絵じゃないかおじさん

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仮想はてな物語 「万葉おおみわ異聞」  26/34

2015-12-21 07:41:11 | 仮想はてな物語 
  copyright (c)ち ふ



 とうとうあの人が結婚を申し込んでくれたわ。
 今夜は私の部屋に訪ねて来てくれるという。

 待遠しいわ。
 すだれが揺れてる。
 さあ、あの人の言う通りにして待っていよう。
 肌着も新しいものに取り替えてお風呂にも入った。
 常世の願いをもたらしてくれるという橘の実も浮かべたの。

 ああ香久わしい匂い。
 あの人に何をご馳走しようかしら?
 蘇も出そうかしら。
 濁り酒もつけようかな。
 黒酒それとも白酒がいいかしら。
 でも、まだお父さんやお母さんに見つかってはいけないの。
 お母さんは奥に寝ているけれど、
 外床に居るお父さんに気づかれはしないかしら。
 もし、見つかったら、あれは風の音なのよと言うことにしよう。
 あの人、もう少しお金が貯まるまで、
 正式な申し込みは待ってくれと言っていた。

 いいわ。
 いつまでも待ってあげる。

 裏紐は、どうしておけばいいのかしら。
 あら、こんなこと考えて・・・ はしたないわね。
 まそ鏡の中に入って隠れていたい。

 夜よ、早く更けて、今宵を黒く包んでおくれ。


 (うまくいった。
  岩踏む道、遠い道のりといえども、苦にはならない。
  石川の清の川原で、身も浄めてきた。
  部屋の中は狭いが雪香の匂いがいっぱい詰まっていて、
  心が安らぐ。
  オレは、何処に座って良いか分からなかったので、
  隅に寄っていた)


{遠 慮 し な い で 、 こ こ は あ な た の へ や よ}



                              つづく


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