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鍵穴ラビュリントス

狭く深く(?)オタク
内容は日々の戯言
イギリス、日本、リヒテンシュタイン、大好きです
プラトニックlove好き

ケイトの8

2013-10-03 07:09:40 | オリジナル小説
 夕方、ケイトは、蟻んこの件を思い出しました。
(ローザの言っていたことだから、言わないと)
そう思って、
「おひい様……」
と口を開いたときです。一陣の風が、お姫様の柔らかな髪の毛をもてあそんでどこかに去っていきました。ふるふるとお姫様は髪の毛が邪魔そうに首をふりました。ジルがそして、それを直してあげました。
「明日は馬の練習がしたいの」
お姫様が言いました。
「そして、なに、ケイト」
「一階の……、い、いえ」
ケイトはなぜだか口をつむってしまいました。
 夜、ケイトはなかなか寝付けませんでした。
(どうしよう)
枕をかかえて寝返りを打ちます。
(明日は馬の乗り方の練習かあ)
楽しみなのに、不安になります。
「……ショーン」
呟いた声は夜の闇へと消えていきました。


 翌朝、屋敷の馬係があれこれ指示を出して、お姫様を馬に乗せます。
「きゃあ」
お姫様は興奮しているようです。ケイトはため息をつきました。だって、ローザのことも、自分だって馬に乗れることも、言えないのですもの。
 ケイトは名もない小さな花をみつけて、それをそっと手にとりました。土の感触がします。少しだけ、それはケイトに元気を与えてくれました。