猫と住まふ

人生初の猫との日々を徒然なるままに

セントアンナの奇跡

2009-08-21 16:30:37 | 猫生活、エンタメ
突然の代休だったので何も予定が無く、とりあえず久しぶりに映画でも観に行こうと近くの映画館を調べてみたものの、イマイチ興味が無い作品ばかり。
少しマニアックな映画でも何か無いかなぁとググっていたら、ちょっと興味があった「セントアンナの奇跡」が上映中だということを発見し、アサイチで日比谷シャンテまで行ってきた。

重い。
実に重い。
観終わった後、身体はぐったり。
そして涙で顔がぐちゃぐちゃに。

この映画、第二次世界対戦の際にイタリアのトスカーナ地方の小さな街・セントアンナで起きたナチスによる一般市民の大量虐殺という史実が下敷きになった物語。
……と、これだけ書いただけで、何がどう重いんだか、想像がつくことでしょう。
とにかく、これが実話だと信じたくないような出来事を描いたシーンでは、目を開けていられなかった。

しかし、ただ単に悲惨な状況を描いているだけではなく、アメリカ人だから、ドイツ人だから、イタリア人だから、黒人だから、白人だから、悪い人であり、または良い人であるという描き方が一切無く、悪い人は悪い人、良い人は良い人と、全ての人種を平等に描いているところが、スパイク・リー監督作品ならでは。
本当に邪悪なものは何なのか、という本質的なことをすごく考えさせられる。

スパイク・リー監督と言えば、黒人差別に対して過激なまでの表現をすることで一躍有名になった人なので、ちょっと敬遠気味で作品はずっと観たことがなかった。
でも、たまたまDVDで観た「インサイド・マン」が、意外にも社会派映画ではなく実によくできた犯罪サスペンスで、映像もスタイリッシュだし、展開も面白いのがとても気に入って、改めて「マルコムX」や「ドゥ・ザ・ライト・シング」などを立て続けに観てみた。
そうしてみると、やっぱり昔に比べてずいぶん角が丸くなった描き方をしているから、初期のファンからすると普通の映画を撮るようになっちゃったのね、って感じなんだろうけれど、最近の作品も本当に素晴らしいと思うので、もう1度もっとちゃんと評価されてもいいんじゃないかと、個人的には思っている。

この映画、殆どがトスカーナでのロケなので(ローマもちょろっと出てくる)、そういう意味でもスパイク・リー作品としては異色だし、まるでイタリア映画を観ているようだった。
トスカーナ地方でのナチス侵攻による悲劇を描いた作品では、「ふたりのトスカーナ」も有名だけど、あののどかで、戦争とは無縁としか思えないような場所で、こうした悲しい出来事があったということは、イタリア好きとしても知っておくべきなのだと思う。

本当に重くて悲惨な物語だし、正直突っ込み所も結構ありながらも、人の心の優しさもたっぷり描かれていて、後味はけっして悪くない。
是非おすすめ。


映画を観た後、今日から始まった麻布十番祭りの屋台を物色しながら帰宅。
いつもと違う時間に玄関が開くと、誰か知らない人が来たかと思って、すももは隠れてしまう。
「すもちゃ~ん!帰ってきたよ~」と声をかけると、おそるおそる出迎えてくれる。