幻想小説周辺の 覚書

写真付きで日記や趣味を書く

怪談KAIDANN 怖い間取り

2022-08-17 03:28:00 | 怪談
事故物件怪談 恐い間取り  
事故物件住みます芸人松原タニシ

芸人の怪談本としては面白い というか 怖い。
特にラスト近くになるとネタバレになるが、本人松原自体が事故物件の磁場、というか、ある不明の環境に侵されて、カメラに写る自分の顔が他の人に比べ黒さが顕著になりついには真っ黒になっていってしまった、という部分が特に気持ち悪く怖い。
まるで恐怖新聞みたいじゃないか! 事故物件に一日住むと寿命が百日縮む、というのは実際にありそうな感覚である。
だが、その後、本書もシリーズ化されて、関連本やテレビ番組として採り上げられたり、恐い間取り2の続刊が出たりしているから松原氏はどうにか、この危機を脱したのだろう(いや、いまだ、生命の危機なのかも・・・)

芸人としても事故物件芸人として認知され仕事が来るようになったのだろうから、結果オーライである、芸人というのは命を削ってでもネタを当てたい、仕事が欲しい・と考えざる負えない、ある意味ホラーな存在なのだな・・と思った。

欲を言えば、この道の端くれとしてアドバイスさせていただくとすると
①恐い、ではなくて、怖い、だと思う。恐いの場合は存在自体が凶悪、怖いは受け手の心理状態。
 今回の場合、間取り、事故物件の恐さよりも、そこに住んでみた筆者の体験談・恐怖体験が文章の主要部分であるから恐い、よりも怖い、が相応しい。
②恐い間取り、とあり、各体験談の冒頭に間取りが掲載されているのだが、関連性が微妙に薄い、ベクトルがきちんと合ってない気がした。
恐い間取り、であるならばやはり、この部屋とこの部屋のつながりがおかしい、とか、風水的にあり得ない場所に便所がある、とか、やたらモダンだけど夏は暑く冬は寒い大きなガラス建具、とか建築的なものと恐怖の源泉が合致していないとイケナイのである。
だから、本書のタイトルは、恐い間取り、では無くて、怖い事故物件に住んでみた、が正鵠を得ている。
まあ正しい、が、キャッチコピー的に正解か否か、という点では相応しくないかもしれない、この辺りが難しく、コワいところなのだろう。






映画レビュー ファントムスレッド

2022-08-17 03:18:00 | 映画レビュー
#ファントムスレッド #監督ポールトーマスアンダーソン 
#主演ダニエルデイルイス 2017年アメリカ 
アカデミー賞衣装デザイン部門賞受賞 他6部門ノミネート














なんというか明治大正の日本文豪の体面・体裁は絶対失うことができないけど、その実体はコンプレックスと女性に対する奥手とエロをこじらせたフェチ愛、みたいな空気感に全篇満ち滴っている。

食材に漱石と太宰を足して、花袋の鍋で煮込み、秘伝の川端の隠し味で仕上げたイマイチの懐石風創作料理って感じだ。
実に味わい深くギリギリの線で下賎に縁から堕ちないで留まっている(コレ、褒めコトバ)

ダンディーでハンサムで知的で成功しているドレスクリエイターの主人公を演じるのは本作で引退宣言のダニエル・デイ・ルイス。
食堂で見初めた田舎育ちの教養もセンスもないが、理想的なドレスの為にあるようなプロポーションの持ち主のウエイトレスを自宅兼工房に招き、やがて彼女と奇妙な関係性を持つに至ってゆく・・・


















役者が主役からヒロインから助演まで、実に名演技!少しも作り物っぽさがなく、役者と映画のキャラクターが完全にシンクロしている。

露骨なラブシーンや扇情的なヌードやエロは地雷処理班の任務のように慎重の上にも慎重に、ラストまで回避する事に成功している。
観客はいつこのあやういバランスがエロポルノに振れるのか?はたまたサイコホラーのバッドエンドに壊れてゆくのか?とハラハラドキドキしながら画面から目をそらせない。

そして期待外れに、静かに、平穏に物語の幕は降りる。
そして観客は気付くのだ。なんと意味深な、中身の詰まった豊饒でグラマラスな肩透かしかと・・・・!
判りづらい表現になってしまって恐縮だが、褒めコトバである。

映画レビュー グレイテストショーマン

2022-08-17 03:12:00 | 映画レビュー











#グレイテストショーマン

台風10号の情報を見ながら自宅で鑑賞
批評家に酷評されつつ大ヒットし、劇中歌も何百万回も流された、という作品。
アメリカ南北戦争時代。黒人差別さえ全盛でましてや障害者、マイノリティへの偏見も福祉も現代とは全く違う頃の物語。
作品自体の面白さとは別に、LGBT という言葉ブームがこの映画と共に生まれて認知、浸透していった。
その便乗した社会運動とか人権団体とかポリティカルコレクトネスとかは鼻持ちならなくて好きになれないが、映画とは本筋とは別に観るものの心に刺さり
深く鮮烈に刷り込み、刻みつけられるシーンがほんの3カ所でも発見できて出逢えることができれば、その映画は自分にとって大成功であり大収穫だ。

そういう意味で、この作品は僕の胸にも大いに刺さり、シーンが鮮烈にリフレインしている。他の皆さんにもそんな位置付けの、いい映画だったのだと思う。

気に入ったので色々な関連情報や評論を聴いてみたがなかなか興味深く、底が深い。
映画評論家の町山智浩やオタキング岡田斗司夫の解説は実に役にたった。
興行師ピーターバーナムの史実、当時の社会状勢。ヘイトの圧力。
障害者や見世物フリークスとして彼に関わった団員たちの意外に幸福だった生涯。
実際の映画のアクターたちの造られた部分と実の部分。
エレファントマンやダンボなど他のメジャーな作品世界とリンクし共有される豊饒な作品背景・・。
そんな雑多でメタな情報を知った、というか理解したうえでこの映画を再見すると更に二度美味しく楽しむことができる。
いい本といい映画は、同じ良さと、違う楽しみ方があるものだ。どちらも自分には欠かせない人生の必須栄養素である(笑)














映画レビュー ヒッチコック サイコ

2022-08-17 03:08:00 | 映画レビュー
『サイコ』(Psycho)
監督 アルフレッド・ヒッチコック
原作 ロバート・ブロック
製作 アルフレッド・ヒッチコック
出演者 アンソニー・パーキンス
ジャネット・リー
音楽 バーナード・ハーマン
上映時間 109分

真面目に見直すと実に緻密に作られています
モノクロームであえて勝負してくる必然性
カメラワークの美しさ、どこを切っても絵になる画面、

さんざんリメイクやパロディされてるシーンの数々ですが
オリジナルが持つ先進性は色褪せてないどころか
再制作の追従を許していません
ジャネットリーが美しいですね~( ☆∀☆)
美女が逃亡したり怯えてたりする姿を観るのは格別です




読書レビュー 戦場のコックたち

2022-08-17 03:03:00 | 書評 読書忘備録
戦場のコックたち 深緑野分   349頁を読む(ーωー)

終戦の日に合わせて読み終えるべく進めていましたが、
ちょっと手こずりました。
翻訳物を読むように読書ペースをシフトするのにもたついてしまったせいです。

ヨーロッパ戦線での調理担当兵と仲間たちが戦闘とは別に遭遇
する小さな事件、使用済みのパラシュートを集める兵の話や
だれも食べたくないほど不味い乾燥卵が大量に消えた事件、などの真相と背景を謎解きしてゆきます。
すぐに思い浮かばないけど、どこかの連ドラで見たような微妙な既視感を感じます。

戦場という大きな不条理であり大きな謎、何故自分は殺し殺され合わなければならないのか?
常に心の奥底では疑問を呈しながらも、戦場調理兵という日常に不可分な職務を担当する主人公には、戦争という極限状態にバランスを取るように小さな謎を解くといった代償行為が必要なのだと言いたいのでしょう。。。
わかるんですけど、、!
戦場だったらもっと大事なこと考えろヨ!、とツッコみたくなってしまうのです。
生きるとか死ぬとか、殺すとか敵と味方とか、戦争の大義は?とか。色々ある中で、食いもんのことかよ?って正直思う。
その辺りのこの物語の基本スタンスが気になってしまい、謎解きはまあ面白いのですが、ちょっと物語に没入できずイラっ、モヤっとしてしまった。

戦場での料理の数々は題材として興味深い、
美味しそうなものも不味そうなものもあり
砂を噛むような味気無いものや苦いものも登場する。
謎解きよりも僕にはこれらの食、や料理に惹かれた。

でき得ればこれらの主題にもっと焦点を当て、この面から
戦争や人間の本質を浮き上がらせるといったスタンスでこの物語を読みたかった。と偉そうに感想を抱いてしまった。
どうぞ御容赦願いたい、深緑さん、ごめんなさい。