心のふるさと「伊勢の神宮」と神道のあれこれ@れーじん

日本人の心のふるさとといわれる伊勢の神宮。
伊勢国のれーじんが伊勢の神宮や神道、それに関連することをお伝えします。

神社参拝時の作法③ ~お辞儀の種類~

2015-01-21 09:00:00 | 神道の作法

神社の参拝やご祈祷、祭典(祭祀<さいし>)参列などでは、お辞儀をする機会が多くあります。
神道儀礼において、お辞儀は様々な種類があり、その時々によって使い分けます。
お辞儀は、大きく分けて3つです。
 1 拝<はい>
 2 平伏<へいふく>、磐折<けいせつ>
   平伏は座礼(正座をしている時のお辞儀)
   磐折は立礼<りゅうれい>(立っている時のお辞儀)
 3 揖<ゆう>

そして、平伏・磐折と揖には、上体を前に倒す角度の深浅があり、それぞれ
 2-1 深い平伏(深い磐折)
 2-2 浅い平伏(浅い磐折)
 3-1 深揖<しんゆう>
 3-2 小揖<しょうゆう>
とよばれます。
合計6種類のお辞儀があるということです。

それぞれのお辞儀の、上体を前に倒す角度、お辞儀に要する時間、どのような時に行うかは、次のとおりです。

名 称 角 度 時 間 適 用
拝<はい> 90度 およそ一呼吸

祭典前後一拝

拝礼

玉串拝礼

深い平伏<へいふく>

深い磐折<けいせつ>

60度 一定しない

祝詞<のりと>奏上の間

祓詞<はらえことば>奏上の間

開閉扉の間

昇降神の間

浅い平伏

浅い磐折

45度 一定しない

祓<はらい>(大麻<おおぬさ>、塩湯<えんとう>)を受ける間

深揖<しんゆう> 45度 およそ半呼吸 拝礼の直前直後
小揖<しょうゆう> 15度  

動作の直前直後

玉串、盃を受け取る時

一般的なお詣りの時に用いるのは、「拝」です。
少し丁寧にお詣りをしたい場合は「小揖」も用います。
そのため、まずは「拝」「揖」の2つを覚えれば大丈夫です。
正式参拝や昇殿参拝、ご祈祷、お神楽の奉納、祭典に参列するときには、「平伏・磐折」も覚えましょう。
そして、神道儀礼をより丁寧に行いたい場合には、深揖を用いることになりますが、私個人は深揖を行うのは神職さんだけで、最近は一般の人は行わないのではないかと思っています。
なぜなら、最近の一般的な出版物に「深揖」について詳しく書かれたものを、私は見たことがないからです。
(そのようなものがあったら、私の勉強不足です。ごめんなさい。)

どのような事柄にもいえますが、何かを知りたくて勉強を始めると、奥が深く知らないことがどんどん出てきます。
そして、一般教養としてどこまで身につけたらいいのか、わからなくなってしまうことがあります。
でも、神社参拝において重要なことは、神様や神様をお祀りする神社をうやまい、大切にすることだと思います。
他の参拝者に迷惑をかけたり、周りの方々を不快な気持ちにさせないように心がけ、自分なりに礼を尽くしてお詣りをすればいいと思います。

次回以降、具体的なお辞儀の仕方を記事にします。


神社参拝時の作法② ~手水舎<てみずしゃ>~

2015-01-11 22:00:00 | 神道の作法
神社の入口にある鳥居をくぐり、参道を少し進むと、手水舎<てみずしゃ>が見えてきます。
柱と屋根だけの建物の中に、清水のたたえられた鉢があります。


この場所で、参拝前のお清めとして手と口をすすぎます。
これは、川や海の清らかな水に身体をひたして心身の穢れ<けがれ>を祓う<はらう>、「禊<みそぎ>」を簡略化したものです。
お詣りの前に、ここで心身を清らかにします。
手水舎の清水で心身を清めることを「手水を取る(使う)」といいます。

では、具体的な手水の取り方です。

1 手拭きの用意
まず、ハンカチなど手をふくものの端を、取り出しやすいようにポケットやカバンから出しておきましょう。
ぬれた手でカバンや服を触っておろおろするのは、あまり恰好のよいものではありません。

2 清水をくむ

右手で柄杓<ひしゃく>を持ち、清水をくみます。
左利きの方も、右手で持って清水をくんでくださいね。
この柄杓1杯の清水で、両手と口をすすぎます。(途中で清水をすくい足さない)
手洗い・うがいではないので、水量はこれで十分です。
そして、以下3~7については、鉢の手前、排水用の溝等の上で行います。

3 左手を清める

左手に清水をかけます。

4 右手を清める

柄杓を左手に持ちかえて、右手に清水をかけます。

5 口をすすぎ清める
注:柄杓に直接口をつけてはいけません。

再び柄杓を右手に持ち、左の手のひらに清水を受けて溜め、その水を口にして、口をすすぎます。
この行為は「お清め」であり、「うがい」ではないため、口にする水は少量でかまいません。
口から水を吐き出すとき、口元を左手で覆って隠すと、見た目に美しいでしょう。

6 もう一度左手を清める

口をすすぐ際に、清める前の口を左手につけたので、もう一度左手を清めます。

7 柄杓の柄を清める

柄杓を手前にむけて立て、清水を柄杓を柄につたわせて流し、清めます。
この時、左手を添えて柄杓を立てると美しく見えます。

8 柄杓を元の位置に伏せて戻す

3から6については、あまり高い位置で行うと、周りに水が飛び散ってしまいます。
自分の穢れ<けがれ>をすすいだ水をまき散らして、周囲の方々を不快な気分にさせないよう、少し低い位置で行うとよいでしょう。

なお、お詣りする神社の規模によっては、手水舎がないところや、手水舎の水質がビミョーなところなど、手水が取れない場合もあります。
(摂社・末社などは神職さんが常駐されておらず、四六時中管理ができない)
そのようなときは、自分なりに礼を尽くしてお詣りをすればいいと思います。

余談ですが・・・・・・
先日、皇大神宮(内宮)で、清水たたえられた鉢の真上で両手を清めている参拝者を見かけました。
(口はすすいでいませんでしたが・・・)
「えっ?!それって、アンタはいいかもしれないけど、アンタの後に続く大勢の参拝者は、アンタの穢れの混じった水で手水を取るんか?!」
と、非常に嫌な気持ちになりました。
神社は古来より人々が真摯に祈りを捧げてきた、非常に神聖な場所です。
様々な人が様々な思いを胸に参拝します。
周囲の方々が不快にならないよう、気をつけたいものです。

※作法については、神社本庁が発行・監修を行っている書籍等に基づいています。

神社参拝時の作法① ~鳥居(神社入り口)をくぐる~

2015-01-11 22:00:00 | 神道の作法
世の中には、様々なルール・作法がありますね。
それらは、周囲の方々に敬意をはらったり、お互いに気持ちよく過ごすためのものだと思います。
もちろん、神道にも様々な作法があります。
これから数回にわたり、神社参拝において最低限知っておきたい作法を記事にします。
今回は、神社の入口にある鳥居をくぐり、神聖な敷地である境内<けいだい>に入るところを記します。

1 参拝前にお手洗いをすませる
小学1年生のようで申し訳ないのですが、これって結構大切なことだと思っています。
なぜなら、たいていの神社は、お手洗いが境内の外、もしくは手水舎<てみずしゃ>(手と口を清めるところ)の手前にしかないのです。
参道の途中でもよおしてしまったら、我慢して参拝を続けるか、一旦境内の外に出てお手洗いを済ませるかどちらかです。
もちろん我慢していたら、しっかりお詣りなんてできません。
お手洗いに行くとなれば、歩いてきた参道を戻り、お詣りを仕切りなおすことになります。
寒い日に大きな神社の参道を延々と歩いている最中、そんな事態におちいってしまったら、先にも行けず後にも引けずで最悪です。
折角のお参りが残念なことにならないよう、お手洗いに行っておきましょう。

2 ペットは外でお留守番
ペットは神社に入れません。
(特別にペットのご祈祷が可能な神社があるようです。その場合は神職さんの指示に従ってください。)
キャリーに入れてワンちゃんやネコちゃんの顔が見えなくても、もちろん神様はお見通しです。
どうしてもペットを同伴しなければならない場合は、境内の外で預かっていただける場所を確保する必要があります。
ちなみに、神社によっては境内に馬や鹿、鶏がいる場合があります。
これらの動物は神様のお使い(=神使<しんし>であり、私たち人間よりも神様のおそばにいる存在です。
そういうわけで、普通の動物とは異なるのです。

3 携帯電話は電源を切る、またはマナーモードにする
自分が神前で手をあわせている時に、派手で耳障りな電話の着信音が聞こえてきたら、げんなりしませんか?
神聖な境内で大きな声や大きな音を出すのはやめましょう。

4 鳥居の手前で衣服を整える
神社の境内入り口に鳥居があります。
鳥居の手前で、衣服を整えます。
ジャケットなどの上着のボタンをとめ、帽子や手袋を脱いでください。
日傘もここでたたんだ方がいいでしょう。

5 境内に入る前にごあいさつ
衣服を整えたら、上半身を15度ほど前にたおすお辞儀(会釈)を1回して(一揖<いちゆう>)、境内に入ります。
よそ様のお家へ入るときに、「ごめんください」「お邪魔します」と挨拶するのと同じ要領ですね。
お辞儀は、かいつまんで説明すると、次のように行います。
 ①鳥居の手前で、足をそろえて肩をおとし、腕・手は力を抜いて自然におろして身体の横に付け、姿勢を正して立ちます。
 ②その状態で、背を丸めずに上半身を前に倒すと、腕は自然と前に出てきます。
 ③そのまま腕をブラブラさせるわけにはいかないので、手のひらを太ももに沿わせます。
  立っている時に身体の横にあった手は、お辞儀が深くなるにつれて、太ももの外側から膝に向かってななめにスライドさせていきます。
 (もっとも深い90度のお辞儀(拝<はい>)の際には、手が膝のお皿の骨を覆うようになります。)
昨今、女性が立っている時やお辞儀をする際、手を身体の前(お腹や股のあたり)で重ねていますが、これは神道の作法および日本古来の礼儀作法ではありません。
お辞儀については、後日くわしく記事にする予定です。

6 参道は真ん中を歩かない
参道を歩く際、よほど混雑していない限り、真ん中を通るのは避けましょう。
参道や拝殿・本殿の中央は「正中<せいちゅう>」とよばれる、神様の通り道だからです。
神社の参道のほとんどは、中央が少し高く、端は少し低くなっています。

こちらは皇大神宮(内宮)の参道です。
このように参道がゆるやかなかまぼこ状になっていると、雨が降っても水が脇にはけていきますから、合理的でもあります。

参道を少し進むと、参道脇に手水舎が見えてきます。
次は、参拝前のお清めです。

※作法については、神社本庁が発行・監修を行っている書籍等に基づいています。

初詣 ~氏神さまにお参りして伊勢の神宮のお神札<おふだ>をお受けしよう~

2015-01-01 09:00:00 | 神道
あけましておめでとうございます。
お正月といえば初詣です。
みなさんはどこの神社を参拝しますか?
有名な神社ですか?
それとも、昨今パワースポットと噂されているところですか?
まとまった休暇が取れるお正月ですから、遠出するにはもってこいです。
でも、遠くの有名神社を参拝する前に、お住まいの地域の神社=氏神<うじがみ>さまをお参りしてみませんか?
これなら、貴重な休日に遠出したり、人込みでもみくちゃになるのは疲れるから嫌だと思う方でも、気軽にお参りできますよね。
氏神さまとは、地域の家々や人々を守る神様です。
お住まいの地域の氏神さまがどこの神社かわからない場合、各都道府県の神社庁に問い合わせると教えてもらえます。
そして、氏神さまでは、遠く伊勢に足を運ばなくても、伊勢の神宮のお神札<おふだ>をお受けすることができるのです。
(お神札やお守りは、「買う」ではなく「お受けする」といいます。)

伊勢の神宮では、お神札のことを、正式には「大麻<たいま>」といいます。
薬物と勘違いしそうです(苦笑)。
本来は「おおぬさ」と読みます。
大麻<おおぬさ>は、神職さんがお祓いをするときに用いる、榊の枝に紙垂<しで>(白くて細長い紙)などをつけたものや、棒に紙垂をたくさんつけたもの(祓い串)のことです。
もともと伊勢の神宮のお神札は、神宮の神職である御師<おんし>が、その大麻を箱に納めて配ったものでした。
御師は全国各地に出向き、各地域の住民と伊勢の神宮をつなぐ役割を担っていましたが、明治時代に御師制度が廃止され、それ以降、伊勢の神宮のお神札は、全国各地の神社を通じて広く頒布されるようになったのです。
全国に頒布される神宮大麻(伊勢の神宮のお神札)を「頒布大麻<はんぷたいま>」といいます。
ちなみに、伊勢の神宮のお神札授与所にある大麻は「授与大麻」と呼んできます。

こちらが全国の神社でお受けできる神宮の頒布大麻。
各神社では「神宮大麻」と称して授与所に用意されています。

私、れーじんが近所の氏神さまで確認した平成26年12月現在、初穂料<はつほりょう>は800円でした。
(神社に納めるお金は、代金とか料金ではなく「初穂料」「御玉串料<おたまぐしりょう>」といいます。)

「うちには神棚がないから、お神札をお受けしても・・・」「私は一人暮らしで部屋もせまいから神棚なんて・・・」と思う方もいらっしゃるでしょう。
でも、神棚ってそんなに大げさに考えなくてもいいのです。
本棚などの棚の上に白い布を敷いて、その上にお神札を立て掛ければ、それが神棚です。
このようなお神札立てが用意されている神社もあります。

これは某神社で500円でした。
(平成27年初詣時に確認したら、800円に値上がりしていました・・・)
こんなふうに使います。

このようなものを用意しなくても、壁に立てかけてもいいし、100円ショップの絵皿立てやイーゼルでもいいのです。
お神札をお祀りする、その気持ちが大切なのです。

お近くの神社から、遠く離れた伊勢の神宮とつながることができます。
初詣は氏神さまにお参りして、神宮大麻をお受けしてみてはいかがでしょうか。