
甘酸っぱい、腐ったような匂いをした男が地下鉄のシートにどすんと座る。
その隣には司祭が座っている。
男のネクタイは汚れ、顔は口紅で赤く、破れたコートのポケットからは半分ほど
入ったジンのボトルがのぞいている。男は新聞を広げて読み始める。
いばらくすると、このだらしない男は司祭の方に向いて言う、「なあ、神父さん。
関節炎っちゅうのは、どうすりゃぁなおるんだね?」
「あなた関節炎はね、だらしない生活をして、安いひどい女とつき合って、
アルコールを飲み過ぎて、隣人をまったく無視していると、そうなるんですよ」
「へえ、そりゃ驚いた」、酔っぱらいはつぶやき、また新聞を読み始める。
言い過ぎてしまったと考えた司祭が肘で男をつついて言う。
「すまなかったね。そんなきつい言い方をするつもりじゃなかったんだが・・。
で、いつから関節炎を患っているのかね?」
「いや、俺じゃないんだ、神父さん。この新聞に、ローマ法王が関節炎だって出てたんでね」
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