対案にしたい考えだ。川崎さんは「政府方針とは全く異なる次元の提言を打ち出していく。市民が安全保障の議論に参加し、国全体で、さらには近隣諸国も巻き込んで議論をしていく流れを作っていきたい」と意気込んでいる。【木村健二】

 

 

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Unknown (ewkefc)
2022-12-17 01:27:33
『平和構想提言会議が岸田政権の安保3文書を批判して「戦争ではなく平和の準備を―“抑止力”で戦争は防げない―」を発表!「軍拡のための『戦略』ではなく、平和のための『構想』こそが求められている」。』に対する意見
https://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/3314dfdea5cc7cfaf32c5907321f1a45


>とにかく、平和憲法に基づいて専守防衛に徹し、軍事大国とはならないとした戦後日本の防衛政策を岸田政権は大きく転換させようとしています。

かつて山田洋行事件なんてものが有りましたが、軍需産業の需要は脅威によって創出されます。
当時はソ連脅威論が利用されていました。しかし、ソ連脅威論など存在しないことがバレてしまいました。
脅威が存在しなくなると軍需産業は成り立たなくなます。ですから北朝鮮と中国脅威論が作られました。
他国の軍事的脅威を煽る目的は、アメリカと日本国内の軍需産業を守るためです。

【“危機的”国内防衛産業の維持へ国が本腰 「輸入増→撤退→基盤崩壊」悪循環どう断ち切る】
https://merkmal-biz.jp/post/3919
【防衛産業で「国が工場保有」、関連企業の設備負担軽減へ-自民・小野寺氏】
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-12-02/RM77IAT0G1KW01
【防衛生産・技術基盤戦略について】
https://www.mod.go.jp/atla/soubiseisakuseisan.html
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