2014年 8月13日(水)
REGGIA di CASERTA
今回の旅行に備えて「ナポリと南イタリアを歩く」(小森谷 賢二、小森谷 慶子著)という本を読んでいた奥さんが、そこで紹介されていたカゼルタの王宮庭園の写真を見て、「ここすごーい!行ってみたい!」と声を上げた。フルページで掲載されている写真は、幅広い優美な水路が延々と地平線の彼方まで続くような光景。本当にこんなところがあるんだろうか、と目を疑うほどスゴイ眺めだ。
カゼルタはナポリの北方、約33キロに位置する町で、ナポリから直行電車もあって45分ほどで行けることがわかった。これは行くっきゃない!
マリーナさんから「ジプシーが多いから気をつけて!」と注意されていたナポリ中央駅は、以前とは見違えるようなキレイな駅になっていた。切符売り場の窓口が混んでいたが、以前は殆ど使いモノにならなかった切符の自販機が、クレジットカードも使える新しいモノになっていて、スムーズにチケットを買うことができ、予定通り9時4分発の電車に乗れた。
カゼルタへ行く電車は2階建てだが、ボロくて窓ガラスも汚い。おまけにクーラーもなく、車内はひどく暑かった。でも予定通り9時50分にカゼルタに到着した。
駅前には広場があって、これがそのまま王宮の入口まで続いている。強い日差しを避けるように木が植わっている広場の縁を歩いて行くと、巨大な王宮の前に導かれた。宮殿と、それに続く広大な庭園は、ナポリ王国がヨーロッパで絶大な権勢を振るっていた18世紀、当時の王だったブルボン家のカルロ7世がベルサイユを凌ぐものをめざして建設したという。
チケット売り場に行くと既に大行列が!ここはナポリからも近いし、ユネスコ世界遺産にも登録されていて人気ぶりを物語っていた。並ぶこと約30分、チケットを手に入れてようやく王宮内へ入ることができた。
中の回廊は威厳があってとても豪華。けれど、まずはあの水路のある庭園が見たい!王宮内の見学は後回しにして、王宮の裏手の中庭側へ出た。
王宮庭園 Il Parco Reale
庭園を歩き始めたが、写真で見た水路は見当たらない。遥か彼方の山の斜面に白い筋が見える。あれは滝?取りあえずあそこを目指して行けば良さそう。中央部の炎天下の芝生はなるべく避け、両脇の木陰をひたすら歩く。途中、高々と水しぶきを上げている巨大なスプリンクラーが点在している。
近くに行くと涼しいが、うっかりすると水がこちらへ向いてきてビショビショになるので要注意。
15分ほど歩いてようやく大きな池にやって来た。魚がたくさん泳ぐいでいる。「池」と呼ぶにはあまりに長大で、ずっと先の山まで続いているようにも見える。ここまで来ると、山の斜面に見えた白い筋は滝であることがわかった。
せっかく水路がお目見えしたので、木陰を歩くのはやめて、かなり暑いがこの水路に沿って歩くことにした。10分も歩いた先に「3頭のイルカの噴水(Fontana dei tre Delfini)」と呼ばれる大きな噴水があった。
噴水の先はまた芝生地帯になったが、そこを歩いて行くと、段差を利用して左右に広がる大規模な泉がお目見えした。風神アイオロスの泉(Fontana di Eolo)だ。
庭園を歩き始めて1時間近く経ったが、まだまだ先は長そう。アイオロスの泉からまた水路が始まる。今度は段を成す水路だ。本の写真で見た光景も、水路が幾層にも段になって続いていたっけ。まだまだ遠いが、奥にある滝も少し大きく見えてきた。
この水路の上端にあるのがケレスの噴水(Fontana di Cerere)だ。
ケレスの噴水の上部から来し方を眺めれば、王宮ははるか後方に遠ざかり、水路が段を成しながら王宮までずーっと続いているように見え、実に壮大だ。これこそ写真で見て「すごい!」と思った場所ではないだろうか?水路はこの先もまだ続いている模様だが、とりあえず「ここに来たい!」と言った奥さんと記念撮影。
ケレスの噴水を超えると再び芝生地帯。スプリンクラーが盛んに散水しているが、とにかく日差しが強烈で暑い!でも滝もかなり近くに見えてきた。終点までもう一息…?
歩き始めて実に1時間20分、最初ははるか遠方の山の斜面に白い筋のようにしか見えなかった滝の前までやってきた。その手前まで続く最後の水路の先端にあるのがヴィーナスとアドニスの泉(Fontana di Venere e Adone)。ここからの王宮方面の眺めこそ、写真で見た光景そのものだった。その光景は、写真で見ているだけでワクワクと心躍ったが、実際にここに立った時に感じるスケールの大きさは想像を絶するものだった。王宮は陽炎の彼方に浮かんで見える。大きさだけでなく、風景としての美しさにもただただ息を呑むばかり。
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滝壺のすぐ手前にあるのはディアナとアクタイオンの泉(Fontana di Diana ed Atteone)。猟師アクタイオンが女神ディアナの水浴シーンに出くわすというギリシア神話をモチーフにした彫刻で、滝の右側には、自分の裸を見られてうろたえるディアナとディアナに仕えるニンフ達の像が…
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そして滝の左側には、ディアナの怒りに触れて鹿に変身させられ、角が生えてきたアクタイオンと、鹿になってしまった主人に襲いかかる猟犬たちの像が置かれている。結局アクタイオンは自らの猟犬にかみ殺されてしまうという恐ろしい神話の臨場感を、背景のワイルドな滝が高めている。
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この像の後ろに落ちる滝は大滝(Grande Cascata)と呼ばれ、広大な王宮庭園の北端にある。それまでの人工的な造形美とは異なる自然の渓谷美を見せている。滝全体の高さは82mもある。その滝の最上部に目をやると、なんと人がいるではないか!? どうやら滝の上部まで登れるらしい。これは行くしかない!
でも奥さんは「え~。。?? 私はもうここでいいー。待ってるから行ってきてー」と言う。せっかくここまで来たのになぁ。。子供たちも登り始めたので、結局奥さんも付いてきた。そう来なくっちゃね!
滝の左側から石段が続いていて、これがなかなか急でちょっとした登山気分。緑に囲まれ、岩肌をしぶきを上げて落ちる滝の様子は、ハイキングの一コマといった感じ。この滝、本当にもともとここにあったようにも見えるが、この水はここから40キロも先の水源から引かれているということで、つまり人工の滝ってことか?
汗だくになりながら約10分で最上部の展望テラスに到着!ずーっと歩いてきた庭園の様子が手に取るように俯瞰でき、その後方には地平線が横たわっている。素晴らしい眺めに疲れは一気に吹っ飛んだ。奥さんも「やっぱり来てよかった!」。
ここまで登ってくる人達はそうは多くない。来た人だけが味わえる感動!それにしてもこんなすごいものを造ってしまったカルロ王の権力、そして財力はスゴイ!
王宮から滝の下近くまでは、この庭園が造られた当時に敷かれたという馬車道があり、ここを今でも観光馬車が行き来している。それに今ではレンタサイクルもあるし、マイクロバスも走っている。距離にして有に3キロ以上ある炎天下の道のりをずっと歩いて来たのはさすがにハードだったが、この庭園のスケールの大きさを実感しつつ、いくつもの噴水を見学し、少しずつ変わってゆく眺めを堪能できたのはよかった。
帰りはさすがにバスに乗った。バスに乗っても歩いた道のりがどんなに長かったかを十分に実感できた。
王宮 Il Palazzo Reale
のホールに造られた壮麗な大理石の大階段。イタリア語では"Lo Scalone d'Onore"と呼ばれ、直訳すれば「栄典の大階段」。大規模な式典がにぎにぎしく行われたことは想像に難くない。映画のクライマックスのワンシーンの中に飛び込んだような気分になった。
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公開されている部屋はそれぞれが色合いや装飾、飾られている絵画や調度類などが多彩で個性があり、「どれもこれもただゴテゴテの装飾が施された豪華な部屋の連続でだんだん見飽きてしまう」というヨーロッパの宮殿に抱いているイメージとは違って、次の部屋へ進む度に興味と感動が尽きない。
ここは「大座の間(Sala del Trono)」。白と金、天井画の青、豪華だけれど洗練された美しさが映える。
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こんな素敵な陶器もたくさん飾られている。こうした調度品だけでもミュージアムとしての価値がある。「絵画室(La Pinacoteca)」という部屋もあり、ここはまさしく美術館。
「1200の部屋のうち見学できるのは36部屋だけ」ということで、手っ取り早く見れそうな気がしていたが、36部屋という部屋数は決して少ないわけではない。
こちらはブルボン家が誇る王宮図書室(La Biblioteca Palatina)。3部屋から成る。18~19世紀に印刷された14000冊以上の蔵書があり、貴重書も数多い。
出口の手前には、膨大なプレゼピオ(イエス降誕の情景をイメージしたジオラマ)が展示されていた。これらは18世紀にナポリで制作されたもので、全部合わせると人形の数は1200以上にもなるという。細かくて精巧で、大きさも個性も様々なプレゼピオの数々に思わず見入ってしまった。
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ナポリのプレゼピオはとりわけ有名で、スパッカ・ナポリのサン・グレゴリオ・アルメーノ通りには、クリスマスが近づくとプレゼピオの市が立つというが、ナポリのプレゼピオ制作の伝統はこの頃から育てられてきたものなのだ。
王宮をもっとゆっくり見学したい気持ちはあったのだが、今日はこの後ナポリの考古学博物館にも行きたかったので、15時カゼルタ発の電車でナポリへ戻った。それでも30分程度と思っていた王宮の見学では1時間を費やし、庭園の見学も合わせて4時間以上のカゼルタ滞在となった。
人間が作り上げた壮大で美しい造形物が、200年以上の歳月を経てもなお印象を弱めることも、色褪せることも全くなく、訪れた人の心に強く訴えてくるこの人類にとっての世界遺産は、ナポリやポンペイを訪れるのなら絶対に見ておくべきだろう。
イタリアを凝縮 ディープなナポリの街歩き ~その1~
イタリアを凝縮 ディープなナポリの街歩き ~その2~
レモンが実るリゾートの町、ソレントでアグリトゥーリズモ初体験
ヨーロッパ家族旅行2014
【参考にした主なサイト】
Reggia di Caserta(カゼルタ王宮公式ホームページ)
カゼルタ宮殿 (blog イタリアより ~滞在日記~)
【参考文献】
「ナポリと南イタリアを歩く」小森谷賢二、小森谷慶子著 1999年 新潮社
「地球の歩き方 南イタリアとマルタ '11~'12」「地球の歩き方編集室」著作編集 2011年改訂第9版 ダイヤモンド・ビッグ社
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REGGIA di CASERTA
今回の旅行に備えて「ナポリと南イタリアを歩く」(小森谷 賢二、小森谷 慶子著)という本を読んでいた奥さんが、そこで紹介されていたカゼルタの王宮庭園の写真を見て、「ここすごーい!行ってみたい!」と声を上げた。フルページで掲載されている写真は、幅広い優美な水路が延々と地平線の彼方まで続くような光景。本当にこんなところがあるんだろうか、と目を疑うほどスゴイ眺めだ。
カゼルタはナポリの北方、約33キロに位置する町で、ナポリから直行電車もあって45分ほどで行けることがわかった。これは行くっきゃない!
マリーナさんから「ジプシーが多いから気をつけて!」と注意されていたナポリ中央駅は、以前とは見違えるようなキレイな駅になっていた。切符売り場の窓口が混んでいたが、以前は殆ど使いモノにならなかった切符の自販機が、クレジットカードも使える新しいモノになっていて、スムーズにチケットを買うことができ、予定通り9時4分発の電車に乗れた。
カゼルタへ行く電車は2階建てだが、ボロくて窓ガラスも汚い。おまけにクーラーもなく、車内はひどく暑かった。でも予定通り9時50分にカゼルタに到着した。
駅前には広場があって、これがそのまま王宮の入口まで続いている。強い日差しを避けるように木が植わっている広場の縁を歩いて行くと、巨大な王宮の前に導かれた。宮殿と、それに続く広大な庭園は、ナポリ王国がヨーロッパで絶大な権勢を振るっていた18世紀、当時の王だったブルボン家のカルロ7世がベルサイユを凌ぐものをめざして建設したという。
チケット売り場に行くと既に大行列が!ここはナポリからも近いし、ユネスコ世界遺産にも登録されていて人気ぶりを物語っていた。並ぶこと約30分、チケットを手に入れてようやく王宮内へ入ることができた。
中の回廊は威厳があってとても豪華。けれど、まずはあの水路のある庭園が見たい!王宮内の見学は後回しにして、王宮の裏手の中庭側へ出た。
王宮庭園 Il Parco Reale
庭園を歩き始めたが、写真で見た水路は見当たらない。遥か彼方の山の斜面に白い筋が見える。あれは滝?取りあえずあそこを目指して行けば良さそう。中央部の炎天下の芝生はなるべく避け、両脇の木陰をひたすら歩く。途中、高々と水しぶきを上げている巨大なスプリンクラーが点在している。
近くに行くと涼しいが、うっかりすると水がこちらへ向いてきてビショビショになるので要注意。
15分ほど歩いてようやく大きな池にやって来た。魚がたくさん泳ぐいでいる。「池」と呼ぶにはあまりに長大で、ずっと先の山まで続いているようにも見える。ここまで来ると、山の斜面に見えた白い筋は滝であることがわかった。
せっかく水路がお目見えしたので、木陰を歩くのはやめて、かなり暑いがこの水路に沿って歩くことにした。10分も歩いた先に「3頭のイルカの噴水(Fontana dei tre Delfini)」と呼ばれる大きな噴水があった。
噴水の先はまた芝生地帯になったが、そこを歩いて行くと、段差を利用して左右に広がる大規模な泉がお目見えした。風神アイオロスの泉(Fontana di Eolo)だ。
庭園を歩き始めて1時間近く経ったが、まだまだ先は長そう。アイオロスの泉からまた水路が始まる。今度は段を成す水路だ。本の写真で見た光景も、水路が幾層にも段になって続いていたっけ。まだまだ遠いが、奥にある滝も少し大きく見えてきた。
この水路の上端にあるのがケレスの噴水(Fontana di Cerere)だ。
ケレスの噴水の上部から来し方を眺めれば、王宮ははるか後方に遠ざかり、水路が段を成しながら王宮までずーっと続いているように見え、実に壮大だ。これこそ写真で見て「すごい!」と思った場所ではないだろうか?水路はこの先もまだ続いている模様だが、とりあえず「ここに来たい!」と言った奥さんと記念撮影。
ケレスの噴水を超えると再び芝生地帯。スプリンクラーが盛んに散水しているが、とにかく日差しが強烈で暑い!でも滝もかなり近くに見えてきた。終点までもう一息…?
歩き始めて実に1時間20分、最初ははるか遠方の山の斜面に白い筋のようにしか見えなかった滝の前までやってきた。その手前まで続く最後の水路の先端にあるのがヴィーナスとアドニスの泉(Fontana di Venere e Adone)。ここからの王宮方面の眺めこそ、写真で見た光景そのものだった。その光景は、写真で見ているだけでワクワクと心躍ったが、実際にここに立った時に感じるスケールの大きさは想像を絶するものだった。王宮は陽炎の彼方に浮かんで見える。大きさだけでなく、風景としての美しさにもただただ息を呑むばかり。
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滝壺のすぐ手前にあるのはディアナとアクタイオンの泉(Fontana di Diana ed Atteone)。猟師アクタイオンが女神ディアナの水浴シーンに出くわすというギリシア神話をモチーフにした彫刻で、滝の右側には、自分の裸を見られてうろたえるディアナとディアナに仕えるニンフ達の像が…
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そして滝の左側には、ディアナの怒りに触れて鹿に変身させられ、角が生えてきたアクタイオンと、鹿になってしまった主人に襲いかかる猟犬たちの像が置かれている。結局アクタイオンは自らの猟犬にかみ殺されてしまうという恐ろしい神話の臨場感を、背景のワイルドな滝が高めている。
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この像の後ろに落ちる滝は大滝(Grande Cascata)と呼ばれ、広大な王宮庭園の北端にある。それまでの人工的な造形美とは異なる自然の渓谷美を見せている。滝全体の高さは82mもある。その滝の最上部に目をやると、なんと人がいるではないか!? どうやら滝の上部まで登れるらしい。これは行くしかない!
でも奥さんは「え~。。?? 私はもうここでいいー。待ってるから行ってきてー」と言う。せっかくここまで来たのになぁ。。子供たちも登り始めたので、結局奥さんも付いてきた。そう来なくっちゃね!
滝の左側から石段が続いていて、これがなかなか急でちょっとした登山気分。緑に囲まれ、岩肌をしぶきを上げて落ちる滝の様子は、ハイキングの一コマといった感じ。この滝、本当にもともとここにあったようにも見えるが、この水はここから40キロも先の水源から引かれているということで、つまり人工の滝ってことか?
汗だくになりながら約10分で最上部の展望テラスに到着!ずーっと歩いてきた庭園の様子が手に取るように俯瞰でき、その後方には地平線が横たわっている。素晴らしい眺めに疲れは一気に吹っ飛んだ。奥さんも「やっぱり来てよかった!」。
ここまで登ってくる人達はそうは多くない。来た人だけが味わえる感動!それにしてもこんなすごいものを造ってしまったカルロ王の権力、そして財力はスゴイ!
王宮から滝の下近くまでは、この庭園が造られた当時に敷かれたという馬車道があり、ここを今でも観光馬車が行き来している。それに今ではレンタサイクルもあるし、マイクロバスも走っている。距離にして有に3キロ以上ある炎天下の道のりをずっと歩いて来たのはさすがにハードだったが、この庭園のスケールの大きさを実感しつつ、いくつもの噴水を見学し、少しずつ変わってゆく眺めを堪能できたのはよかった。
帰りはさすがにバスに乗った。バスに乗っても歩いた道のりがどんなに長かったかを十分に実感できた。
王宮 Il Palazzo Reale
王宮に戻り、今度は宮殿内の見学。かなりくたびれていたし、宮殿なんて西洋史に詳しくない僕にとってはどこも同じように見えるので、30分ぐらいでサッと回るつもりで入った。 宮殿は18世紀にヨーロッパに造られたものとしては最大と言われていて、部屋の数が1200もあると聞くとちょっと引いてしまうが、公開されているのは5フロアのうち3階部分の36部屋だけということなので、お手頃な規模に思えた。 公開されている部屋がある3階へ上る手前でまず出迎えてくれるのが、天井まで吹き抜け |
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公開されている部屋はそれぞれが色合いや装飾、飾られている絵画や調度類などが多彩で個性があり、「どれもこれもただゴテゴテの装飾が施された豪華な部屋の連続でだんだん見飽きてしまう」というヨーロッパの宮殿に抱いているイメージとは違って、次の部屋へ進む度に興味と感動が尽きない。
ここは「大座の間(Sala del Trono)」。白と金、天井画の青、豪華だけれど洗練された美しさが映える。
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こんな素敵な陶器もたくさん飾られている。こうした調度品だけでもミュージアムとしての価値がある。「絵画室(La Pinacoteca)」という部屋もあり、ここはまさしく美術館。
「1200の部屋のうち見学できるのは36部屋だけ」ということで、手っ取り早く見れそうな気がしていたが、36部屋という部屋数は決して少ないわけではない。
しかもどの部屋も個性的で面白く、「30分ぐらいで回ろう」なんてとんでもないことだと気づき、足を速めた。 順路が折り返しになったので、これで出口へ向かうのかと思いきや、更に別の方向へ導かれて部屋は続くのだった。しかもどの部屋もとにかく広く、それが次々と真っ直ぐに連なっていて、どこまで続いているか先が見えない。 公開部分だけでこの王宮がいかに巨大なものであるかを身を持って体験した。おまけに子供とはぐれてしまって、探すのに一苦労してしまった… |
こちらはブルボン家が誇る王宮図書室(La Biblioteca Palatina)。3部屋から成る。18~19世紀に印刷された14000冊以上の蔵書があり、貴重書も数多い。
出口の手前には、膨大なプレゼピオ(イエス降誕の情景をイメージしたジオラマ)が展示されていた。これらは18世紀にナポリで制作されたもので、全部合わせると人形の数は1200以上にもなるという。細かくて精巧で、大きさも個性も様々なプレゼピオの数々に思わず見入ってしまった。
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ナポリのプレゼピオはとりわけ有名で、スパッカ・ナポリのサン・グレゴリオ・アルメーノ通りには、クリスマスが近づくとプレゼピオの市が立つというが、ナポリのプレゼピオ制作の伝統はこの頃から育てられてきたものなのだ。
王宮をもっとゆっくり見学したい気持ちはあったのだが、今日はこの後ナポリの考古学博物館にも行きたかったので、15時カゼルタ発の電車でナポリへ戻った。それでも30分程度と思っていた王宮の見学では1時間を費やし、庭園の見学も合わせて4時間以上のカゼルタ滞在となった。
人間が作り上げた壮大で美しい造形物が、200年以上の歳月を経てもなお印象を弱めることも、色褪せることも全くなく、訪れた人の心に強く訴えてくるこの人類にとっての世界遺産は、ナポリやポンペイを訪れるのなら絶対に見ておくべきだろう。
イタリアを凝縮 ディープなナポリの街歩き ~その1~
イタリアを凝縮 ディープなナポリの街歩き ~その2~
レモンが実るリゾートの町、ソレントでアグリトゥーリズモ初体験
ヨーロッパ家族旅行2014
【参考にした主なサイト】
Reggia di Caserta(カゼルタ王宮公式ホームページ)
カゼルタ宮殿 (blog イタリアより ~滞在日記~)
【参考文献】
「ナポリと南イタリアを歩く」小森谷賢二、小森谷慶子著 1999年 新潮社
「地球の歩き方 南イタリアとマルタ '11~'12」「地球の歩き方編集室」著作編集 2011年改訂第9版 ダイヤモンド・ビッグ社
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僕も大好きなイタリアに毎年のようにいらっしゃっている様子、いいですね。ナターレの時期はまた格別に素敵なんでしょうね。少しずつ読ませて頂いています。
こちらの旅のレポートは遅くなる一方で、このイタリアの旅からもうすぐ2年になってしまいます。この後はソレントのアグリトゥーリズモ、カプリ、オルヴィエート、ヴィテルボ、そしてローマと続きます。更新はゆっくりですがたまに遊びにいらしてください。またコメントもいただけると嬉しいです。kazuさんのレポートも楽しみにしています。読者登録させて頂きました。