「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

日本免疫学の巨人・石坂公成先生の御逝去

2018-07-10 | 学術全般に関して
アレルギー反応に関与する免疫グロブリンIgEを発見したことで名高い石坂公成先生が先週亡くなられていたことを知りました。晩年は奥様の看病もあって、ずっと山形で過ごしていらっしゃるのは存じ上げておりました。

残念ながら、私は直接の面識はありませんが、石坂先生の弟子に当たる先生方のうち幾人かにはとてもお世話になりましたし、石坂先生のご業績については昔から存じ上げておりました。石坂先生と言えば、奥様の照子先生と一緒に、免疫学分野で世界的に活躍した初めての日本人免疫学者です。さらに、多田富雄先生(東京大学名誉教授)、岸本忠三先生(大阪大学名誉教授、元総長)などの日本を代表する免疫学者を指導したことでも知られます。
IgE発見とアレルギー反応に関する研究業績は世界をリードし、ノーベル賞候補にも挙げられ、ガードナー国際賞など世界的に著名な医学賞を受賞されました。教育者としても、かの米国ジョンス・ホプキンス大学医学部教授・医学部長になり、日本人として初めて米国免疫学会会長などを歴任されています。
つまり、一言で言うと「日本の至宝」といっても過言ではない医学者でした。

現在、日本のお家芸と言われるほど、免疫学分野では世界をリードしています。
存命の研究者だけでも、抗体生成の遺伝的原理の解明によってノーベル賞を受賞した利根川進博士、IL6を発見し、その抗体薬を開発して、自己免疫疾患治療にまさに革命をおこした岸本忠三博士などをはじめ、本庶佑博士、谷口維紹博士、長田重一博士、平野俊夫博士、坂口志文博士、審良静男博士など、世界の超一流と目される免疫学者は枚挙に暇がありません。
前述の通り、石坂先生は岸本先生などの多くの日本人免疫学者の師匠筋に当たりますので、つまり、日本の免疫学の父と言ってもいい方だろうと思われます。大きな影響、それもとても良い影響を日本の免疫学界に与えた恩人でした。

現在、IgEを知らない医者はいません(いたらモグリです)、なぜならば、医学部の免疫学の教科書において免疫グロブリンIgEの記載がないものは存在しないからです。IgEが関与するアレルギーの発症機序を明らかにした功績は人類全体にとってとても大きいものでした。アレルギーで苦しむ多くの人達を救う偉大な成果といえるでしょう。

日本からまたひとり、偉大な医学者が去ってしまいました…
ご冥福をお祈り申し上げます。


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