株式会社プランシードのブログ

株式会社プランシードの社長と社員によるブログです。
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その13.大好きな仕事ができないことほどむなしい事はない

2012-06-21 13:30:14 | 制作会社社長の憂い漫遊記
私は今の仕事を「天職」と思っている。
しかし、天職でありながら30年以上に及ぶ監督生活の中で、
「映像館」に入社した1年目は、下ズミonlyで最もつらい年であった。
監督はやらせてもらえなくても、せめて助監督でもよいので
作品にかかわり合いたかった。が、実際は雑用ばかりだった。
よしんば雑用でもよい、1本通して作品につきたかった。
でも回ってきた仕事は、台本のコピーだけとか、ロケ1日のみ応援だとか、
細切れの仕事ばかりだった。
今までは、一人で雑用から何にから何まで行なっていたが、
それもこれも監督をするため、プロデュースするための下準備。
役割ナシは疲れる。それでも中畑演出部長から
「コーチャン(私をこう呼んでいた)、この台本の閉じ方はなんや。
ピシッと揃ってないやんか?」とか
「明日、ロケ応援に来てくれるらしいけど、
台本の16ページの3行目には何が書いてある?」と聞かれたりした。
心の持ちようで下ズミも自分の大切な経験になると諭してくれているのだが、
私は同じ歳のVE(ビデオエンジニア)中川君を捕まえては
己の不遇を恨み「したっぱ、いじけるど!」とブータレてばかりいた。
毎日ヒマで、おかげで学生時代の友人と飲んだり、
彼女ができたり振られたりと、ようやく一般ピープルになれた。
が、大好きな仕事ができないことほど、むなく寂しい事はない。

そんなある日、映像館・東京事務所の本間さんから電話がかかってきた。
「コーチャン元気か?」「いじけてないか?」
本間さんは私よりも2つか3つ年上の方で、
映像館トップ3に歯向かう造反組の組長だった。
構成員の私の安否を気遣って、よく励ましの社内電話をくれた。
「実はな…UPUの企画で、理系学生向けに、
企業が持つ技術を紹介する新機軸の採用情報誌を発行するんだが、
そのオマケとしてつけるビデオ企画が通りそうなんだ。
協賛企業は3分間の持ち時間で自社の技術をPRする。
トータル60分のビデオは名付けて『インタービデオマガジン』
ど~だ、参ったか!」
興奮したキーの高い声に続き、急に小声で
「ついては東京の企業は僕が、大阪の企業はコーチャンが
担当して欲しいんだ。けど制作、演出兼務で二人だけの仕事になる。
ワンマン体制だが、どうせヒマにしてるだろうから、この話受けるわな」
ついにこの時がきた。ワンマン体制など慣れっこです。
オマケだろうが何だろうが仕事ができるのならOKです。
間髪入れずに「まかせなさい!」と人生 幸郎師匠張りに応えた。


(本間さんとは自由化を求めて学生運動のまっただ中だった
激動の韓国に渡ったことも…)


結果的に印刷物よりもわかりやすく、躍動感あるこのビデオは
本誌を凌ぐ大ヒットとなり、翌年はさらに協賛企業が増え2本組となった。
まぁ映像館に2年間在籍して、まともにやった仕事といえば
この『インタービデオマガジン』くらいだ。
考えてみると、1社3分で20社をまとめて1本にするわけだから、
積上げていくと制作費も相当な額になる。
また、スポンサーとの対峙は、1社3分といえども
長編1作品作るのと、なんら変わらない。つまり長編20本作るのと同じ。
また、20社近くのスポンサーと対峙するわけだから
おのずと調整力も応酬話法も身についてくる。
さらにUPU営業担当者の映像館側窓口になるわけだから、
営業担当者とも会話が増え、酒も飲み、
一緒に営業に行っては仕事を取りと、
小さな仕事ではあったが取ってきた仕事については、
プロデューサーや監督に収まった。


(INTERビデオマガジン1987 映像でみる先端技術情報
  企画/制作 UPU・映像館)

この世界に入ったら数多く仕事をする方がよい。
そうすれば自分の才能が一気に開花する。思いだけではダメだ。
開花させるには、自分を知るための相当量の仕事が必要だ。
仮に才能がなくても、その仕事が好きなら、大好きになるまで
落ち込みながらでもよいので仕事をする方がよい。
好きなら工夫をするようになる。好きなら前進したくなる。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる!
自分の思いが、感触が、カタチにあるまで撃ちまくれ。

どうなるか分からない先の事を考えて
「俺は大監督になる」と夢見る前に
目の前の仕事に打ち込む。傾注する。
そうするとぼんやりではあるが、生き方が見えてくる。
30数年この世界で生きている私でもまだぼんやりとしか見えていない。
しかし、はっきりと見えるまで進むつもりである。
いつの日になるかは分からないが、
夢は、その日々のあゆみの延長線上にしかないからだ。


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