清き心と未知なるものの為に㉕・・・ダグ・ハマ-ショルドの日記より
まるで防雷具よろしく、誠意のない愛嬌をつねにわが身に鎧っているならば、航海技術に
欠けるところがあろうとも機雷の危険を免れることができるものと、彼は思い込んでいたの
である。
その愛犬は子羊のように装っていたが、そのくせ狼どもといっしょに狩りをしようとした
のである。
投げやり、無知、大向こう(それがおまえの心の鏡に映ったおまえ自身の姿にすぎぬもので
あろうとも)への顧慮。そのような理由からおまえが危険を冒し、責任を引き受けるのを、私
は見た。
からの卵はふわふわと浮き、風のままに自在に動く。------生長してひよことなるための萌
芽も養分も捨てさってただの殻だけとなってからそんな仕業をやってのけられるほど身軽にな
ったのである。(人づきあいのいい男)
遠慮もなく、へだてを無視し、人の気に入れられたくてうずうずしている。------折り目のな
いことばを話し、目方のかからぬおしゃべりしか口にせぬ。殻以外のなにものでない。
------荒野を枕とし、星を兄と読んだ人たちのひとり。ひとりきり。しかし、孤独も交わりで
ありうる。
血は樹液や河のながれとリズムをひとつにして脈打ち、身体はその動きのうちに大地のリズム
を宿している。というのか。------いな。それに代わって現れたのが、敏活な五官がもたらす酸素
の供給を断たれ、(計画と策謀と)を追及するうちに擦り切れた------四壁に囲まれたなかで幅を利
かせるばかりの------精神なのである。家畜なのである。------そのなかで、種族の力が、なんの
あてどもなく、ただ涸れ尽きてゆく。
倍音は消え失せてゆき、残ったのは会話であるが、それとて貧寒なあまり、心のふれあいの欠如
を隠し切れないのである。われわれはおたがいに忍び足で別れてゆく。しかし、なぜであろう、な
ぜであろう-----。
われわれは他人のほうへからだを乗り出す。だが、詮ないことである。------なぜならば、われわ
れにはいまだかつて捨身する勇気がなかったからである。
正しい姿勢は健康のしるしである。------それは、至誠を正す力がなくて、よろけがちな身を守る
ために堅い甲羅らもぐりこむのとはまるきり類を異にしている。
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