「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

一般財団法人「大隅基礎科学創成財団」

2017-09-13 | 2017年イベント
2016年ノーベル生理学・医学賞受賞者の大隅良典東工大栄誉教授が基礎科学を支援するため「大隅基礎科学創成財団」を創設したと伺いました。研究助成などを行って頂けるのであれば、若い研究者たちにとって研究助成申請の選択肢が増えるという意味で、とてもありがたいと感じます。大隅先生のように研究支援を目的とした財団や基金を立ち上げる研究者はまだ珍しく、私も他に幾つかの例をわずかに知っているだけですので、あまり一般的ではないといえるのかもしれません。とくに大隅先生が常に仰っているように、「一見して社会にどのように役に立つのか判らない」ような純粋自然科学を支援していく財団ということになると、それはもう稀有というべきでしょう。

「科学(研究)の発達 → 技術の応用 → 産業の展開」という大まかな流れがありますが、研究者の端くれとして言わせて頂くと、やはり0(無)から1(有)を生み出すという役割を担う科学が一番難しいと思います。しかし、源流である科学の面でいったん優位性を確保できれば、その後の技術応用、産業展開も主導権を握りやすいのは間違いありません。日本人はどちらかというと技術応用が好きで、独創性を要する科学推進は苦手なのかもしれませんが、いつまで経っても科学面で欧米を追いかける(坂の上の雲を目指して歩く)のではなく、これからの日本は逆に自らリードしていくつもりでやらないといけないと私は思います。つまり、科学は2番では駄目なのですね。
研究で1番になるためには「トライ&エラー」の過程がどうしても必要ですが、目先の応用や効率性ばかりにかまけているとどうしても歩留まりが多い「トライ&エラー」は敬遠気味になり、むしろ大胆なトライこそが大発見につながるにもかかわらず忌避され、結果として科学全体の営みは委縮してしまいます。今の日本が陥りつつあるのではないかと、大隅先生はじめ研究者の一部が危惧しているのがこの状況です。

向こう見ずな若者が大胆に挑戦しようとするのを温かく見守ってくれるような財団ができればいいですね。