1968年
身長1㍍85、体重75㌔。この二十二歳になる大男について、巨人の中尾二軍監督が親心をもらしたことがある。「倉田って男は、すごく速いタマを持っている。捕手のミットにずしりとくるようなタマを投げる。速いといえば、堀内も速い。堀内のタマは、ホームプレートの所で、グーンと伸びる。倉田のは、もっと重い感じで、グイグイ押してくる。タマの速さだけなら十分一軍で使える。しかし、倉田本来の実力からみると、一軍入りした当時は、70点台の出来で、もう少し手元においておきたかった。七月の半ばごろ、完全な姿の倉田を送り出したかった・・・」かわいい子には旅をさせろ、という。中尾二軍監督は、非力な投手陣に悩む川上監督の要請で、予定より一ケ月も早く倉田を旅立たせたが、子は親が心配するほど弱くなかった。中尾二軍監督はテレビとラジオの二本立てで倉田の活躍を知り、いまホッと胸をなでおろしている。6回1/3を投げて、1安打6三振。五回、ジャクソンに2点本塁打されているが、中尾二軍監督が太鼓判を押したスピードは最後までおとろえなかった。登板は三回表、二死二塁のピンチ。金田を救援してマウンドに立ったとき、打席には豊田が薄笑いを浮かべていた。だが倉田の右腕から飛び出したストレートはいきなり豊田をから振りさせ、1球ボールの1-1から、一邪飛に打ち取っている。以後、倉田は「悔いのない投球をしよう」と念じながら、長身からストレート、カーブ、フォークボールを投げおろした。「グラウンドにきて、二番手投手をいわれた。それからは、思い切り投げることしか考えなかった。あとで、ああすればよかった、と後悔するのはいやだった。ボクたち、若いのだから、失敗を恐れたらいけないと思った・・・」試合後、倉田は悔いのない投球を強調している。エース堀内の3試合連続KOで、お先真っ暗だった巨人の投手陣に、いま一条の光がさし込んだ。さる四十年に一度、そして六日前の十一日、大洋戦に一度登板しただけの倉田が、巨人の8連敗を救った。二十歳の堀内、この六月には二十二歳になったばかりの倉田。金田と城之内のベテランに代わって、またイキのよい投手が誕生した。二軍の北川コーチによると「悪い日とよい日が極端」だそうだから、まだまだひどいパンチをあびて立ち往生することがあるかもしれない。しかし、8連敗の危機に直面した巨人をささえたこの日の自信は、倉田の心の中に深く刻み込まれているはずである。巨人は若い二人の投手を押し立てて、きょう十八日から中日、広島を相手に再出発を期している。
身長1㍍85、体重75㌔。この二十二歳になる大男について、巨人の中尾二軍監督が親心をもらしたことがある。「倉田って男は、すごく速いタマを持っている。捕手のミットにずしりとくるようなタマを投げる。速いといえば、堀内も速い。堀内のタマは、ホームプレートの所で、グーンと伸びる。倉田のは、もっと重い感じで、グイグイ押してくる。タマの速さだけなら十分一軍で使える。しかし、倉田本来の実力からみると、一軍入りした当時は、70点台の出来で、もう少し手元においておきたかった。七月の半ばごろ、完全な姿の倉田を送り出したかった・・・」かわいい子には旅をさせろ、という。中尾二軍監督は、非力な投手陣に悩む川上監督の要請で、予定より一ケ月も早く倉田を旅立たせたが、子は親が心配するほど弱くなかった。中尾二軍監督はテレビとラジオの二本立てで倉田の活躍を知り、いまホッと胸をなでおろしている。6回1/3を投げて、1安打6三振。五回、ジャクソンに2点本塁打されているが、中尾二軍監督が太鼓判を押したスピードは最後までおとろえなかった。登板は三回表、二死二塁のピンチ。金田を救援してマウンドに立ったとき、打席には豊田が薄笑いを浮かべていた。だが倉田の右腕から飛び出したストレートはいきなり豊田をから振りさせ、1球ボールの1-1から、一邪飛に打ち取っている。以後、倉田は「悔いのない投球をしよう」と念じながら、長身からストレート、カーブ、フォークボールを投げおろした。「グラウンドにきて、二番手投手をいわれた。それからは、思い切り投げることしか考えなかった。あとで、ああすればよかった、と後悔するのはいやだった。ボクたち、若いのだから、失敗を恐れたらいけないと思った・・・」試合後、倉田は悔いのない投球を強調している。エース堀内の3試合連続KOで、お先真っ暗だった巨人の投手陣に、いま一条の光がさし込んだ。さる四十年に一度、そして六日前の十一日、大洋戦に一度登板しただけの倉田が、巨人の8連敗を救った。二十歳の堀内、この六月には二十二歳になったばかりの倉田。金田と城之内のベテランに代わって、またイキのよい投手が誕生した。二軍の北川コーチによると「悪い日とよい日が極端」だそうだから、まだまだひどいパンチをあびて立ち往生することがあるかもしれない。しかし、8連敗の危機に直面した巨人をささえたこの日の自信は、倉田の心の中に深く刻み込まれているはずである。巨人は若い二人の投手を押し立てて、きょう十八日から中日、広島を相手に再出発を期している。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます