かみいた落語塾

噺家さんの指導のもと、小咄から古典落語までしっかり学べる、老若男女うぇるかむの落語団体、上板橋落語塾のかわら版!!

小咄ノート10 「縁日」

2005年09月02日 | 参考書
とある商家の店先、小僧の定吉さんがいつものように店番をしておりました。
そこにあらわれたのは、一人のお武家さま。

「ごめん」
「あ、いらっしゃいませ」
「うむ。ちとものを尋ねるが、金毘羅様のお祭りは幾日であったかな」
「えーっと、五日(いつか)六日(むいか)と心得ております」
「さようか。じゃまをしたな」

そう言い残して、出て行ってしまうお武家さま。
そのやり取りを聞きとがめたのは、奥にいた店の主でした。

「これ、定吉や。いま、お武家様がいらしていたようだったが、どのようなご用件だったんだい?」
「あ、旦那さま。金毘羅さまのお祭りがいつか、と聞かれましたので、五日六日ですと答えておきました」
「え、何を言ってるんだい。金毘羅様のお祭りは、九日(ここのか)十日(とおか)じゃないか」
「・・・あぁ! そうでしたねえ」
「そうでしたじゃない。すぐに追いかけて、教えてさしあげなさい」
「え!? で、でもぉ・・・」
「なんだい」
「もう多分二度とこないやつですよ? 聞くだけ聞いて、何も買わずに行っちゃたんですから」
「これ。お武家様にむかって、その言い方があるか。それにな、お客様だから親切にする、お客様でないから親切にしない、そんな了見では、いいあきんどになれませんよ。いいから早くいってらっしゃい!」
「いってまいります」

旦那にしかられ、しぶしぶ出かける定吉さん。自然と愚痴が出ます。

「ちぇっ。うちの旦那もいい人なんだけどなあ。いちいち細かいんだよな、言うことが。ほんとうに・・・。どこまで行っちゃったのかなあ、あの人。あ、あれかな? おーい、そこの人!!
・・・って、いけね、みんなこっち向いちゃったよ。そうか、みんなそこの人だもんな。
じゃあ、そこのお侍!!
・・・って、お侍みんなこっち向いちゃったよ。あぶねあぶね。えーっと、名前も知らないんだからなあ、うーんとんーっと。
ええもう、五日六日の旦那! いつかむいか!!」
「おお、なのかようか(七日八日)」
「ここのかとおか!(九日十日)」

かき麿

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2 コメント

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Unknown (安呑)
2005-09-03 00:32:10
お祭りの日を間違えちゃァいけません。

あとのまつりです。

でも大丈夫。このお侍は以後このお店の常客となり、上客と祭り上げられます。
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上客かなあ(笑) (かき麿)
2005-09-04 11:11:23
そんないいお客になってくれるでしょうか(笑)

それにしても、語呂で笑わせる噺は、文章で表現しようとすると難しいですね。
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