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絵じゃないかおじさんグループ
{待った?}
手の平に書く。
「うーうん」
(雪香が匂うように美しい。
黒いしんなりとした髪、若葉が映るような膚。
つつじの香りがよく似合う。
心の乱れを誘うような匂い)
四郎太さん、今日は何か様子が違うわ。
結婚の申し込みでもしてくれるのかしら。
緊張してる。
目付きも真剣そう。
恐い気がする。
何があるのかしら。
{く ち あ わ せ し て も い い ?}
これだったのね。
いいわ。
許してあげる。
でも、何と言ったら良いのかしら。
どうしたら嫌らしくないかしら。
さり気なくしてくれればいいのに、
気のきかない人ね。
でも、そんなところが好き。
擦れてなくって、純情で。
しかし、そんなこと、いちいち断らなくっても
いいのにね。
(雪香がこっくりとうなづいて、目を閉じてくれた。
オレは生まれて初めてだ。
人間の男と女がそうしているのは、
神杉のすき間から何回となく見ている。
あんなことして、何がいいのかと思っていたが、
体と体を合わせることは、いいものだ。
雪香の手の平に触れるだけでも
ドキドキするのに、
あの可愛い声が出る、
柔かそうでほんのりと赤い唇に触れるなんて
考えただけでも、
血が頭のてっぺんまで上ってきて卒倒しそうだ)
あの人ったら、初めてなのね。
歯と歯がぶっかってしまった。
お陰で私の唇も切れてしまったわ。
でも嬉しい。
あの人の初めての、唇に接した女の子になれたんだもの。
もちろん私も、はじめて。
頭からすーっと血がひいて、天に昇るようだった。
(あの子の唇に触れた瞬間、赤電が走った。
何がなんだか分からなくなった。
これでますますあの子がオレのものになったと思った。
あの子とオレの細い繋がりの糸が
大きくなったように感じた)
つづく
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