「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

天才vs凡人

2019-01-23 | 学術全般に関して
久しぶりに嫉妬心を覚える出来事がありました。
知人がある学術賞を受賞されたことを知りました。おそらくは史上最年少でしょう。彼のことは学生時代から存じ上げていて、若くしてすでに教授になられたのもよく知ってはいますが、学術的には正直「そんな大したことはしてないだろう」と思っていたのでした。しかし、今回受賞された賞は、一応、我が国で最も権威ある機関が認定しているものですから。実際には、その領域では大した業績なのかもしれません。経歴や受賞歴を客観的に見ると、日本の若きホープというか、将来のノーベル賞候補と言っても良いのかもしれませんね。

「だいぶ差をつけられてしまったのかな」というのが最初の印象でした。
私と彼はかつて学生時代にある賞を同時受賞したのですが、その時からまだあまり時間は経っていないような気がしていたものの、実際には、もはや遠い昔になったのかもしれません。それから、彼はあの英国科学誌『Nature』に論文を掲載させて世界的に華々しく活躍していて、一方、私は福島で被災地医療に従事して今は英国の片隅でうずくまっているのですから。かつて同じ場所に立っていたはずなのに、今となっては随分と遠くに来ちまったもんです。たぶん彼は天才なんでしょうけれども、全然違う分野でもあるので、普段はあまり意識してはいませんでした。つまり、もともと競争相手ではありませんから。
しかし、実は、私と同じ分野にもう1人別の若き天才がいるのを、最近、知りました。米国科学誌『Cell』(かつて山中伸弥先生がiPS細胞樹立論文を初めて報告した生物学系の世界トップジャーナル)をパラパラめくっていて、驚愕しました。まさか放射線生物学分野(厳密にはちょっと違うが)からCellに論文を出すとはね…。彼が東大の秘蔵っ子というのは知っていましたが、素晴らしい業績です。こうして、否が応でも意識させられるような天才も出てきました。
いやあ、なんだかんだ言って、日本は安泰なのかもしれませんねえ。これだけ日本の学術・教育振興に対する予算が相対的に削られて、我が国の大学や研究所が退廃的な環境であっても、若き天才たちの芽は出てくるのですから。

やはり、天才には勝てないのでしょうか。
私は凡人です。残念ながら、研究に才能があると思えたことは一度もありません。上記のような天才達に、才能という点では敵わないかもしれません。世界的に注目されるジャーナルに掲載されるような華々しい論文を書くのは今の私にはまだ無理です。凡人だもの。
それならば、私の負けなのか。いや、そうではありません。
たとえば、あと100年後、500年後に学術的に真に価値のある「何か」を遺せるのは誰なのか。それはまだ判りませんから。

私はただ、私が為すべきと信じることを、私の生涯を賭して為すことにしましょう。


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