清き心の未知なるものの為に㊳・・・ダグ・ハマ-ショルドの日記より
もっとも長い旅は
内面へむかっての旅である。
自己の運命を選びとって、
おのれの存在の根源をたずねつつ
(根源があるのであろうか。)
旅路に立った者は、
いまだにおまえたちのあいだに留まりつつも、
それでいて仲間はずれになっていて、
おまえたちの気持ちからは孤立している------
まるで、死刑の宣告を下された者が、
それとも告別がさし迫って、
万人の避けえぬ定めである孤独へと
いち早く運命づけられてしまった者のごとく。
おまえたちと彼との間には介在する、
-------距離が、疑惑が、
気がかりが。
彼は見るだろう、おまえたちが
遠く、さらに遠く、さがってゆくのを、
彼は聞くだろう、おまえたちの呼び声が
かすかに、さらにかすかに、薄れてゆくのを。
今晩の会合が終ってから、罪障感と隣あわせの空虚感が不安の念をかきたてた。この
不安は、無為と不満とに必然的に伴ってくるものである。。
それというのも、おそらくはこの夕べの集いがなんの意味もなかったからであり、さ
らに無益だったからでもある。-------これほど判明しきっている人間関係においては、
なにを配慮してみても、結局は無益という死に至る罪に譲歩することになるのが落ちで
あるのに、それを承知で、いろいろ配慮して演出した集いだったのである。
このような事情のもとでは、この喜劇は生ある実在の品位をおとしめる無駄話といった
調子のものとなったが、それでもこれを最後まで演じとおさねばならなかった。
彼が生命の通った接触を求めて、取り乱してみえるまでに苦悩している前にたったとき、
おまえの厚い皮で蔽われて自足している孤独が、なんとあからさまに露呈したことか!
おまえ自身と同じ問題を抱えている者------その同じ問題が彼に腐れのきていない本来の
ままの姿をしているのに、おまえは出会ったのである。------を助けることが、おまえに
とってなんと難しかったことか。
突然、私はこのことを理解した。すなわち、私が私自身にとって実在的であるよりも、
彼は彼自身にとっていっそう実在的なのである。そして、私にたいして要請されているの
は、私の実在に参与するよりいっそう緊密な仕方で彼の実在に------これを客体でなく主体
と見なして------参与せよ、ということであった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます