幻想小説周辺の 覚書

写真付きで日記や趣味を書く

夏休み課題図書 山猫の夏

2022-08-01 21:25:21 | 書評 読書忘備録
[山猫の夏] 船戸与一
#大人の夏休み課題図書 その2。
「伝えろ、お招きによってたった今、山猫(オセロット)がやって来たとな。」 

灼熱のブラジルの町。百年の抗争を続けてきた二つのファミリーの片方に雇われた凄腕のプロフェッショナル、山猫の通り名を持つ日本人弓削一徳。しかし物語の語り手はしがない場末のバーテンのオレ。山猫に振り回され、ダシに使われ、魅了され、自分も舞い上がって演者の一人になって行く。

行間から容赦無い日射しと血と硝煙の混じった熱風が吹き付けます。クロサワの用心棒とシェークスピアが燃え盛る焚き火の鉄鍋の中で煮詰められ、最後のカタストロフィ(大破局)まで汗を拭くことも忘れ一直線です。

オトコならば読め!! オンナならば魅了されろ!! 山猫がやって来たとな!!




夏休み課題図書 全東洋街道

2022-08-01 21:16:20 | 書評 読書忘備録
[全東洋街道][メメントモリ]藤原新也

#大人の夏休み課題図書、その③

コイツは文庫本もでているが,是非オリジナルの大判タイプを探して欲しい。
作者が上海からインドを経由してイスタンブールへの現代の巡礼の旅の記録です。

当時はセゾン的な広告とコピーライト全盛の時代。旅行や海外の情報もるるぶ的なものしかなくて、そこに突然、ガンジス川の川辺で野犬に喰われる水葬の死体の写真をひっさげて現れたときのインパクトは凄かったです。

綺麗な風景など殆どなくて、くすんで薄汚れた写真、しかしながらそこに写る強烈な死体や葬送の光景、強い光を放つ老人や娼婦の表情。日本と全く違う生活の有り様。
そして意外にもリリカルで詩的ですらある文章。放浪の途中にありナマの現実をレポートしながら藤原の目は、その地に沸き立つ土地の過去の神話を幻視し、渾然と物語るのです。

なんの免疫も無い当時の僕はこの写真家だか小説家かだかもわからない藤原という謎の人物にすっかり魅了されてしまったのでした。 ふらふらと自分も印度に行って野垂れ死にになっていた危険もあったのですが、何とか無事にこうして投稿できています。良かった良かった( ^Д^)( ^ω^)( ^▽^)






夏休み課題図書 シュナの旅

2022-08-01 21:12:52 | 書評 読書忘備録
[シュナの旅] 宮崎駿
#大人の夏休み課題図書、その④。(そろそろ折り返し地点)

今から三十年以上前に宮崎監督がナウシカも、もののけ姫も完成させる前に、
アニメージュ文庫からひっそりと僅かなファンの為に描き下ろしてくれました。

ヤックルと供に貧しい国を救う為に黄金の穂を探しに異形の地をさ迷うシュナ。
ヒト狩から救い出されシュナを慕う宮崎美少女のテオ。

アニメでは実現しずらい終末感や心情のモノローグ、動いていなくても充分堪能
できる止め絵としての絵と色の魅力が一杯の宮崎ワールド全開の一皿でした。




夏休み課題図書 男たちは北へ

2022-08-01 21:00:05 | 書評 読書忘備録
[男達は北へ] 風間一輝

#大人の夏休み課題図書、その1であります。

中年のちょっと真面目でないおじさんがルート4を青森を目指して走る物語。
作者は実際にこの道を自ら自転車で走ってから書いたという逸話が伝わりますが、
確かに最初慣れない自転車に徐々に慣れて行く様子や峠越えの描写など実際に
自分がペダルを漕いでいるような気になります。

ヒッチハイクの少年と出会ったり自衛隊の陰謀が絡んだり、宿の女将といい雰囲気に
なったりと色んな旅の要素がキチンと盛り込まれます。
主人公はスペンサーのようなハードボイルドな生き方と、思いを自転車にのりながら
殆どが一人称で物語ります。

自転車というものが自分の中を見つめながら独白をするのにとても適したものである
ことがわかります。
自転車を乗ること、それ自体がハードボイルドなのです。
 そしてこの夏は息子とちょっくら自転車の味わいを共有してやろうと計画している
僕なのです🎵 (。-人-。)(。-人-。)