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南北朝(日本)時代と漫画家・車田正美先生の作品を瞑想する部屋。

【大河ドラマ】『龍馬伝』-それぞれの攘夷-(第14回『お尋ね者龍馬』)

2010年04月05日 00時00分16秒 | 大河ドラマ『龍馬伝』(2010年)

SEASON2
RYOMA
THE ADVENTURER

と来ましたか。
それはいいけど、以蔵!
物陰でしくしく泣くなんて、おまえは明子姉ちゃんか!
だけど許す! 乙女泣きOK!

*

明治15(1882)年。横浜。
豪奢な芸者遊びの座敷で、後藤象二郎(青木崇高)と板垣退助の外遊費を用立ててくれ、と頼まれた郵便汽船三菱社長・岩崎弥太郎(香川照之)。

(弥太郎)「ヨーロッパ視察ら半分遊びやろ。捨て金になるに決まっちゅうがゆう費用はわしゃ出さんぜよ」

よっ、社長。なんかスカッとするわ。
坂本龍馬(福山雅治)のことを聞きたくてたまらない土陽新聞記者・坂崎紫瀾(浜田学)をはぐらかすように話を溜める弥太郎の、ものごとには順番がある、と云わんばかりの語り口も上手い。
そこには、龍馬への羨望、嫉妬、嫌悪、そして友愛が確かに込められていています。
なるほど、『龍馬伝』は取材に応える弥太郎が過去を振り返る物語でした。SEASON毎に仕切り直すのですね。しかし。

(喜勢)「おまさん、後藤様はもう終わった人やろ。もう土佐は反東洋派の天下になったがですよ。今こそ上手ぅ立ち回る時やろう」

かわいい顔してごっつキツいわー。さすが、弥太郎に惚れた女。

20年前。
脱藩した龍馬と、吉田東洋(田中泯)暗殺の容疑者である彼をイヤイヤ追う弥太郎が大坂で再会しました。
龍馬=汚い。
弥太郎=小ぎれい。
社会的には何者でもなくなった(むしろ犯罪者の)龍馬と、土佐藩の下士という身分ではある弥太郎の、立場の逆転です。
おまえが武市を止めんから東洋様が暗殺されてわしの出世はパーじゃ!と食ってかかったくせに、龍馬を捕縛しようとする井上佐市郎(金山一彦)を、弥太郎は思わず止めようとしてしまった。ああ、龍馬毒殺未遂事件もそうでした。

(弥太郎)「おまんを助けたかったわけじゃないき! 悔しかったがじゃ! こん土佐じゃ、やっぱり下士は虫けらながじゃ。上士に命じられて、虫けらが虫けらに毒を盛る・・・こんな滑稽で、こんな惨めなことがあるかえ!」(第13回『さらば土佐よ』)

凄みのある「別世界の男」になってしまった龍馬にどこか傷ついた顔をして、
土佐に逃げ帰って(以蔵にロックオンされずにすんだよ!)、
母ちゃんに縋りついて、
もう、100%正直すぎて憎めません。弥太郎の悲痛な叫び(↑)も「別世界」へ出て行く龍馬の背を押したのでしょう。

さて、泣いている男はほかにもいました。

(以蔵)「そりゃあ・・・わしは頭が悪いぜよ・・・難しいことはさっぱりわからん・・・けんど、わしはガキの頃から誰よりも、誰よりも武市先生のことを・・・」

呑んだくれながら、岡田以蔵(佐藤健)が夜の縁側でさめざめと泣いてる。どう突っ込んでよいのやら。
そこへ、今は亡き東洋様のストンピング攻撃で人格がバラバラになった武市半平太(大森南朋)がやって来て、おまえを役に就けなかったのはいつまでも悩みを聞いてもらえる「友達」でいてほしかったからだ、と歯の浮くようなせりふで土佐の一本釣りにしてしまい、ついに「人斬り以蔵」の誕生です。
しかも、斬ってない。
井上佐市郎と、阿鼻叫喚の格闘を演じた末に絞め殺してしまった。「侍」もなにもありません。
すごい。
上士に無礼討ちにされた仲間の死を悲しみ、切腹寸前の山本琢磨の命を惜しんで龍馬に助けを求めた以蔵が、

(以蔵)「殺してしもうた・・・人を殺してしもうた!」

吐いた。
半平太と同じ道を歩むことになるのでしょう。より先鋭に、より急進に、過去から逃げるようにして選んだ道にのめり込んでゆく。そして前にばったり倒れるのです。切ないな。
それにしても半平太のバラバラっぷりは凄惨です。実権を握った藩の上の方に手を回して才谷家-坂本家を庇ったのも、以蔵にかけた言葉も、まったくの虚とは思えない。幼なじみで、道場主として慕われた先生の皮が膚に張りついている感じで・・・だから龍馬も以蔵も、在りし日の「武市さん」を忘れられない。惨いっす。

土佐にこだわってムリヤリ居場所を抉じ開けた半平太。その半平太しか居場所がない以蔵。
土佐を捨てた龍馬に、おまえの居場所はそこじゃない、と諭された弥太郎。
その龍馬は・・・
薩摩に密入国を企てたそうですが、彼の居場所はどこなのでしょうか。彼の「攘夷」は、どこに。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なぎらさま、こんばんはー☆ (きつね)
2010-04-05 01:15:50
なぎらさま、こんばんはー☆

第二部早々、龍馬の変貌ぶりにコシを抜かさんばかりに驚きました。
(抜けたかもしれんです;)
龍馬像としては、既成のものに近づいた感じではありますが。。
これまでの天然がかった龍馬にやっと慣れてきたところだったので、ちょっと残念なような安心できるような..

今日は以蔵が目立っていましたよね~。
今日のみに限っていえば「以蔵伝」もイイんじゃないの?と思わせる立ち振る舞いでした。
これから過酷が運命が待ち受けているそうなので、悪目立ちしないように祈るばかりです。

勝先生も登場し、だんだん役者がそろってきてワクワクです。
NHKによると、新選組メンバーの配役も発表されたようで、展開が楽しみですウフフ

それとあいまって、ますます「あかね色の風」の続きが読みたくなってるんですが!!
ないものねだりですよねえ。しくしく。
返信する
きつね様 (なぎら)
2010-04-06 00:35:01
きつね様

こんばんはー。おこしやすー。

>龍馬の変貌ぶり
わたくし、実は「既成の龍馬像」にほとんど触れたことがないので、むしろ「栓」がはずれた、クラ○アンありがとう、とほっとしたくらいで・・・。
ただ、弥太郎が落ち込むほどの変貌だったのは確か。あ、こりゃ人を斬ったな、と思いましたよ。実際、どうだったのかわかりませんが。

>悪目立ち
ぶははははははは!
そうですねえ、そういう『以蔵伝』は困るかもしれませんねえ。
あれだけ怖い思いをしたのに、武市先生が(わかっているぞ)と微笑してうなずいた途端に、ぱああ、と顔つきが変わって、おまえ、本当に武市先生のガンドッグ(Gundog)でいいのか、よくないだろ!と揺さ揺さしたくなります。武市先生もさぞやS心をくすぐられ・・・はっ、これが「悪目立ち」? いかんいかん。

>過酷な運命
時空を越えて、18世紀で「侍」やるんですね(いや、マジでやるかもしれませんよ、御大は)。

>新選組メンバーの配役
公式サイトを見てきました。これはおもしろい。勝先生の登場をちら見せで抑えたのはよかったです。
せっかくなので、幕末ブームに便乗してでも、不定期でもいいから『あかね色の風』は読みたいですね。あれは大ネタです。可能性は0ではありませんが・・・。
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