invert 城島翡翠倒叙集 相澤沙呼
mediumに続く城島翡翠霊媒探偵シリーズ2段目、但し霊媒味少な目。
さて1作目で魅惑の城島翡翠の虜となった読者ファンにとっては待望の再登場であり、カバーの遠田志帆さんのイラストも相まってドンピシャ、といったところだろう。
実際本作は倒叙集、(倒叙小説とは倒錯美小説とは異なり、推理小説で最初に犯人が判っている構成の物を言う。翡翠嬢の倒錯美に溺れる艶姿を期待する読者はご注意なされよ:それは僕だ(笑))刑事コロンボ、古畑任三郎タイプの三作の短編集だ。
それぞれ犯人は、
1女性経験に疎いコンピュータープログラマー、
2小学校の女性教師、
3警察OBの探偵会社の社長、といった面子が城島翡翠の追求を逃れようと足掻くが、そこは城島譲、きっちりとそして美貌と魅力であざとく犯人を嵌めるというもの。
本書の読者は基本的にはミステリー好き、兼、城島翡翠ちゃん大好きファン、といった分類だ。
レビューを見ると賛否あり、賛多めであるが、これも上記の読者層を確保した作者相澤氏の功績といったものだろう。
わが家でも同様で、まず、高3 JKの長女がちゃっかりと父の懐からこの書籍代を拝借し、いち早く読了後、父親に下げ渡すとと同時に、ハヨ読メ、スグ読メ!の叱咤催促であった。
自分の評価はそのプレッシャーのおかげさまで、シビア、辛口であるもご容赦願おう。
この本、或いはこのシリーズは魅力的な女性探偵が主人公のミステリー、と括った場合にはとてもよく出来ている。
キャラクターの所作もセリフ回しも期待値通りで実にアタリのTVドラマの様だ。
だから、読者はこの世界観はこういうもの、ここの
住人たちは、こういう風にふるまうもの、、、と無意識に当てはめて読み込んでいる。
いわゆる、お約束の世界だ。そのお約束の中で読んだ場合にこの本の作品は、とても満足値が高い、よくできている、☆4つ以上だ。
だが、このように、お約束内でよくできているモノにおいてはその世界の外から眺めていたり、メタ的に俯瞰して視るひねくれ者にとっては、弱点が現れる。
例えば、何故、犯人は殺人を起こさねばならないのか?ほかの選択肢はないのか?
探偵は何故犯罪を解決するのか?なぜ被害者は死ぬのか?死なない被害者ではダメなのか?
といった、そもそも論的な疑問は出さないのがお約束である。
そのため、他の、その疑問に正対し挑む作品、文学作品や歴史小説、ノンフィクションなどの著作物には及ばない。深みも 優れた芸術品に備わる相剋する美意識といったものはまとえない。
或いは、作中、特に1作目に出てくる、オタクの犯人を手玉に取る城島翡翠嬢の愛らしさ美しさについても、自分には好感度を微妙に飛び越して気持ち悪さ、座りの悪さを覚えてくる。
翡翠のドジっ子ぶり、メガネっ子ぶりのセメ具合も、オタク男子をくすぐる理系に弱いカワイイ女子ぶりも、きっとステキだろう。だがファッションもメイクもフレグランスも、詰めていれば詰めているほど痛クなっちゃうのだ。
きっと、この作者、相澤さんは女性ってキライなんだろうな。。とか、
或いは、つい最近、キレイな人に酷い目にあったのかな。。。。なんて印象まで持ってしまうのだ、
うーーーん、、?
果たしてこのオヤジ探偵の洞察っていかがだろうか?
合っているのかな?それともてんでマトハズレ。。?