絵じゃないかおじさん

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仮想はてな・ストーリィ 2/3 芋峠の不思議  

2014-11-15 07:26:20 | 仮想はてな物語 
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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
<ドン作雑文集より>


私は、ふと芋峠を走ってみたくなった。早朝の峠はきっと気持がいいぞ。私は、素早くツーリング用の服装で身を固める。夏といえども、最近では、革ジャン、革ズボン、ロングブーツの3点セットを身に着ける。小さな事故を起こして怪我をして以来、特に神経が過敏になっている。だから、転倒することを前提にしてサヤカに跨がるのだ。いくら、不思議な能力を持つサヤカとは言え、マシンの100%の支配は出来てはいない。バイクに乗る時には、私とサヤカとマシンの、調和のとれた協力関係が必要なのである。



団地のはずれまで、バイクを押して歩く。休みの朝早く、バイクのエンジンの始動音は近所迷惑になるから、気を使っているのだ。風がサッと流れて行く。そんな服装でも外に出ると暑くは感じられない。夜通しで空気がよどんだムンとした室内では、ため息つくほど気持悪いのだが、夏の朝の戸外はからりとしていて、まだ冷え冷えとする感じさえ受ける。


早朝の信号機が黄色や赤のまま、点滅している。交通量も、そう多くないので、3色に変える必要がないのだろう。香久山、石舞台、カヤの森から、芋峠へと向かう。すがすがしい空気が歓迎してくれる。緑が猛々しい。道端に生えた山草が、腕やヘルメットや脚を打つ。道幅が狭くて、走りづらい。所々、刈り取られた道の端に出会うと、むさくるしい頭を散髪したようで、スカッとして気持がいい。


いつもは石舞台の冬野川にかかる都橋から吉野の千股まで、10kmあまりを30分ぐらいで走っている。その山道の中ほどの所に役の行者の石の像がある。その数100m前後が、この峠の難所だ。あたりは、昼間でも薄暗く、急カーブになっている。冬場などは凍結していて、何度も恐ろしい目を味わっている。この道は前にも書いたように、私の練習用の山道である。暇を見つけては、やってきている。


役の行者は石に浮き彫りにされていて、右手に杖を持ち座り込んだポーズをとっている目をドカッと見開き、すんなりと伸びたあごヒゲが印象深い。額の皺に何とも言えぬ共感を覚える。痩せているのが、またいい。肥満は地球の資源の浪費につながっているからだそうは言うものの、ガソリンを浪費する自分自身の行動には甘い。きっと小さい頃、砂糖に飢えた精神が甘さをたっぷりと貯え、身体の隅々で過飽和状態になっているからだろう。


この道を夜遅く通る時には、あの見開いた目の眼が光っているような気がするので、絶対に彼の姿を見ないように素通りしている。だが、今日は早朝なので、傍で一休みして煙草でも吸おうと思った。


あれっ!
役行者がいない。右よしの山上、左ざいみちと書いたのっぺりとした石が、ひっそりと佇んでいるだけである。私は、不思議に感じたが、きっと痛んだので石工が取り外し、修理でもしているのだろうと思った。サヤカを止め、山川の瀬の音を聞きながら、黒いヘルメットを脱ぎ煙草を取り出した。


キエーッ!


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