幻想小説周辺の 覚書

写真付きで日記や趣味を書く

読書レビュー 東京すみっこごはん

2022-08-26 21:15:00 | 書評 読書忘備録
東京すみっこごはん (光文社文庫) 成田 名璃子著  344頁を読みました( ^ω^ ) 155冊目 ★★★★

衣食住とはよく言ったもので これらについて思いを巡らせると
自分や家族の誕生や入学、就職や結婚、死別などといった色々な
出来事の記憶が衣食住に紐ついて引出しを開けるように
出てくるものです。

この本でも「共同台所 すみっこごはん」での料理と、
そこに集まる人物達のドラマを通じて自分もその場所に
立ち会っているような暖かい気分になることができます。

商店街の路地の片隅にある「すみっこごはん」。
そこは店主がいるわけでもなく、そこに集まった人がくじ引きで
料理当番となり、材料費を集めて夕食を皆で食べるというシステム
です。
昔小料理屋だったらしい店内は古びてはいるものの大きくて
清潔なキッチンと手作りの風合いのいい大テーブルと椅子、
そして誰かが残していった丁寧で吹き出しコメント沢山の
イラスト付きのレシピノートがあります。

この店には、くじ引きで当たった人はこのレシピノートから
夕食のメニューを決めてなるべくレシピ通りに料理を
つくらなければならないといった幾つかのルールがあります。

連作で4つの短編でそれぞれすみっこごはんに集まるメンバーと
夕食のメニューをテーマに物語が語られ、常連さんたちの繋がりや
人間模様も徐々に読者に判ってくるという仕組みです。

メンバーの年代や境遇のばらけ具合が多彩で、
しかもドロドロしてないのは丁度良い感が高いですし、
一話毎に語り手を変えながらメンバー間の人間模様が
進んでゆくのは物語がマンネリ化しないので良い構成です。

一話目はいじめに悩む女子高生、
二話目は婚活に踏み切れない30前のOL、
三話目はこの店の憎めない憎まれ役?の初老のおじちゃんと
タイの研修生の話、として
夫々が悩んだりこだわったり、頑張ったりしていながら、
ここの料理とここの場所が少しだけ背中を押してくれる様子を
描いていきます。

食べる事も楽しいけど、作ることももっと楽しいですよ。
と本が語りかけてくれるような気がします。
引き続き続編を読みます。




読書レビュー 東京すみっこごはん2

2022-08-26 21:14:00 | 書評 読書忘備録
東京すみっこごはん 雷親父とオムライス 成田名璃子 328頁
を読みました(*ゝω・)ノ 156冊目 ★★★

すみっこごはんシリーズの二冊目。
一作目の唐揚げでは宮下奈都さん風の声優を目指す女友達同士の話。
二作目は筑前煮では奥さんに先立たれた孤独な頑固爺さんの話。
三作目はこの爺さんと優等生の小学生のオムライスをめぐる友情。
そして四作目は大規模開発に狙われたすみっこごはんの地上げの
危機に常連の世話焼きおばさんがシルバー探偵に扮して事件解決に
大活躍します。

このようにこの本ではみんなのすみっこごはんが地上げで消滅の
危機に陥ってしまいますが、そこはお約束。
安心してハラハラしながら?顛末を楽しめます。

成田さんのこれらのおはなしは、しっかりと手をかけて作られた
料理は人の心やこわばりをほぐし、家族や親友のように
親愛の情に人同士を包み込むことが出来るという基本的な理念が
底流に流れています。

この基本構造は実に大したもので、美味しんぼや食べ物小説も
殆ど全てこのテーゼとバリエーションで物語を成立させることが
できます。逆に半端にドラマや物語性を乗せようとすると微妙に
無理矢理感が気になってしまうのです。
今回もその点から言うとやや頑固爺さんのおはなしは盛り過ぎの
印象を受けてしまったのですが、それでも悪人も不幸になる人も
出てこない食べ物小説、というのはやはり心の何処かで強く
希求するものがあるんだなあ、としみじみ思うところがあるので
僕は好きな小説ですし更に続編を希望します。( ^ω^ )

実況読書レビュー 騎士団長殺し

2022-08-26 21:11:00 | 書評 読書忘備録
実況中継2 騎士団長殺し
第一部がもうすぐ読了です。

タイトルの意味が判明したけど 
ちょっと肩透かしな印象です え?これ?
このあと更なる意味が附与されるのかもしれません

女性についてはあんまり村上さんは好きじゃないのか?
と感じました。いろんなエピソードが。。。
女性について書くのが好きじゃないのか?
考えを巡らすのが面倒なのか?
それともセックスが好きじゃないのか?

いろんなキャラが登場します
登場キャラのなかには村上世界に馴染んでる方もいますが
違和感出まくりの不思議な方もいます
う~ん、免色さんのイメージが結びづらいなあ
どうしてもカズレーサーさんになってしまって
脳内キャスティングに緊張感が出ない( ̄∇ ̄*)ゞ

主人公の絵を描くシーンはリアルで新鮮でした。
村上さんのアートについての見識が現れているようです
モデルの見方から絵の具を載せて仕上げてゆく経緯が
リアルで勉強になりました
村上さん自身も油絵を描いたら面白いものになるかも
主人公の描く絵は鴨居さんの作品を何となくイメージして
読んでます
でも問題の作品は全然凄さが想像できません(笑)
なんだかコントの紙芝居の絵みたいにしか考え付かない。






短歌本 春は曙比較夏は短夜

2022-08-26 21:09:00 | 書評 読書忘備録
「春は曙光、夏は短夜」  岩佐義樹   262頁

///季節のうつろう言葉たち
手紙やメールに使いたい美しすぎる日本語////
これが帯と広告のつかみ文です。

見開き1頁に一語の用例、出典、誤用されやすい使われ方、
読者のこの語の正当率、この語の使われる美しい光景などが記されている本です。

でも僕は知ってます。この本はあのテレビの辛口採点番組
プレバト!!の俳句コーナーのネタ本だと。
知られてなくてちょっと通な気分になれる夏の季語
「半夏生」「端居」「日向水」などなど、テレビで役者さん達が得意気に折り込んでいた季語の数々が、出てくる‥出てくる‥  

悪いとか、批判とかいう意味ではないし、岩佐さんが悪い訳ではないのですが、こんな事を見つけてしまうと世の中の、特にTVのカラクリを知ってしまったような残念な気になります。

逆に言うとそれだけ、知ってたり、ちょっと使う事ができるとそれだけで感心されるインスタ映えする言葉。
とまあ。。そんなミーハーな見方だけでは可哀想なので手に取ってこの言葉たちをじっくり味わって下さいね。
まだまだ取り沙汰されていないシブくて可愛い言葉達が沢山この本には納められていますから。

鵲の橋、月は世々の形見、夜気、素読、一献、温州蜜柑。。。
どこか分かったようで、実はよく理解してないこれらの言葉にも使って良い季節、月や旬がキチンと決まっているのでした。
今後、僕の文章がちょっと高尚で雅になったように感じられたら多分にこの本の影響を受けたせいなのだと思います。






ぜんぶ本の話 池澤夏樹 春奈

2022-08-26 20:54:00 | 書評 読書忘備録
ぜんぶ本の話 池澤夏樹 池澤春菜(語り下ろし対談)

この本の出版は某ラジオ番組でこの二人の出版記念対談(番宣)で知った。
その番組のほうが、語り下ろしのこの本書よりも二人の距離感とか興味とかのライブな呼吸がつかめて面白かったと思い返す。
なんたって 娘が「ザリガニの鳴くところ」を意気揚々とプレゼンしてると横から父親が、もっとその本とか背景について深い蘊蓄とか評価をする始末。
場をさらってしまう父親に、娘から「わたしの プレゼン本を 盗らないでよッ!!(怒)」と ブチ切れられる場面など、なかなかこの二人ならではの場面だった。

実際のこの本では、さすがに親子ゲンカは収録されず、しっとりと、親和的に対談が進められる。
最初読んだ児童書の話、からSF、翻訳もの、自分たちの書いた本、と順序たてて語り合われる。
その都度、膨大な量の本の名前や作者の情報が出てくるが、この対談はきっと彼らの本棚がいっぱいの自宅で行われたからだろう、本を採り上げてはその本と周辺の関連本を棚から一掴み手に抱えてきて、また対談に戻る・・といった光景が目に浮かぶ。

このような親子、家族の関係、実にうらやましい。
そして買わなくても勝手に本が届き、増えてゆく、そのような環境も実にうらやましい。笑
垂涎の的であります。

【もくじ】
まえがき
Ⅰ 読書のめざめ 児童文学1
Ⅱ 外国に夢中! 児童文学2
Ⅲ 大人になること 少年小説
Ⅳ すべてSFになった SF1
Ⅴ 翻訳書のたのしみ SF2
Ⅵ 謎解きはいかが? ミステリー
Ⅶ 読書家三代 父たちの本
エッセイ〈父の三冊〉
「福永武彦について」「ぜんぶ父の話」
あとがき

【登場する作家と作品(一部)】
E・ファージョン『ムギと王さま』、E・ケストナー『エーミールと探偵たち』、サンテグジュペリ『星の王子さま』、
R・アームストロング『海に育つ』、K・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5』、
W・ギブスン『ニューロマンサー』、A・マキャフリー『歌う船』、松本清張『点と線』、
C・オコンネル『ゴーストライター』、J・ル・カレ『スマイリーと仲間たち』、福永武彦『死の島』、
『マチネ・ポエティク詩集』......