絵じゃないかおじさん

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あ@仮想はてな物語・「万葉おおみわ異聞」13/20

2022-04-13 08:12:42 | おぼけまみれ
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        絵じゃないかおじさんグループ





{待った?}

 手の平に書く。

「うーうん」

 (雪香が匂うように美しい。
  黒いしんなりとした髪、若葉が映るような膚。
  つつじの香りがよく似合う。
  心の乱れを誘うような匂い)

 四郎太さん、今日は何か様子が違うわ。
 結婚の申し込みでもしてくれるのかしら。
 緊張してる。
 目付きも真剣そう。
 恐い気がする。

 何があるのかしら。

{く ち あ わ せ し て も い い ?}

 これだったのね。
 いいわ。
 許してあげる。
 でも、何と言ったら良いのかしら。
 どうしたら嫌らしくないかしら。
 さり気なくしてくれればいいのに、
気のきかない人ね。
 でも、そんなところが好き。
 擦れてなくって、純情で。
 しかし、そんなこと、いちいち断らなくっても
いいのにね。

 (雪香がこっくりとうなづいて、目を閉じてくれた。
  オレは生まれて初めてだ。
  人間の男と女がそうしているのは、
  神杉のすき間から何回となく見ている。
  あんなことして、何がいいのかと思っていたが、
  体と体を合わせることは、いいものだ。
  雪香の手の平に触れるだけでも
ドキドキするのに、
  あの可愛い声が出る、
  柔かそうでほんのりと赤い唇に触れるなんて
考えただけでも、
  血が頭のてっぺんまで上ってきて卒倒しそうだ)

 あの人ったら、初めてなのね。
 歯と歯がぶっかってしまった。
 お陰で私の唇も切れてしまったわ。

 でも嬉しい。
 あの人の初めての、唇に接した女の子になれたんだもの。
 もちろん私も、はじめて。
 頭からすーっと血がひいて、天に昇るようだった。

 (あの子の唇に触れた瞬間、赤電が走った。
  何がなんだか分からなくなった。
  これでますますあの子がオレのものになったと思った。
  あの子とオレの細い繋がりの糸が
大きくなったように感じた)


つづく

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