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オルヴィエート ~美しすぎるドゥオーモのある中世の町~

2016年09月30日 | 夏のヨーロッパ家族旅行2014
2014年 8月17日(日)~18日(月)

ORVIETO
4日間過ごした南イタリアのソレントを後にして、ヴェズヴィオ周遊鉄道でナポリへ戻り、そこからイタリア鉄道の急行列車で3時間10分かけて一気にイタリア中部の町、オルヴィエートを訪れた。

オルヴィエートの駅を降りると、目の前にイタリア名物フニコラーレ(ケーブルカー)の駅がある。オルヴィエートは丘の上にある中世の要塞都市。その丘の上、標高325メートルの旧市街まで、フニコラーレが標高差157メートルを2分で運んでくれる。


フニコラーレで山の斜面を登って着いたところは、山の頂上ではなく大きなロータリー広場!車やバスがたくさん走っていた。フニコラーレのチケットはバスにも使えるというので、バスに乗ることにした。

バスはミニバス。運転手さんに、ホテルがあるPiazza Corsicaに着いたら教えてくれと頼んでバスに乗り込んだ。走り始めていくらも経たないうちに「ここで降りろ」と言われた。こんなに近いの・・・? 念のため"Piazza Corsica?"と訊くと、"Sì!"と答えるので降りた。とても寂しいところ。そして、心配は当たった。。!停留所の路線図を見たら、Piazza Corsicaはまだ2つ先ではないか!! 外国ではよく起こることだが、オレの発音が悪いせい?(そんなバカな…)

仕方なくそこでひたすら次のバスを待っていたら、さっき乗ったのと同じ運転手のバスが来た。。もう何も言う気になれなかった。。

やっとたどり着いたホテル(Affitacamere) Valentinaは、少々寂れた雰囲気が漂っていたが、部屋は"Affitacamere(家具付きの部屋)"というだけあってキッチンが付いていて、レトロっぽい内装がいい感じ。


早速街歩き開始。ポポロ広場からドゥオーモ方面へ延びる狭い道には工芸品や手芸品などを売る露店がずらーっと並び賑わっていて楽しそう。ベージュ色が主流の街並みは古い歴史を感じさせる。壁に彫刻が施されたこの建物は、街のメインストリート、カヴール通り(Corso Cavour)沿いに高く聳えるモーロの塔(Torre del Moro)への入口。



高い塔には惹かれるが、まずはドゥオーモへ向かおう。その前に腹ごしらえ。カヴール通りのカフェでお昼にパニーノを食べ(生ハムはうまかったが、パンは歯が立たないほど固かった。。)、ジェラッテリアでアイスを買い、ドゥオーモ通り(Via del Duomo)へ入る。

細い道にお店が並ぶドゥオーモ通りを歩いて行くと、その先に陽光に照らされた大きな教会が聳えているのが見えてきた。あれがドゥオーモに違いない。歩くほどにドゥオーモが存在感を増して迫ってきた。期待でワクワクしつつドゥオーモ広場へ出ると…

出ましたドゥオーモ!!

この存在感、この美しさ!ケルンのドームストラスブールのカテドラルを初めて見たときと匹敵する感動!! 300年以上もの歳月をかけて、今から400年以上も前に完成したこのドゥオーモは、とりわけ正面ファサードの洗練された神々しい美しさという点で抜きん出ている。

尖塔が天に垂直に延びる4本の柱、シンメトリーに配置された扉と切妻屋根、直線と曲線の織り成す幾何学的な美しさ、そしてファサード一面に施された見事なモザイクとレリーフ。写真をクリックして拡大して見てもらいたい。


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ロレンツォ・マイターニ通り(Via Lorenzo Maitani)からは、ファサードを正面からズームアウトして眺めることができる。通りの名前は、ファサードの設計を主に手掛けたマイターニにちなんで付けられた。


ドゥオーモを横から見ると、大きなファサードが、それより一回り小さな教会本体に張り付いている印象を受ける。見掛け倒し??まさかね。

このファサードと側面の白と黒の縞模様は、シエナのドゥオーモを思わせる。マイターニはシエナ出身で、シエナのドゥオーモの設計にも加わったと知って納得。だけど、シエナのドゥオーモを見たときはこれほどの感動はなかった。


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ファサードのレリーフは110㎡にも及ぶ。1310~20年の間に、救世主の出現など、旧約聖書と新約聖書の物語が描かれたこのレリーフの作者が誰だったかは知られていない。


付け柱の装飾には透かし彫りやモザイクが施されている。このモザイクの模様は、以前パレルモで見たビザンチン様式の装飾を思い出させた。


内部へ入ろうと思ったら3€の入場料が必要だった。「4人で12€か、中は見なくていいかな…」と、入るのはやめてしまった。

カトリック教会の絢爛豪華な聖堂はさんざん観てきたのでこんな風に思ったのかも知れないが、オルヴィエートのドゥオーモの中に入らなかったのは、今思うと悔やまれる。。

ドゥオーモはどんなに見続けていても見飽きないが、ほかにも見たいところがあるので、ここには夕暮れ時にまた来ることにして一旦離れ、城壁の方へ向かった。

ドゥオーモ広場から城壁の南側まではほんの100メートル足らず。このトンネルをくぐれば家並みは途切れ、城壁とパノラマが出迎えてくれる。城壁に沿って街を散策…

険しい崖でできた丘の上の町、オルヴィエートの歴史は古く、紀元前8世紀頃にはエトルリア人が防衛に適した地形に注目して住んでいたという。その後、古代ローマ人によって征服されたが、生き残った人たちとローマ人によって、中世前期には自治都市国家へと発展した。

ローマから120キロと近いこともあり、度々戦争に巻き込まれることもあった。そんな時のこの町の強みは、エトルリア人が注目した四方を断崖で囲まれた地形だった。このためオルヴィエートは「天然の要塞都市」とも呼ばれている。

天然の断崖の上に更に堅固な城壁が築かれ、町のメインゲートとして城塞が建てられた。そのアルボルノツ城塞(Fortezza Albornoz)は、現在フニコラーレが発着するカーエン広場(Piazza Cahen)に隣接した場所にある。


城塞の周辺は公園として整備され、城壁内を自由に散歩することができる。緑が多い公園を歩き城壁のテラスに上れば、素晴らしい眺めを楽しめる。


サン・パトリツィオの井戸
Pozzo di San Patrizio


アルボルノツ城塞の隣に、お目当ての「サン・パトリツィオの井戸」があった。中世に掘られた大規模な井戸で、中を見学できるというので是非入ってみたかった。

公園の一角、樹木の中に目立たない小屋があり、そこが井戸の入口。入場料(大人5€/学生3.5€)を払って中へ。石のらせん階段をひたすら下っていく。上から井戸の底を覗くと水面が小さく光って見える。

この井戸は、1527年にローマ略奪を逃れてきた法王クレメンス7世が水源確保のために掘らせ、1537年に完成した。アイルランドの守護聖人、聖パトリックが隠遁生活を送った洞窟に似ているためにこの名が付いたという井戸の直径は13.4m、深さは53.13mある。

その水源へ至るらせん階段は上り用と下り用に分けられているため、両者が狭い階段でかち合うことはない。石段はそれぞれ248段。中世の昔はここを水瓶を乗せたロバも歩いていたそうだ。

下りて行くほどに暗くなってくるが、明り取りのために窓が70個作られていて薄明るい。この窓はデザイン的に見てもきれいで、ただの井戸を美しい建造物として演出。窓から見上げると地上の明かりがどんどん小さくなって行く。



井戸の底にはお金がたくさん沈んでいた。記念に1円玉を投げ入れると、クルクルと回転しながら沈んで行った。上から差し込むわずかな光がキラキラと反射してキレイだった!


入口には次のようなラテン語の美しい碑文が刻まれている:
"Quod natura munimento inviderat industria adiecit"
「自然がこの地に与えずにいたものが 熱心なる労苦によって授けられた」

水を求めんがために、大変な労力をかけて井戸が掘られた当時の様子が窺える。

夕暮れ時も近い。そろそろまたドゥオーモへ行ってみよう。ここまではほぼ城壁に沿って歩いてきたので、今度は街中を散策しつつドゥオーモを目指す。

オルヴィエートは、丘の上の旧市街全体が中世の佇まいを色濃く残している。歴史を感じる建物が軒を連ね、細くて曲がりくねった道が迷路のように入り組んでいる。

世界中から観光客が殺到する町ではないので、メインストリート以外はとても静かで、そこに住む人達の生活の匂いが身近に感じられるところもいい。

オルヴィエートは豚肉料理も有名。鼻の穴に指を突っ込むのはダレだ!?


豚を見たら腹が減ってきた。夕食にはまだ早いが、入るお店の候補を探しながら、目抜き通りのカヴール通りを歩いていたら、素敵な庭があるいい雰囲気のレストランを見つけた。

この町の壁や塀で多く使われている大谷石に似た味わいのある石材は、町の土台を形成している凝灰岩。道に沿って続くうす茶色の壁が、柔らかくて上品な趣きを出している。

道の奥にスッと立つ塔はモーロの塔。明日はあそこに上ってみよう!

最初に見た露店が並ぶ道で、お手製のフクロウの置物を買い、またドゥオーモ広場にやって来た。広場の入口に建つのは「マウリツィオの塔」と呼ばれる時計台。時刻ごとに棒を持った像が鐘を叩く。


ドゥオーモは西日を受けて、最初に見たときと違う表情を見せていた。


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夕日が沈むにつれて刻々と変化していくドゥオーモの様子を見ながら、ここでしばらくスケッチすることにした。ドゥオーモはちょっと手に負えなさそうなので、ドゥオーモ前の石段に座ってマウリツィオの塔の辺りを描く。


スケッチをしているうちに、ドゥオーモの眺めは夕暮れ時のクライマックスを迎えた。夕日がファサードを照らし、モザイクの金色の部分だけでなく、ファサード全体が黄金色に輝いている。神々しいの一言!


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辺りはだんだんと暗くなり、街灯が点りはじめた。スケッチはまだ途中だが、続きは明日早起きして描くとして、さっき見つけたカヴール通りのレストランへ行くことにした。



ドゥオーモ通りからモーロの塔を見る。日は暮れ、夜景モードになってきた。




カヴール通りを東へしばらく歩いて、チェックしておいたレストラン"Trattoria Pizzeria La Buca di Bacco Orvieto"に到着。庭のテーブル席を選び、ゆっくりと夕食。僕が頼んだのは、プリモにズッキーニとゴルゴンゾーラのリゾット、そしてメインはこの地方の名物を尋ね、子豚のオーブン焼き(Maiyalino porchettato al forno)。ワインが有名なオルヴィエートなので、もちろん地元のワインも。子豚のオーブン焼きは、脂身が多いが香ばしくて香辛料が効いていて、とてもいい味。息子に少し食べさせたらえらく気に入っていた。


料理もおいしいし、お店の雰囲気もいい。ボーイさんも感じが良くて、娘好みのイケメン… すっかり上機嫌になってグラッパも飲み、コーヒーでしめた。大満足!

ホテルへ戻る前に、ライトアップされているドゥオーモが見たくて、三たびドゥオーモ広場へ。闇夜に照らし出されたドゥオーモは、これまた神秘的な魅力を放っていた。


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ホテル近くのポポロ広場では、特設ステージが設けられてコンサートをやっていた。11時近くだというのに子供たちも大勢聴いていて、演奏に合わせて楽しそうに踊っている。さすがイタリア!ライブコンサートはホテルの部屋からも12時過ぎまで聴こえていた。



翌朝、独り早起きして、昨日のスケッチを仕上げるためドゥオーモ広場へ。殆ど人がいない。気温は19度、空気が爽やかで気持ちいい。朝のドゥオーモも爽やかな表情を見せていた。


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色を付けてスケッチを仕上げた…


ホテルへ戻る途中にあるポポロ宮。12世紀に教皇館として建てられ、その後、自治都市の隊長の館として使われたという立派な建物で、これも当時のこの町の繁栄を物語っている。




モーロの塔 Torre del Moro
ホテルは朝食なしだったので近くのBarで朝食を済ませ、昨日から上りたいと思っていたモーロの塔を訪れた。12世紀の終わり、繁栄を極めていた経済・政治の中心地の都市計画の一環として七人宮殿を再建する際に塔が作られた。その塔は、今でも町の至るところから見ることができ、町のシンボルの一つとして健在だ。


七人宮殿の入口で入館料を払って、245段のらせん階段をひたすら上って行く。息切れしながら塔のてっぺんにやってくると、素晴らしい眺望が出迎えてくれた!


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「天空の町」という呼び名にふさわしく、遥か地平線まで続くなだらかな緑の丘陵地帯の中にオルヴィエートの町がぽっかりと浮かんでいる様子が手に取るように見られる。


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塔の高さは地上47m。昨日は聖パトリツィオの井戸を248段のらせん階段を53mあまり下ったので、オルヴィエートで合計493段、100mの高低差を体験したことになる。南東側に聳えるドゥオーモ。


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屋上でしばらく眺めを楽しんでいたら、日本人のツアー参加者の何人かがここまで登って来た。この町で日本人を見かけるのは珍しい。ミラノ、フィレンツェ、ヴェネツィアなどを8日間で巡るそうだ。

塔はその後、単なる町のシンボルとしての役割のみならず1865年に地上18mのところに給水槽が設けられ、翌1866年には壁面に機械仕掛けの時計が、屋上には大小2つの鐘が上下に取り付けられた。

上の小さい鐘は聖アンドレア教会の塔から移設され、目の前の大きい鐘は、1313年からポポロ宮にあったものが使われている。

屋上にいるとき、目の前に釣り下げられたこの鐘が、15分おきに大音響で打ち鳴らされ、町中に時を告げていた。「地球の歩き方」には紹介されていなかったが、ここは絶対におススメ!

段を数えながら塔を下りて1階のショップを覗き、出発まで時間の許す限りオルヴィエートの町を散歩した。城壁内の旧市街は新たに家を建てることはできないため、どこを歩いても古い街並みがとても良く保存されている。中世の繁栄を物語るような塔や教会も多い。






町中で比較的交通量が多く、賑わっているのがレプッブリカ広場(Piazza della Repubblica)。左側、壁に旗がたくさんかけられている建物はコムナーレ宮。現在は市庁舎として使われている。


市庁舎の左には聖アンドレア教会が建つ。角ばった塔は12角形の鐘楼。これは市庁舎の一部と書いてあったり、「教会の鐘楼」と説明が出ていたりする。鐘楼であれば、後にモーロの塔の屋上に移設された鐘があったところかな?


オルヴィエート、これまで名前もあやふやだった。日本ではあまり知られていないが、ローマから日帰りでも来れるところにこんなに魅力に溢れた素敵な町がある。ドゥオーモの美しいパワーに圧倒され、中世の街並みに心を奪われ、塔に上ったり、井戸に下りたりと楽しいアトラクションも満載。おいしいワインや料理にも事欠かない。もう一度訪れたいイタリアの町がまた一つ増えた。

最後にハプニング。。!!
そんな満足な気分に冷や水を浴びせるようなハプニングが!!
次の訪問地のヴィテルボへ行くため、まずはバスでフニコラーレの駅へ向かおうと、ホテル近くのバス停でバスを待っていたが、バスが待てど暮らせど来ない!通行人に尋ねると
「今日はここにはバスは来ないかも…」「えーー。。。?」
バス停の近くにあったPizzeriaのご主人に訊くと
「来るはずだ」
これを信じるしかないが、ヘタするとヴィテルボ行きの電車に乗れなくなってしまうので、ピッツェリアのご主人にタクシーを呼んで欲しいとお願いした。けれど「3件電話したけど、早くてもあと25分かかる」と言われた。
アウトだ。。。(このご主人、ただの通行人のお願いにとても親切にしてくれたことには感謝)

途中でバスが来ることに望みをかけ、重い荷物を石畳のデコボコ道を転がして歩き始めたらやっっっとバスが来た!!
「ギリギリ間に合うかも!」
バスは循環しているため、真っすぐフニコラーレの駅には向かわず、ご丁寧にドゥオーモ広場など名所をいちいち回ってくださる。。。トホホ。。。

やっとのことでフニコラーレの駅。幸いすぐのフニコラーレがあって乗り込む。時間的にはもう間に合わない感じだが、電車がよく遅れるイタリアのこと、「遅れてくれー」と祈る気持ちで車窓から駅の方を見ていたら、丁度ホームに電車が入って来た。
「あれだー!。。。ダメだ。。。」
フニコラーレを降りて大急ぎで走ったが、途中であきらめた。電車はすでに発車してしまっていた。。。

これで切符を買いなおすハメになり、ヴィテルボ到着は1時間以上遅れることになった。

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ヨーロッパ家族旅行2014

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