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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
平成はじめのころです
見事な雪道が連なっていた。車のわだちは見当らなかった。私は、一瞬ひるんだが、隧道を抜けると洞川までは、20分とはかからない。私は、峠の坂道をおそるおそる進んでいった。しかし、雪は浅かった。浅い雪の下は完璧なまでに凍結状態であった。私は、サヤカを止めた。ブーツがすべる。しかも、坂道である。私は、サヤカの手動ブレーキを引き締め小道の中央で立ち往生してしまった。左手は、岩コロが転がってくるような切り立った山だし、右下は崖である。道にガードレールも張られてはいない。
私は、途方にくれてしまった。時刻は午後の4時すぎであろう。私は、時計は持たない主義である。時計を持てば、どうしても時計に頼ってしまう。時計がなければ、時間を知るためにいろいろな感覚が養われてくるような気がするからである。といっても、電車の時間や正確な時刻などに対しては無力である。
私の頭の中は、引き返すことに決まっていた。しかし、サヤカをUターンさせる術が分からなかった。サヤカは、約150kgもある。おいそれとは、かつげもしない。足元はつるつると滑る。動かないのが、一番安全なのだ。道幅は、2mにも満たないようだ。日がつるべ落としのごとく沈むように感じられた。実際、太陽はどんよりと曇った空の果てに隠れていて見えないのだが、真っ暗闇の世界が、あっという間に、やって来そうなような気がした。脇の下では、冷汗がぽとりぽとりと落ちていた。
ああ、どうしよう!
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