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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

橋下徹氏が、米軍基地に関する砂川事件最高裁判決を「誤読」して自衛隊についての判決だと思い込み、しかも最高裁は自衛隊の持つ武器は必要最小限度でなくていいと言っていると言い出した。恥を知れ。

2022年04月13日 | 橋下維新の会とハシズム

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 司法試験受験生ならだれでも知っている砂川事件最高裁判決という有名判例があります。

 これは、日米安保条約および米駐留軍の合憲性が争われた事件です。

 1957年7月8日、東京調達局は,米駐留軍が使用する東京都下砂川町の基地拡張のために測量を強行しました。

 砂川事件とは、この測量を阻止しようとする基地拡張反対派のデモ隊の一部が米軍基地内に立ち入り、通信施設など関連物を壊した被告人が刑事事件刑事特別法条違反で起訴されたという刑事裁判でした。

 この訴訟で,被告人らは、安保条約およびそれに基づく米国軍隊の駐留が憲法前文及び9条に違反すると主張したので、日本の平和勢力と政府が対立する一大憲法訴訟となりました。

 

 ところでご存じのように、日本国憲法第9条は以下のような規定です。

第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 砂川事件の第一審の東京地方裁判所は1959年3月30日、

「日米安全保障条約に基づく駐留米軍の存在は,憲法前文と第9条の戦力保持禁止に違反し違憲である」

として、違憲な安保条約を基礎とする刑事特別法によって被告人らを有罪とすることはできないという画期的な無罪判決を下しました。

 これがいわゆる「伊達判決」と呼ばれる歴史に残る名判決です。

 

 この裁判は最高裁でも激しく争われてましたが、最高裁は米軍が憲法9条2条で保持することが禁止された「戦力」にあたるかについて

「同条項がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となつてこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである。」

などとして、日米安保条約を合憲としました。

 この最高裁判決はいろいろな面で憲法学者から批判されている酷い判決なのですが、米軍基地を日本に置くことを合憲というためにその前提として、

「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない」

として個別的自衛権を認めました。

 

 この判決はこれまでにもさまざまに悪用されて来たのですが、今度は橋下徹氏です。

 橋下氏は2022年4月10日のフジテレビ「日曜 THE PRIME」という番組でこう述べたそうです。

「日本の安全保障のいちばんの間違いは憲法9条の解釈だ。砂川判決の最高裁判決では、自衛のための措置は認められて、「国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができる」とされている。

 それなのにその後、内閣法制局は「自衛のための必要最小限度」という枠をはめた。

 しかし、国際情勢を見るのは内閣法制局ではなく、政治家だ。

 ただちに内閣法制局の解釈を白紙にしろとは言わないが、国際情勢に応じて適当な手段とは何か、極超音速兵器、攻撃型空母、ICBMなどこれまで政府がずっとダメだ、ダメだと言っていたものも、国際情勢に応じて考えていくことを憲法審査会でやってもらいたい。」

とにかく憲法9条が嫌い。

 

 

 橋下氏がわかっていないのは、砂川事件では前述のように、そもそも米軍基地や安保条約が合憲なのかということは問題になりましたが、自衛隊のことは全く問題になっていないということです。

 ですから、最高裁の判決文の中にただの一回も「自衛隊」という言葉さえ出てこないのです。

 それなのに、橋下氏はこの判決を自衛隊に当てはめて、最高裁判決は

「国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができる」

 としているのだから、自衛隊の持つ武器は適当と認められるものを選ぶことができると捻じ曲げて解釈したのです。

 いえいえ、最高裁判決はこう言っているのですよ。

「わが国の平和と安全を維持するための安全保障であれば、その目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り、国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができることはもとよりであつて、憲法九条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではないのである。」

  この通り、砂川事件最高裁判決は日米安保条約について述べただけで、自衛隊の武器の程度なんて全く触れてもいないのです。

 

 

 また、橋下氏は自衛隊の保持する武器について内閣法制局が

「自衛のための必要最小限度」

であれば許されるとして、自衛隊の兵器に枠をはめたのがけしからんというのですが、憲法9条は

「陸海空軍その他の戦力を保持しない」

としているのですから、本当は陸上・海上・航空自衛隊は違憲に決まっているのです。

  それを内閣法制局が自衛のための必要最小限度の実力なら「戦力」には当たらないと、苦しい解釈をしてやっと自衛隊合憲論が成立しているわけです。

2015年の安保法案審議のころから内閣法制局は無視しろといっていた橋下氏。

橋下市長のバカ理論「憲法学者より砂川事件判決の最高裁長官の意見が重要。最高裁長官の意見なのだから」

 

 

 ところが、橋下氏は最高裁判決によれば自衛隊は国際情勢に応じて必要な兵器を何でも持てるんだと言い出し、極超音速兵器、攻撃型空母、ICBM(大陸間弾道ミサイル)などすべて検討しろというのですから、憲法9条の存在を全く抜きにしていいんだと言っているわけです。

 このように、そもそも橋下氏は憲法という枠組みの中ですべての権力行使は行われるべきだという立憲主義を全く理解しないのです。

 2015年に安保法案を通すために、当時の安倍首相は内閣法制局長官の首を挿げ替えることまでして、集団的自衛権の行使も憲法9条から許されるという解釈をさせるという暴挙に出ました。

 ところが橋下氏ときたら、そんな内閣法制局の憲法解釈も邪魔だから無視していいというのですから、これは安倍氏よりさらにひどい軍拡主義者であり、かつ遵法精神ゼロです。

 こんな人が弁護士という肩書を利用して、砂川事件最高裁判決を間違って持ち出して視聴者をたぶらかしているのですから、本当に世も末としか言いようがありません。

砂川事件最高裁判決は集団的自衛権の行使が合憲である根拠にはならない。

 

砂川事件と田中最高裁長官

布川玲子、 新原昭治
 

内閣法制局は核兵器でさえ自衛のために必要最小限度なら保持することは認められるという解釈も出しています。

それでも必要最小限度という枠が窮屈だというのですから、橋下氏の軍拡路線にはあきれ返ります。

そして、こんな軍国主義な人がウクライナ戦争については右翼陣営から弱腰だと叩かれているのですから、日本の現状をあらためて考えると空恐ろしくなります。

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日本の憲法には盛り込まれていない「緊急事態条項」について、与野党有力議員が激論(画像:FNNプライムオンライン)
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ウクライナの国会にあたる最高会議(定数450人、任期5年)が、2月24日のロシアによる軍事侵攻後も議会機能を維持している。政府の戒厳や非常事態の布告を承認したほか、ロシア軍により損害を受けた不動産の補償に関する法律などを次々と成立させているという。憲法の緊急事態の規定により議員の任期も非常事態解除後まで延長できるという。
日本の憲法には戦争やテロ、大規模災害などの有事の際に政府の権限強化や国会議員の任期延長に関する、いわゆる「緊急事態条項」は盛り込まれていない。衆院憲法審査会の事務局によると、外国の憲法のうち9割以上が緊急事態条項を持つという。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、国会で「緊急事態条項」設置をめぐる議論が活発化している。

憲法に緊急事態条項の創設を盛り込む必要性

10日のフジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)には、衆院憲法審査会与党筆頭理事を務める自民党の新藤義孝政調会長代理と立憲民主党の小川淳也政調会長が出演し、緊急事態対応をテーマに白熱した議論を展開した。

新藤氏は「憲法9条の最大の問題は国防規定がないことだ」と指摘し、「憲法審査会で安全保障に対する議論を始めたい」と述べた。番組では改めて憲法に緊急事態条項の創設を盛り込む必要性を訴えた。

小川氏は、新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢を受けて「やれ、憲法改正だ、緊急事態だと、便乗するのはいい加減にしてほしい」と与党などの姿勢を批判。議員の身分や特権に関して判断するための憲法裁判所の設置に関しては前向きな姿勢を示した。

以下、番組での主なやりとり。

橋下徹氏(番組コメンテーター、元大阪市長、弁護士):戦争を起こさないためには、相手国との軍事力の均衡を図ることが必要だ。相手国から弱いと思われたらやられてしまう。日本の安全保障のいちばんの間違いは憲法9条の解釈だ。砂川判決の最高裁判決(1959年)では、自衛のための措置は認められて、「国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができる」とされている。それなのにその後、内閣法制局は「自衛のための必要最小限度」という枠をはめた。しかし、国際情勢を見るのは内閣法制局ではなく、政治家だ。ただちに内閣法制局の解釈を白紙にしろとは言わないが、国際情勢に応じて適当な手段とは何か、極超音速兵器、攻撃型空母、ICBM(大陸間弾道ミサイル)などこれまで政府がずっとダメだ、ダメだと言っていたものも、国際情勢に応じて考えていくことを憲法審査会でやってもらいたい。

新藤義孝氏(自民党政調会長代理):力の均衡が失われたときに悲劇が起きる。国にとって何が必要な安全保障体制なのかをつねに議論するのは政治の仕事だ。その判断について最終的には最高裁が憲法に違憲性があるか否か判断するが、一義的には立法がやり、行政がそれを実施する。この体系は変わっていない。憲法9条があるから、国に危険が迫っているのに何もしないというのはありえない。憲法9条の最大の問題は、国防規定がないことだ。憲法審査会で安全保障に対する議論を始めたい。

木下康太郎キャスター(フジテレビアナウンサー):ウクライナ国会はロシアが侵攻した2月24日以降も5回開催されている。戒厳令の導入を承認したほか、ロシア軍により破壊された不動産の補償、兵士の数を増やすための改正、戦争捕虜に関する改正など65本以上の法律成立や議会承認を行っている(4月10日時点)。ウクライナの憲法には緊急事態条項がある。(衆院憲法審事務局によると)憲法に緊急事態条項を設けている国は9割以上という。日本の憲法には規定はない。国会議員の任期について、ウクライナの憲法では、緊急事態終了後の選挙で選出された議員による最初の議会まで議員任期を延長できると定められている(憲法83条)。一方で、日本の憲法には、衆議院議員の任期は4年、参議院議員の任期は6年、3年ごとに半数改選ということのみが書かれている。衆参ダブル選挙が想定されていて、緊急事態が起きて選挙が実施できない場合、衆議院議員は不在、参議院議員は半数のみの124人ということになる可能性もある。

(画像:FNNプライムオンライン)

緊急事態という概念がない日本

新藤氏:問題は、日本には緊急事態という概念がないこと。有事に通常とは違う態勢を組める規定がないこと。93%の国の憲法が緊急事態を設定しているという。それ以外の国は不文の法理として国家緊急権というのを認めている。アメリカがそうだ。日本のように明示的に緊急事態という概念そのものを設定してない憲法はどこにもない。

ウクライナは緊急事態を宣言した。ロシア軍が侵攻する前日に非常事態、そして、侵攻した日に戒厳を布告して、それに基づいて国会や国が動いている。

(画像:FNNプライムオンライン)

小川淳也氏(立憲民主党政調会長):プーチン大統領が22年もの長期政権でなければ、こんなことにはたしてなっていたか。まともな野党がいれば、こうなっていたか。報道の自由があれば、こうなってたか。任期は民主制国家にあって、唯一権力者を絶対的に縛る極めて重要な概念だ。それを安易に権力者側の都合で伸び縮みさせるようなことにはきわめて慎重であるべきだ。アメリカにも議員任期を延ばす規定はない。日本は太平洋戦争が始まって1942年にも、終戦の1946年にも議会をやっているから、絶対にやれないことはない。なおかつ、参議院に緊急集会の定めがある。コロナが起きたらやれ憲法改正だ、緊急事態だ。ウクライナ情勢で、やれ憲法改正だ、緊急事態だ。便乗するのはいい加減にしてほしい。

新藤氏:アメリカに緊急事態条項がないのは、アメリカには国家緊急権があって、いざとなれば大統領令でやれるということ。参議院の緊急集会は、衆議院が解散中の想定だ。衆院解散で40日、選挙後の特別国会をやるのに30日で70日間に何か起きたときの規定だ。いつ終わるかわからない長期的な緊急事態には対応できない。そもそも国家の暴走をさせないためには議会の統制が必要だ。憲法には国の権力を抑制する側面がある。立法権がある国会議員が任期を失い、国会の権限がなくなると、意思決定する人間がいなくなってしまう。その穴を埋めるのが緊急事態条項で、憲法を改正し盛り込むべきだ。緊急事態は安易には布告できない。

信用できる判断をするには

橋下氏:場合によっては選挙が実施できないことがあると思う。デジタル投票制度などのインフラ整備も踏まえて考えなければいけないが、どうしても選挙ができない場合には議員任期延長はありうる。しかし、議員は自分の身分や金に関わる問題になるとゆるゆるの判断をする。任期も気づいたらズルズル延長してしまう恐れがある。本当に選挙ができないのかの事実認定はお手盛りにならないように憲法裁判所など第三者のチェックを必要とする仕組みを設ける議論をぜひやってもらいたい。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):憲法裁判所で判断すべきだということは、立憲民主党の奥野総一郎議員も衆院憲法審で同様の主張をしている。小川さんも同じ考えか。

小川氏:ありえることだ。日本では訴訟当事者資格はかなり限定されていて、裁判所は憲法判断を回避、回避、回避しようという傾向があるので、きちんと判断する機関を設け、議員の身分や特権に関して議論してもらうことは大いにありだと思う。

(画像:FNNプライムオンライン)

新藤氏:違憲性があるか否かの判断は、今でも最高裁がやっている。最高裁は信用できないが、憲法裁は信用できるというのは同じことになる。

橋下氏:いや、それは今の日本の司法の仕組みが付随的違憲審査制を前提としているからだ。政治家を信用して高度の政治判断は政治家の判断に任せるという統治行為論がある。だから、そうでない仕組みを考えたうえでの緊急事態条項などをめぐる議論にしてもらいたい。

 

 

 

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