「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

2016年のおわりに

2016-12-30 | 2016年イベント
2016年の年の瀬になって振り返ると、Brexit(英国EU離脱)やUSA大統領選挙(トランブ新大統領誕生)などがやはり印象深く、日本を取り巻く話題としては熊本地震、オバマ大統領の広島訪問、安倍首相の真珠湾訪問などが脳裏を過ります。知人の中には、結婚、転居、転職など人生の変化を迎えた方々が少なくありませんでした。
個人的にも、何もかもが変わり続けた1年となってしまいました。
親しくさせて頂いている方々からは「ずっと走り続けている」「生き急いでいる」と言われたこともありました。とりわけ留学の強行は、私にとっては予定事項だったとはいえ、多くの知人らに衝撃を与えたようでした。普通の医師のキャリアパスからついに決定的に外れたことになりますから。たしかに異常と言えるのかもしれません。
しかし、私の覚悟はもう出来ているのです。
たとえ映画みたいなハッピーエンドが、自分の未来になかったとしても。

スター・ウォーズ・ストーリーの最新作『ローグ・ワン(Rogue One: A Star Wars Story)』を劇場で観ました。
一連のストーリー群の時間軸上では、エピソード4の直前にあたります。実写版としては、初めての外伝作です。私はエピソード1、2、3、7は映画館で観ていますし、旧三部作の4、5、6についてもビデオや小説でフォローしていました。熱烈なファンではありませんが、一応、あらすじと設定は知っていますし、フォースという名のご都合主義にはすこし食傷気味とはいえ、映像美、アクションシーンなどに魅せられてきました。
はっきり言って、私としては今作はストーリー群の中で「一番の出来」と感じました。

もちろん、ベイダー卿(アナキン・スカイウォーカー)、C-3PO、R2-D2などのお馴染みのキャラクターや、若き日のレイア姫などの登場シーンも興味深かったですが、私個人としてはなによりも今回の主人公である反乱軍兵士たちの奮闘を描いた様が良かったように思われました。
よく知られている通り、スター・ウォーズは、「フォース(the Force)」という運命の力を操るジェダイ騎士やシスの暗黒卿の超人的な活躍を主軸に、ハン・ソロやR2-D2などの脇役が果たす仕事によって、遠い昔遥か彼方の銀河系の命運が揺れ動く様を描いたスペース・オペラです。しかし、「May the Force be with you(フォースと共にあらんことを)」でお馴染みの「フォース」は、良くも悪くもご都合主義かつ強引にストーリーを導いてしまうために、私のような凡人にはあまり面白くないことに「結局のところ、超人的な英雄たちによって世界は動かされ、凡人たちは翻弄され蹂躙されるだけ」という印象を与えられることもありました。今回の『ローグ・ワン』では、もちろんベイダー卿による無双シーンもありましたが、なによりも名もなき凡人(あるいは凡機械)たちのまさに命を賭した戦いに魅せられたのでした。そこには、これまでのスター・ウォーズの物語とは異なる輝きがありました。
超人的な英雄とは異なり、凡人たちは実にあっけなく次々と死んでいきます。それでも大義のために、命を賭して、為すべきことを果たします。弱者であったとしても、希望を未来に託すために、果敢に強者に挑んでいくのです。
ハッピーエンドとは言い難い結末ですが、しかし、主人公たち「ローグ・ワン」の戦いが決して無駄ではなかったことを観客(エピソード4、5、6を知る人たち)だけは知っています。私も、思わず、映画館で泣きそうになりました。

為すべきことが見えにくい世の中です。
映画やアニメのように絶対に倒すべき悪役も見つかりませんし、命を賭すべき戦いも身近ではありません。ならば、浅学非才の身の上で、凡人でしかない自分は、何の為に生きるべきか。誰が為に生きるべきか。
大義だなんて格好良すぎる言葉ではないとしても、せめて生きる意味を見出せたならばいいなと。私は、いつも頭のどこかでそれを考えながら、これまで生きてきたように思います。
ただ、為すべきことを為そうと。
そう思って、そう信じて、2016年を生きてきたのでした。まあ、細工は流々仕上げを御覧じろといったところでしょうか。きっと来年も、私はまた、そういう生き方しか選べないでしょう。でも、それでもいいと思っています。それが私なりの覚悟ってやつです。

冬至とクリスマス休暇

2016-12-21 | 2016年イベント
本日は冬至Winter solsticeでした。緯度の関係でしょうか、もともと日照時間はとても短いのですが、今日はとりわけ短かったように思いました。ただ、昼には明るい陽射しも見えて、すこしホッとする日になりました。

本学の公式なクリスマス休暇は23日からなのですが、今週からクリスマス休暇をとる人たちが多く、今日は研究センター内にも人があまりいませんでした。クリスマス前後は長期休暇をエンジョイする方々ばかりです。実験室はいつも混んでいるので、空いているのは快適ではありますが、やはり寂しい感じもしましたね。
私のような研究バカとしては「それでは世界に勝てません」「努力は無限大です」と叫びたいところですが、他人様のやり方に意見するのはとっくの昔に諦めており(その代わりに自分のやり方にも口を出させませんが)、ましてや異国の地では「郷に入っては郷に従え」と思っています。EU諸国の方々が夏のバカンス、冬のクリスマスを全力で楽しむ文化なのは知ってはいますので、まあ仕方がないとは感じているのです。それが世界のスタンダードなのだろうと。

しかしながら、英国の多くの研究者がこんな呑気な感じなのに、それでも勝てない日本は、ホント、どういうことなのか?

いや、量では英国には勝っているかもしれませんが(人口比を考えれば当たり前ですが)、質ではまだかなりの差を感じます。実際、研究論文の平均引用数など様々な指標で、日本の研究水準と影響力は、物理、化学はともかく、生命科学、医学では明らかに後塵を拝しています。近年になって、ノーベル賞など国際賞を受賞する日本人は増えてはいますが、それでも全体的な質としては劣るのです。むしろ途上国の追い上げもあって、近年、相対的には世界における日本の影響力はどんどん低下しています。
「日本は負けつつある」という危機感を抱くべきでしょう。

ここの研究センターの人たちを見ていると、9時5時でゆっくりしているように見えて、その実「帳尻合わせ」はとても巧みです。合理的と言うべきなのか、正直、いつの間にか論文発表するデータを上手く積み上げているような印象です。
要領が良いということなのか……
私もその点はよく見倣いたいと思っています。ダラダラやればいいというものではありませんから。研究の質も量も共に高水準であることが望ましいですが、自分の力量を鑑みて、せめて質だけは高くしていきたいものです。
なるほど、休むべきは休まんといかん。
ということで、私もしばらくクリスマス休暇を頂戴することにしました

クリスマスマーケット2016

2016-11-25 | 2016年イベント
Belfastのシティーホール(City Hall)では12月22日までクリスマスマーケット開催中です。
世界各地の様々な食べ物やお菓子に関する屋台がシティーホールの敷地内に出現して、夜は綺麗なライトアップも楽しむことが出来ます。お祭りの賑やかな雰囲気に誘われて、沢山の人たちが訪れるそうです。

私も大学院の仲間たちと一緒に観に行ってみました。
警察の方々も要所要所に居ますし、治安等は問題ないと思われました。小さなお子さんも沢山いて、寒ささえ我慢出来るなら、とても楽しい空間でした。友人に勧められるままにマーケットで売られているカンガルー肉のハンバーガーを食べて、シティーホール近くのパブに寄って皆でギネスのビールを飲んで、宿舎に帰りました。パブの中には明るいクリスマスツリーが飾られていました。

 


もう、クリスマスなのですね。いつもながら、月日が経つのを早く感じます。平成28年も終わりが見えてきました。色々ありましたが、今は、かつて願った通りに英国へ来て学ぶことが出来る幸運を感じています。

誰かの為に生きたいと願いながら。
ずいぶん遠いところまで来てしまいました。
まさか、本当に、ここまで来るとは……、我ながらびっくりぽんです。

2011年の震災を体験して、事故や病気で若くして亡くなられる患者さんたちを診て、(私もいつ死ぬか判らない)と考えるようになりました。幸か不幸か、私にはパートナーも子供もいませんので、(どうしても死ぬわけにはいかない)とまでは思わず、その時がいつ来たとしても大丈夫という覚悟だけはしています。
いつも一寸先は闇であり、答えはいつだって不意に突きつけられるものです。描いた夢を自分の手で形に出来るかどうかなんて判りません。何も果たせず、何も残せずに終わるかもしれませんが、それはそれで是非もなし。

今はただ、この二度とはない瞬間を自分なりに楽しみながら、生きていこうと思います。

福島で地震と津波!? 2

2016-11-22 | 2016年イベント
福島沖の地震と津波に関して、とりあえず無事とのご連絡を東北の知り合いの方々から伺って、ほっとしました。私にとって大切な人たちが大丈夫そうで、すこし安堵しました。

しかし、3.11の例もあります。あの時は2日前の3月9日に大きな前震があったのでした。今回の地震が5年前の震災の余震なのか、全く関係ないのか、それとも何らかの前兆なのか。しばらくは注意深く推移を見守りたいと思います。

福島で地震と津波!?

2016-11-21 | 2016年イベント
福島でかなり大きな地震があり、津波警報が発令されたと、英国の私のもとにまで速報が入りました。

浜通りは、相馬は、原発は大丈夫なのか……。

慌ててネットでニュースを確認すると、まさに原発沖が震源地!?

不幸中の幸いか、予想される津波の高さは3m級。3.11に比べればマシとはいえ……。

どうか、みんな、無事でありますように。

2016年アメリカ合衆国大統領選挙と円高の行方

2016-11-09 | 2016年イベント
Trump won.
(トランプが勝った)

この言葉を今日幾度聞いたことでしょうか。
ここ英国でも、ある種の驚きと納得を以て、人々は米国大統領選挙の結果を語っています。

アメリカ合衆国第45代大統領にドナルド・トランプ氏が当選しました。世界をリードする超大国の一つ米国のトップに政治経験のない「じいさん」が就任するというのは、個人的には、英国EU離脱(Brexit)並みの衝撃を受けました。しかしながら、これが良くも悪くも民主主義というものなのでしょう。賢人政治、衆愚政治など、政治の在り方については色々と思うところはありますが、ここでは私見を述べません。

留学中の身としては、やはり気になるのが、「円高か円安か」という経済問題です。
Brexitによって円高ポンド安の流れが起こりましたが、ここで更にドル安に動くと、ますます円の相対的価値が高まることが予想されます。私は現在は円ベースで自己資産を考えているのですが、今後しばらくは留学費用による資産の目減りを抑えることが出来るかもしれないと期待はしています。しかし、良くも悪くも、世界経済は不確実性をより一層増してしまいました。まさに一寸先は闇であり、明日何が起こるのかさえも判りません。

すこし不謹慎な言い方を敢えてするならば、面白い時代になってきた気がします。
歴史好きの私ですが、実は、乱世を好む質です。もちろん、傍観者になれるならば、ですがね。
言わずもがな、参加者としては、たまったもんじゃありません。

アルスター博物館へ行ってみた

2016-11-05 | 2016年イベント
クイーンズ大学メインビルディング南に広がる市営植物園(Botanic Garden)の一角に壮麗な博物館があります。アルスター博物館(Ulster Museum)です。
1821年設立以来の歴史を有する公立総合博物館であり、1929年に現在の場所に移っています。当然、無料で見学可能です。美術部門、自然科学部門、歴史部門に大きく分かれており、内部はかなり広く、まともに見学すると1日丸々かかります。大英博物館などには流石に規模が劣りますが、アイリッシュ系に関する歴史展示物はやはり充実しており、全英屈指の博物館として知られています。



母校からお世話になっている先生がいらっしゃった際にぜひお連れしようと思ったのですが、毎週月曜日は閉館日であり、その節はとても残念でした。私は土日などの暇がある時に、この博物館を時折訪れて英気を養うことにしています。植物園と併せて、いいお散歩コースになっています♪

 


スペイン・アルマダ艦隊の財宝はやはり人気で、実際、黄金のサラマンダーは見学者も多いですね。その他の民俗文化財も興味深いです。
感心するのは、家族連れで見学している方々が多いことです。小さな子どもたちも、目をキラキラさせながら、展示物を観ています。このような知的営みに子どもの頃から触れることが出来るのは羨ましいことです。幸運なことだと感じます。

私の子どもの頃を振り返ると、ここまで立派な博物館にはなかなか簡単にアクセスが出来ませんでした。私には子どもはいませんが、もしもいたら自然豊かな環境で育ってほしい、そして、たまに博物館などに一緒に行きたかったなと思うことがあります――それは、どうやら、叶いそうにはありませんが。



自然科学部門には、全元素の説明コーナーがあります。
残念ながら、113番目の元素ニホニウムはまだ加えられておりません。そして、東北大学の小川正孝(東北帝国大学第4代総長)が発表した幻の43番目の元素ニッポニウムは、当然ですが、入っていません。
しかしながら、元素の名前を見ることによって近代科学の隆盛を俯瞰することが出来て、個人的には大変興味深いです。当然、自然科学の営みは欧米列強の主導でこれまできた訳ですが、113番目にしてようやく日本が食い込めたことを、やはりとても感慨深く思います。

かつてベルナールやニュートンが述べたように、「巨人の肩の上に立つ」ことによって、今日の自然科学は少しずつ大きく高くなってきました。私たちの今日の繁栄は、まさに先人たちの叡智による賜物であり、ただ享受すればいいというのはやはり違うのではないかと思います。

博物館に訪れるたび、偉大な先達のことを、そして科学に奉じた多くの名もなき研究者たちのことを。
そっと想うことにしています

アイスホッケーを観に行ってみた ~Belfast Giantsを応援し隊~

2016-09-25 | 2016年イベント
気分転換に、アイスホッケーを観に行きました。
ルールすらよく判らないくせに、「とりあえず、あの四角の枠の中に、スティックで黒い円盤を押し込むんだよね?」という軽いノリで、気楽に観戦することにしたのでした。大学寮からSSE Arenaという試合会場が近いというのも、大きなポイントでした。

Belfastには「Belfast Giants」というアイスホッケーチームがあります。
北アイルランドは巨人(Giants)の伝説が有名なので、例えば世界遺産にもなっているジャイアンツ・コーズウェイGiant's Causewayなど、Belfast周辺にはGiantsが付く名前が多い気がします。とにかくGiantsという名前の響きが好きなんだろうな~と、勝手に予想しています。Belfast Giantsは、当然ですが、地元では大人気のようでした。 

相手チームはまさかのDundeeのチーム「Dundee Stars」でした。
私は以前にサマースチューデントとしてUniversity of Dundeeに約3か月研究滞在したことがありましたが、Dundeeにアイスホッケーチームがあることなんて知らなかったし、試合観戦する気もなかったですw
あの時は、ひたすら真面目に、がん研究に打ち込んでいました(もちろん、今も、そのつもりですが)。

おいおい、個人的に因縁ありすぎな相手やな~(^_^;)

どっちを応援したらいいのだろうかと一瞬迷いましたが、周囲の様子(圧倒的にGiantsファンが多い)を伺って、すぐに「なんちゃってGiantsファン」になりました。郷に入っては郷に従え、長い物には巻かれよ、とりあえず空気を読むのには長けている日本人として振る舞うことにしました。



車いすの方々の観覧席もあって、なんとなくアットホームな印象を受けました。病人を交えて、家族みんなで応援に来ている微笑ましい光景がありました。



試合前から応援でエキサイトしている人たちもいました。太鼓の音が半端なくて、とても煩かったです。こういう応援の仕方は世界共通、スポーツ共通のようです。仙台のKスタをすこし思い出しました。「静かに観戦したい人はテレビでも観ていろ」ということなのでしょう。



Belfast Giantsのメンバーのド派手な入場でした。
さすがホームチームw

 

激しいぶつかり合いばかりで、もはや肉弾戦の様相を呈していました。
ドガン、バキン、みたいな、凄まじい音が会場に鳴り響いていました。

時々、点が入って、みんなで喜びました。



そして、まさかの乱闘シーン……。

よくある光景なのか、珍しいものなのか、よく判りません。
てゆーか、選手同士の殴り合いを誰も積極的に止めないのは、どうしてなんだぜ?

観客はみんな、点が入った時以上に喜んでいるし……(;・∀・)

結局、3-4でBelfast Giantsが負けましたが、私はDundee Starsを最初から応援していたから全く問題ありません。
Giantsファン? 何の話ですか? 私はStarsのファンですが何か?

アイスホッケーを観に来たのか、喧嘩を観に来たのか、よく判りませんでした。しかし、これもまた一つのSocial Study(社会勉強)というやつでしょう。
まあ、たまには、こういうのもアリかにゃ