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春風亭一之輔さんの「ろくろ首」(その参)

2014年07月11日 | 落語・民話

「ろくろ首(その参)」春風亭一之輔の場合

「灯(とも)し油に灯心(とうしん)でもって、火を点(つ)けて、

 回りを障子で囲った、ぼぉんやりした明かりだ。
 お嬢様の枕元、六枚折れの屏風が立て回してあって、
 その、向こう側に、行灯が置いてあるなぁ。
 草木も眠る、丑(うし)三つ時、家(や)の棟(むね)も三寸(さんずん)下がり、
 水の流れも止まるという、今の時間でいう、夜中の二時頃だよ。
 寝ているお嬢様の首がなぁ、音も無く、スゥーっと伸びて、六枚折れの屏風を、
 こぉ、逆さに越したかと思うと、鼻っつぁき(先)で、行灯の障子を
 ツゥーっと開けて、中の油を、... ペタペタッ、ペタペタッ、って、
 舐(な)めるんだ。」
「.....、個性的。」
「個性的過ぎるよ、それ。
 個性的過ぎるよ、そりゃぁ。
 この病気があるおかげで、もぉねぇ、婿が居つかねぇんだ。
 ピヤァーってんで、いなくなっちまう。
 そういうとこだけどな、どうだ、ほれ、行くか?」
「....、ちっと、待ってくれよぉ、それ、おいぃ。
 それは、あれでしょう?
 あの、世に言う、ろくどっ、ろくどっく、どくどっくどく、...。」
「ろくろ首。」
「そう、ろくろっ首ってなぁ、
 あたいは、そういうの、あんまり好かない性質(たち)なんですけども。」
「誰だって、好かないよ。
 寝ている、かみさんの首が伸びたらなぁ、どんな気丈な男だってねぇ、目を回すだろう。」
「そうだよね。
 寝ててさぁ、おかみさんを、ちょっと、いたずらしてやろうかなぁと思って、
 ほっぺたでも突(つつ)いてやろうかなと思っても、
 いちいち、首をたぐってから、突かなきゃいけない。」
「何の心配してんだ、お前は。」
「表、歩いてたって、そうだぜ。
 上野の広小路を、二人で、ランラ、ランラ、ラーンと歩いたと思ったら、
 かみさんの首だけ、鈴本の前とか。」
「そんな、伸びはしねぇんだ、おめぇ、どんだけ、伸びるよ。
 いや、大丈夫、大丈夫。
 こらぁなぁ、伸びるのは、昼間だけだ、えぇっ、夜中っ、昼間はなんともねぇんだよ。」
「何?」
「だから、夜中だけだ、伸びるのは。」
「えぇっ、夜中しか伸びないの?
 あっ、そうなの?
 あっ、それだったら、あたい、平気だよ、うん。
 だって、一回寝ちまったらね、地震があったって、火事があったって、雷が落っこったって、
 起きた試しねぇんだから。」
「あっ、そう。」
「うん、行く。
 行く、行く。」
「あっ、そうかぁ。」
「あはっ、はぁはっはぁ、...。
 ♪夜ぉ中ぁのうぅちにぃ、伸ぉびろや、伸ぉびろ。
 ♪てぇん(天)まぁで、伸ぉびろ。」
「歌ってるね、こいつは、おい。
 えぇ、暢気(のんき)な野郎だな。
 えぇ、うぅん、感じねぇからいいや、こいつぁなぁ。
 いやいや、形(なり)はいいからね、なかなか。
 あぁ、これから、連れてこうじゃねぇかな。
 あっ、そうだな。
 そういうことは、ちゃんとしとこう、うん。
 いいか、松公、いや、実はな、向こうへ行くってぇと、お嬢様は、口は利(き)かない。
 婆やさんが、代わりに口を利くんだがなぁ。
 この婆やさんが、そういうとこで奉公しているためになぁ、
 なかなか、こぉ、言葉遣いが丁寧なんだよ、うぅん。
 おめぇがなぁ、妙な口ぃ、利くってぇと、あぁ、しくじるといけねぇからな、
 ここで、まぁ、挨拶の稽古ぐらいはしといた方がいいかもしれねぇ。
 この、丁寧ってぇなぁな、
 『こんちは、結構なお天気様でございます。』
 お天気に、様ぁ付けるぐらいの人だからな。
 あぁ、いいか、
 『こんちは、結構なお天気様でございますねぇ。』
 こんなこと、言われたら、あぁ、まっ、
 『さよぉ、さよぉ。』
 となぁ、あっ、ちょいと、こぉ、反り身んなって、
 さよぉ、さよぉと、重ね言葉なんてこと言って、なかなか、鷹揚(おうよう)に聞こえるから。
 分かったか?」
「うん。
 さよぉ、さよぉ。」
「それでいいや、ねぇ。
 それから、まぁ、
 『このぉ話がまとまりますれば、お亡くなりになられた、ご両親様も、
  さぞかし、お喜びでございましょう。』
 こんなことを言ったら、
 『あ、ごもっとも次第でございますなぁ。』
 こういうことを、意味を含め、
 『ごもっとも、ごもっとも。』
 と、こう言いなさい。」
「ごもっとも、ごもっとも。」
「あぁ、そうだ。
 それから、まぁ、婆やさんも、如才ない人だからな、
 『あたくしも、年をとっておりまして、何のお役にも立ちませんがねぇ。』
 こんなことを言われたらな、
 『なかなか、どう致しまして。』
 という心持ちでもって、
 『なかなか。』
 と、こう言え。」
「なかなかぁ。
 それから?」
「それぐれぇで、いいやな。」
「あっ、そう。
 じゃ、向こう行って、婆やさんと話ぃして、婆やさんが、なんか、グニャグニャァ言ったら、
 『さよぉ、さよぉ、ごもっとも、ごもっとも、なかなか。』
 って言えば、向こうで、いいのを選(よ)りどるの?」
「選りどりゃしないよ。
 お前が、いいのを選ぶんだよ。
 しょうがねぇな、ぇええ、間抜けなことだねぇ。
 っとに、稽古したいけど、... うっ、そうだな。
 じゃぁ、おじさんが、婆やさんの役だな。
 お前、いいか、答えるんだぞ。
 んっ、いいか、婆やさんの役。
 婆やさんが、
 『あたくしも、年をとっておりまして、何のお役にも立ちませんが。』
 こう言われたら、お前は、何と言うんだ?」
「....、さよぉ、さよぉ。」
「なんだ、そらぁ。」
「ごもっとも。」
「なお、いけないよ、それじゃ。
 しょうがねぇな、ほんっとに、どうしたらいいかねぇ。
 何か合図をしなきゃいけねぇ。
 袖を引いたら、分かっちまうしな。
 ....、そうだっ、婆さん、さっきぃ、隣の娘が、あれだろう、
 なんか、毬(まり)ぃ持って来て遊んでて、忘れてったな、そこに転がってた、毬ぃ、うん。
 それに、麻紐(あさひも)かなんか、長めに付けて持って来な。
 あぁ、それでいいや、あっん。
 見ろ、松公。
 これね、毬に紐が付いてんだろう。
 この紐の先を、お前の褌に結(ゆ)わい付けて、袂(袂から)毬を出すんだ。
 で、おじさんが横に座ってて、この毬を、一つ引いたら、さよぉ、さよぉ。
 二つ引いたら、ごもっとも、ごもっとも。
 三つ引いたら、なかなか、っての、これ、分かるか?」
「うん、それなら分かる。」
「あっ、そうか。
 じゃ、これ、ちょうどいい、紐を結び付けな、うん。
 はだけてる。
 あのな、お前、どういう褌の締め方してんだよ、お前。
 えぇ、締め直せ、いっぺん解(ほど)いて。
 こっち見てやるんじゃぁないよ、お前。
 向こうを見てやれ、向こうを。
 付けたか?
 付けたら、こっち、こっち、こっち。
 付けたか?」
「やぁ、こっから、出たぁ。」
「これでいいや。
 これを、おじさんがなぁ、こうやって、持って。
 うん、お前、こうやっておきゃぁ、袂で見えねぇんだから。
 いいかぁ、いくぞ。
 『あたくしも、年をとっておりまして、なぁんのお役にも立ちませんが。』
 こら、三つだ。」
「....、へぇっ、へぇっ、へえっ。
 なかぁなか。」
「そうそうそう。
 『この話が、まとまりますれば、ご両親様も、さぞかし、お喜びのことでございましょう。』
 これは、二つだ。」
「.....、んふっ、ぐふふっ。
 ....、さよぉ、さよぉ。」
「そうそうそうそうそう。
 『こんちは、結構なお天気でございますなぁ。』
 これは、一ぉつだ。」
「....、ぅほっ、ひとっ...。
 一っつは、.... 残念でした、また、どうぞ。
 またの、ご参加を。」
「のど自慢、やってんじゃないよ、お前は。
 しょうがないね、こいつは、えぇえ。
 まぁ、いいや、なんとかいくだろう、これで。
 これで、うまくいきゃぁな、人間の廃物利用だ。」
廃物利用、ひどいやつがあったもんで、...。

 

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