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ヴィテルボ ~エトルリアの息吹が伝わる鳩の町~

2016年10月09日 | 夏のヨーロッパ家族旅行2014
2014年 8月18日(月)~19日(火)

VITERBO

そんな訳で、予定していたオルヴィエート発の電車に乗れなかったため、ヴィテルボに到着したのは予定より1時間8分遅れの16時7分。しかも、2つあるヴィテルボの駅の、ホテルから遠い方のPorta Fiorentina止まりで、乗り継ぎなし。

もちろんホテルまではタクシーに乗るつもりだったが、駅前にタクシー乗り場はないし、いくら待っても来やしない!日差しが強くて暑いし。。 駅の公衆電話にタクシーの電話番号が書いてあるので電話してみたが、出やしない!

僕と息子で荷物の番をして、奥さんと娘が、タクシーを呼んでもらうために近くのホテルに行ったが、ホテルから電話してもらっても不在のようで、タクシー乗り場を教えてもらって帰って来た。今度は2人はタクシー乗り場の方へ行くも、乗り場が見つからないと戻ってきた。

到着が遅れたうえに、時間はどんどん過ぎて行くばかり。。。せっかく来たヴィテルボ、町を見れるんだろうか… イライラが募る。

娘がもう一度ホテルにタクシー乗り場を訊きに行き、今度は地図を書いてもらって、一人でタクシー乗り場探しへ。しばらくすると、娘が戻る前にタクシーがやって来た…
なななんと… 助手席に娘が乗っているではないか!これはビックリ!娘よ、でかした!!
タクシーを待つこと50分、これでやっとホテルへ行ける。

タクシーの運ちゃんはイケメンで陽気。ヴィテルボの旧市街へ入り、狭い石畳の道をゴトゴトと走り、ホテル"Resort Paradosso"の前に止まった。ホテルのおばちゃんが出迎えてくれ、タクシーのお兄ちゃんとベチャクチャしゃべってる。知り合いみたい。このタクシーのお兄ちゃんは"Maulizio"と呼ばれていた。おばちゃんも陽気で、みんなと握手。部屋や離れの朝食場所などを案内してくれ、大きなペットボトルの水を渡してくれた。

ホテルは石造りの古い建物で、内装の壁にも外壁と同じ石が使われていて、中は城塞のような雰囲気が漂う。ここもキッチン付き。


結局予定より2時間以上遅れてヴィテルボの町に着き、陽も傾きだしてきたので、部屋で休む間もなく町の散歩へ出かけた。

オルヴィエートと同じく、エトルリア文化が栄えた紀元前に起源を持つヴィテルボは、中世には多くの教皇が長きに渡って居住し、「教皇の町」と呼ばれた由緒ある歴史を持つ。

ホテルは城壁内の旧市街のど真ん中にあるため、一歩外へ出ればそんな中世の面影を色濃く残す町並みが飛び込んでくる。

平日の6時近くだが人通りは少なく、観光客らしき人はいないし、お土産屋も見かけない。ペペリーノと呼ばれるこの地方で採れるグレーがかった火山砕屑岩を積んだ壁の家が続き、
「中世にタイムスリップしたような」というよく使われる表現が、まさにこの町には似合っている。

まずはガイドに載っているサン・ロレンツォ大聖堂や法皇の館が見ておきたかったので、そちらを目差しながら歩いていたら、途中に扉が開いている教会があったので入ってみた。

サン・ジョヴァンニ・バッティスタ教会(またはゴンファローネ教会)
Chiesa di S.Giovanni Battista(o del Gonfalone)



内部は、天井まで見事なフレスコ画が描かれている。聖堂内部を取り囲むように描かれた柱の絵が、まるで本物のような迫力で迫ってくる。


クリックで拡大

フレスコ画や彫刻を熱心に眺めていたら、神父さんと思しき人が、「イタリア語わかりますか?」と話しかけてきた。

クリックで主祭壇を見る
「少し…」と答えると、僕たちを教会の中をあちこち案内して、丁寧に説明してくれた。

本物のように見えた柱のフレスコ画は所謂だまし絵で、見る角度によって、柱の向きが傾いて見えるという。なるほど!ここから見ると柱が思いっきり右に傾いて見える!不思議だ…

奥に見える主祭壇は、あのローマのトレヴィの泉を制作した二コーラ・サルヴィの作という。教皇の町と呼ばれるだけあって、ローマとのつながりの深さを物語っている。この教会、すごいじゃないか!

その主祭壇の上に飾られている絵は、イタリアバロックを代表するジョヴァン・フランチェスコ・ロマネッリの「キリストの洗礼」。鮮やかな青が印象的だ。


神父さんは子供たちに、ここで販売されている素敵なカードをプレゼントしてくれた。とても穏やかで徳の高そうな方。何気なく入った教会だったが、この神父さんのおかげで思わぬ有意義な見学ができた。この教会の名前は後で調べた。ガイドには載っていないし、ネットでも情報は殆どないが、訪れる価値大!


サン・ロレンツォ大聖堂 Cattedrale di S.Lorenzo
カルディナル・ディ・フォンターネ通りから、その名もサン・ロレンツォ通り(Via San Lorenzo)へ入って進んで行けば、その終点でサン・ロレンツォ広場が開け、サン・ロレンツォ大聖堂が出迎えてくれる。


サン・ロレンツォ広場は紀元前のエトルリア時代、伝説によればヘラクレスの神殿があったまさに町の起源となった場所。サン・ロレンツォ大聖堂はその神殿跡に建てられたという。広場の右側には、教皇の館が残っている。

大聖堂は12世紀に建てられ、創設当初は華麗なファサードを有していたが、16世紀に行われた思慮のない改修工事で、殺風景なものになってしまったという。オルヴィエートのドゥオーモに似た白と黒の縞模様を持つ鐘楼は14世紀の建造。カテドラル全体が良きにつけ、悪しきにつけ400年の歴史を物語っている。


聖堂内は至ってシンプル。中央部の天井の梁は木材が使われている。左右の側廊を分ける列柱が力強い美しさを見せていた。




大聖堂と同じ広場に建つ教皇の館(Palazzo dei Papi)は、13世紀半ばに教皇の住居として建てられた。


ヴィテルボ・ゴシック様式の最高峰とも言われている館のロッジアは、広い石段を上った右側に続いていて、眺望も良い。

今でもヴァチカンのサン・ピエトロ寺院で行われる法王を選ぶための秘密選挙「コンクラーヴェ(conclave)」という言葉の語源は、ここで行われた選挙に由来するという由緒ある名所となっている。

法皇の館は丘の上の縁に建っていて眺めは良いが、この美しいロッジアの半分は1300年頃に下の谷へ崩落し、その後修復はされないままになっているそうだ。


再び町中のぶらぶら歩き。既に7時になろうとしているが、日が長いおかげでまだしばらくは明るい中の散歩を楽しめるのはありがたい。ヨーロッパの夏の利点だが、遅くまで出歩きすぎて疲れてしまうこともある。

旧市街を歩いていて気づいたのは鳩が多いこと。石畳の上、屋根の上、窓枠などあちこちに鳩がとまって、ポッポ・ポッポと鳴いてはバタバタと飛び回っている。石畳の上に鳩の羽毛がたくさん落ちていて、鳩が羽ばたくたびに羽毛が舞い上がり、鼻がムズムズしてくしゃみが…

そんな鳩たちの存在もそうだが、ヴィテルボの旧市街は全くと言っていいほど観光化されておらず、町の素顔を見せてくれている。生活臭もプンプンと漂ってくる。




サン・ペレグリーノ地区 Quartiere S.Pellegrino
どこを歩いても中世の香りがする町のなかでも、サン・ペレグリーノ通り(Via San Pellegrino)に入ると一層アンティーク感がアップする。こんな風に道を跨いで建つ家や塔が次々と現れる。


ちょっとした広場は、こんな風にレストランのテラス席として使われていたりする。但し、旧市街には飲食店はそれほど多くはないが…


そしてこの小さな空間に足を踏み入れた時、余りにも美しい建築の佇まいにおもわず息を呑んだ。


ここは是非場所を覚えておきたくて、広場の名前が刻まれたプレートをチェック。「サン・ペレグリーノ広場」か… 

この後、町を散歩していて、この場所のイラストが入った案内プレートが掲げられているのを見かけた。観光化されていないヴィテルボの町でも、やはりアピールしたい見どころなんだな。実際、ネットでヴィテルボを調べると、必ずといっていいほど紹介されている場所だった。

トンネルをくぐり、サン・ペレグリーノ広場の裏手へ出ると、また別の趣きがある景色に出会う。


サン・ペレグリーノ通りを更に進み、泊まっているホテルの近くに、陶器の工房兼お店があったので覗いてみた。店内には素敵な工芸品がたくさん置かれていた。



お店の奥で陶器を加工していたおねえさんが、英語でいろいろ説明してくれた。ここで制作している陶器は、ヴィテルボの伝統的なZaffera(ザッフェラ)と呼ばれる焼き物で、藍色が特徴なんだそうだ。白地に絵付けの藍色がよく生えている。シンプルだけど味があり、いろいろ気に入ってしまい、奥さんは友達にミニ鈴を、僕は自宅用にフクロウの置物を買った。


その後は、町を散歩しているときに、Zafferaと思われるプレートに気づくようになった。この町の色と空気にとても合っている。


このフクロウは26€した。このときのレートで約4000円はお高いが、表情もかわいくて、やっぱり買ってよかったー。


サン・ロレンツォ大聖堂へ通じるサン・ロレンツォ通りを今度は反対方向へ歩いて行き、プレビシート広場を目指す。途中で美味しいジェラートを食べ、プレビシート広場にやってきた。

プレビシート広場 Piazza del Plebiscito


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大きな広場を、歴史的建造物が取り囲む。夕日を浴びて映える13世紀の時計塔が一際印象的。

時計塔の下にはライオン像があり、広場を警護しているようにも見える。ライオンは市の紋章にもあしらわれていて、町のシンボルになっている。

プレビシート広場と言えばナポリのそれを思い浮かべるが、ヴィテルボのプレビシート広場も中世以来の政治の中心地だったとのことで(「地球の歩き方」より)、重厚な雰囲気を湛えて見ごたえがある。

サン・ロレンツォ通りはこの広場で終わり、ここからはローマ通り(Via Roma)となる。

広場の西側に建つプリオーリ宮(Palazzo dei Priori)は15世紀の建築。中庭は広いテラス。ベンチや立派な松の木、噴水などがあり、ちょっと休憩するのにいい。


クリックで拡大

中庭の建物側の壁にはいろいろな彫刻が施され、説明用のパネルなどもあって、ちょっとしたギャラリーだ。街灯には灯が点りはじめた。


中庭テラスはファウルスの谷に面していて眺めがいい。丁度日没の時間で、古都の夕映えの風景にしばし見とれていた。


夕食は、エノテカと呼ばれる地元のワインが飲める居酒屋風レストランで。「イタリア中南部名物」というメランツァーネ(Melanzane)という料理を注文したら、巨大なブルスケッタみたいのが出てきた。アンチョビがしょっぱいが、オリーブがうまい。でもこれが12€は高いな~。。


ヴィテルボ県は Est! Est!! Est!!! など日本でもよく目にするワインも製造しているワインの産地。「地元のワイン!」と注文した白ワイン、"antico"(年代もの)と言って出してくれたとてもいいワインを楽しんだ。



ライトアップされた古い街並みをホテルへ戻る。灰色がかった建物が白熱灯でセピアカラーに照らされてアンティークな雰囲気が高まり、更にタイムスリップ感が募った。


ホテルにはメインルームの他にこんな小部屋もあった。昼間よりも益々古城にいる気分になれそうだが、ちゃんとWiFiが使える。



翌朝、また一人早起きしてスケッチに出かけた。向かったところはサン・ペレグリーノ広場。昨日、この広場を見つけたときから、スケッチしたいと思っていたところだ。


広場に面したサン・ペレグリーノ教会の石段に座ってスケッチを始めた。ここも鳩がいっぱいいて、向かいの塔の周辺でもバタバタと飛びまわっている。よく見ると、塔の壁に空いた小さな穴に鳩が陣取っている。「鳩の町」と言いたくなるほど鳩だらけだ。


クリックすると鳩がよく見えます

フンや羽毛が道にはたくさん落ちてるし… 掃除しないのかなぁ… と思っていたら、グットタイミングで清掃車がやってきて、おじさんが出てきて広場の掃除を始めた。ちゃんと掃除してるのか!少し安心して、おじさんに "Buon giorno! Buon lavoro!"「おはようございます。お仕事ご苦労さま!」と挨拶した。おじさんも"Buon giorono! Grazie!"と返事してくれた。

スケッチは朝食までに仕上がらず、朝食を食べ終わってからまた続きを描いてやっとできた…


スケッチを終えて家族と合流し、昨日ホテルのおばちゃんにタクシーをお願いしておいた10時半まで1時間もなかったが、出発までまた町中を散策した。

サン・ペレグリーノ通りをブラブラ歩き…




またプレビシート広場に行って、プリオーリ宮の中庭からの眺めをもう一度。昨日の夕景とはまた違う印象。プレビシート広場付近で、グーグルのストリートビューを撮影する車に遭遇!おれたち、写ったかな?



ヴィテルボは噴水の町とも呼ばれるが、それほど噴水は多かったかな? これは町のシンボルのライオンが入った立派な噴水。この町で一番大きな「大噴水」"Fontana Grande"を見ていなかったことは、このブログを書いている今わかった。


そしてホテルで荷物をピックアップ。泊まった部屋へ通じる石段でタクシーを待つ…



10分遅れで到着したタクシーの運転手は、昨日のイケメンにいちゃんのマウリツィオさんだった。ホテルのおばちゃんとも顔見知りだったマウリツィオさんだが、小さな町ではこんな風にみんなが気心知れていて、良いコミュニティーが出来ているのかも知れない。

昨日は到着が2時間も遅くなってしまったのはやはり痛かった。こうしてブログを書くために色々と町のことを調べ直していたら、行きたかったところ、見たかったものがまだたくさんあったとことを改めて知った。それでもこの町の独特な趣きはたっぷりと味わうことができた。そして、歴史の重みを自然に受けとめて、気負わずに人々が育んできた町の飾らない魅力が好きになった。

さあ、これから家族旅行最後の訪問地、ローマだ。

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ヨーロッパ家族旅行2014

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