絵じゃないかおじさん

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ピカ輪世代です。
(傘;傘;)←かさかさ、しわしわ、よれよれまーくです。

仮想はてな物語 「万葉おおみわ異聞」  13/34

2015-12-08 07:55:41 | 仮想はてな物語 
  copyright (c)ち ふ


  オレは、丁寧に卵殻を並べ、神杉の枝からうまく雨ダレが
  落ちるように細工した。
  しかし、思うように雨は降ってくれない。
  降っても、あの子は傘をさしてやってくるので、旨くゆかない。
  その上、オレが並べた卵殻を見習いの神主が
  時おり片づけてゆく。
  けれでも、オレは挫けないぞ。
  術に、ますます磨きをかけるだけだ。


  いまは鳥や犬や猫が相手だ。
  この間は、猫のヤツにかけ損なって
  ひどい目に遭ってしまった。
  ヤツは目を患っていたのだ。
  お陰で白い綺麗な膚にひっかき傷がついてしまって、
  なかなか治らなかった)


 毎日お願いにゆく大神様の境内で夕立に遇ったわ。
 神杉の下で雨宿りしてたの。
 誰が並べたのか、卵の殻に雫が落ちて
 ピチン、ピチンと跳ねてた。
 雨の雫が落ちると、殻の中にさざれ波も立っていたわ。
 それが、とても変わっていて新鮮だった。
 杉の枝から、落ちる雫が上手に殻のなかに入っていたの。
 私は、それが面白くて、膝を折って見入ってた。


 そんな時だったの。
 3抱えも、4抱えもある杉の木の横から、
 あの人が突然現われたの。
 色が白くてほっそりしていて、目がとても素敵だった。
 でも、あの人は口がきけないの。
 私が挨拶すると、にっこりと笑ってくれたわ。



                              つづく


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