心のふるさと「伊勢の神宮」と神道のあれこれ@れーじん

日本人の心のふるさとといわれる伊勢の神宮。
伊勢国のれーじんが伊勢の神宮や神道、それに関連することをお伝えします。

豊受大神宮(外宮)25 ~多賀宮遙拝所<たかのみやようはいしょ>~

2016-01-21 22:00:00 | 神宮
古殿地の前、別宮<べつぐう>につづく参道の手前に、注連縄を張った小石敷きの一画があります。


多賀宮遙拝所<たかのみやようはいしょ>です。
多賀宮は、豊受大神宮の第一別宮で、豊受大御神の荒御魂<あらみたま>をお祀りしています。
多賀宮や荒御魂については後日記事にします。

多賀宮に行くには98段の階段を登らなければなりません。
足腰の弱い方や時間に限りのある方は、ここで遙拝<ようはい>します。
「遙拝」とは、遠くにお祀りする神社や、遠方で行われる祭祀に対して拝礼することです。
ここでの拝礼は、もちろん「二拝二拍手一拝」です。

豊受大神宮(外宮)24 ~三ツ石<みついし>~

2016-01-11 23:50:00 | 神宮
古殿地の向かいに縄で囲われた石があります。


これは三ツ石<みついし>と呼ばれています。
三ツ石は、川原祓所<かわらのはらえしょ>の場所を示す目印です。

伊勢の神宮では、20年に一度社殿を建て替える式年遷宮が行われます。
式年遷宮は、その過程において幾度となく祭祀を行い、それを遷宮諸祭<せんぐうしょさい>といいます。
遷宮諸祭を行う際には、神様にお供えする御装束神宝<おんしょうぞくしんぽう>や奉仕員を清め祓います(=修祓)。
遷宮諸祭における修祓を行う場所を「川原祓所<かわらのはらえしょ>」といいます。
この三ツ石の前に五色の幣串<ごしきのへいぐし>という特別な御幣<ごへい>を立てて修祓が行われます。

昨今、いわゆるスピ系の人たちが三ツ石がパワーストーンと言ったことから、随分ともてはやされています。
この石に手をかざしたり、石の周りの空気をすくって頭や身体に擦り付けたり……
みなさん思い思いの動作を行っています。
最近、その行動が行き過ぎて、縄をくぐって三ツ石に触れようとしたり、お賽銭とおぼしき小銭を投げ入れたりする人がたくさんいます。


参拝者のそのような行動に、神宮の神職さん、衛士さんをはじめとする職員のみなさまは非常に困惑していらっしゃるそうです。
それはそうでしょう。
三ツ石は、20年に一度の行事を行うための目印であって、何かをお祀りしている訳ではないのですから。
実は、以前はこの三ツ石の周りを囲う縄の範囲は、もっと狭いものでした。
参拝者の皆さんの行き過ぎた行動が、囲う範囲を広げるという結果になったのでしょう。

三ツ石がパワーストーンというのは、いわゆる都市伝説でしょう。
何にパワーを感じ、何を大事にするのか、それは人それぞれかもしれません。
しかし、神域内のものはみだりに触るものではありません。
『触るな』と禁止されているから触らない、というのは当たり前のこと。
『触ってもよい』と許可されているもの以外は触らないというのが、あるべき姿ではないでしょうか。
自分の家の物を、隣人や客人があなたの許可なく勝手にベタベタと触ったら、あなたはどう思いますか?
そして、触った拍子にそれが壊れてしまったら、あなたはどうしますか?

また、お賽銭は決められた場所(=賽銭箱)に入れるものです。
参拝者がそれぞれ思い思いの場所(「好き勝手な場所」ともいいます)に投げ入れたお賽銭は、誰がどうやって探して拾い集めるのですか?

なお、平成27年12月14日にリニューアルされた伊勢の神宮のホームページには、三ツ池について次のように記述があります。
近年、手をかざす方がいますが、祭典に用いる場所なのでご遠慮ください。


最後に、手をかざすのは非常に失礼な行為であることを申し添えておきます。

お箸について

2016-01-01 23:45:00 | その他
あけましておめでとうございます。
お正月にはお節料理をいただくのが日本の昔からの文化ですね。

お正月や結婚披露宴などのお祝いの席では、ご馳走をいただきます。
お祝いの席では祝箸という、普段使いとは異なるお箸を用います。



お箸は、神道儀礼において祭器とされています。
伊勢の神宮では、神様に御饌をたてまつる祭祀が数多く行われていますが、御饌は必ず御箸とともにお供えされます。
また、式年遷宮諸祭で行われる饗膳の儀などでは、神職が神様と共に食事をいただくという儀式が行われますが、その時も私たちが普段使う箸とは異なる、儀式用の御箸が使われます。

では、一般の私たちが使うお箸はどうでしょうか。
私たちもお箸を祭器として用いる機会があります。
それは直会<なおらい>の場です。

神道祭祀では、神前に御饌御酒<みけみき>(=食べ物やお酒)をお供えします。
そして、祭祀の後に神前にお供えした御饌御酒を、神職さんや祭祀の参列者でいただきます。
これを「直会<なおらい>」といいます。
神様と共に食事を頂くことにより神様と一体となること(=神人共食)が直会の意義です。
神様にお供えしたものを食べることにより、ご神威を身体の中に取り込み、頂戴することができると考えられているのです。
祭祀で神様に祈りを捧げ、その後に直会で神様のお力を自身に頂戴する、この2つは1セットです※。

直会の場でも祝箸が使われます。
祝箸は、長さが八寸(約24cm)で両細りの形状です。


長さが八寸なのは、「八」という漢字が末広がりでおめでたいと考えられているからです。
お箸の両端とも細くなっているのは、一方を神様が使い、もう一方を人が使うとされています。
一つのお箸を神様と人が一緒に使うことで、神人共食を形に表しているのでしょう。
このことから、逆さ箸(返し箸、裏箸ともいう)は嫌い箸というマナー違反になったと考えられます。
(もちろん、衛生面など他の理由もあると思いますが)

年の初めに、神聖な場でも用いられるお箸の使い方を考えてみてはいかがでしょうか。



※ご祈祷やお神楽をあげた後、直会の一般的な儀礼として、参列者にお酒がふるまわれます。
これは食事としての直会を簡略化したものです。