NHK音楽祭、第2日目、ユーリ・テミルカノフ指揮、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団、独奏ヴァイオリンは庄司紗矢香さん。
チャイコフスキープログラムで、最初は歌劇「エフゲニー・オネーゲン」から「ポロネーズ」、楽しい、明るいテンポ。指揮者も楽しそう。前から3列目の最右翼席で、指揮者の顔がよく見える。トロンボーンは目の前。
2曲目、庄司紗矢香さんの独奏で、バイオリン協奏曲ニ長調、素晴らしい音色のバイオリン。第1章のソロのカデンツァは、じっくりと聴かせてくれた。ときどき、笑顔を見せながら演奏する庄司紗矢香さん、指揮者と何度も共演しているということで、ときに指揮者を仰ぎながら。
アンコールはソ連時代の映画音楽。終わって、バイオリン奏者たちが、顔を合わせて、何の曲か話していたような気がした。
最後は、交響曲第5番、ホルンの静かな響きで幕開け、指揮者は最後まで真剣そのもの。最後にやっと笑顔。
本当に素晴らしい演奏。
アンコールは2曲。エルガーの「愛のあいさつ」と「くるみ割り人形」から。
NHK音楽祭2008
サンクトペツルブルク・フィルハーモニー交響楽団
2008年11月7日(金)19時
NHKホール
ユーリ・テミルカノフ 指揮
サンクトペツルブルク・フィルハーモニー交響楽団
バイオリン:庄司紗矢香
チャイコフスキー 歌劇「エフゲニー・オネーギン」からポロネーズ
バイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
交響曲第5番ホ短調 作品64
B席 1階R3列16番
久しぶりに立ち寄った紀伊国屋書店で、新書コーナーを覘いたら、本の題名とカバーの「『ちゃんと話せば分かってもらえる』は大間違いだ!」に目をひかれ、「はしがき」に元裁判官の著とあり、購入した。
痴漢冤罪がなぜ、起こるのか、裁判官の一人がどのような見方をしているか興味を持って、開いた。
痴漢と言われて「現行犯逮捕」された場合、「そもそも逮捕があった」かどうか疑問としています。「この人痴漢です」と名指しされて、「話せばわかる」と思って、駅の事務室に行くと、駅員はすぐ警察に連絡、現れた警官は「ここでは何だから、警察まで行って話を聞くから」と言われ、警察で話せば分かると思って、自分の意志で警察署まで行く。
ここで、やっと、逮捕されたと告げられる。逮捕状がないのだから、現行犯逮捕になるが、この一連の行動のなかのどこで逮捕されたのか、裁判所に提出する書面には、「駅のホームで逮捕された」と記載されるのが普通のようです。この時点では、本人の意思で駅の事務室に歩いている段階なので、逮捕されているわけでない。
痴漢の罪は法定刑自体が軽く、実際は罰金刑がほとんどだが、否認した場合は、3ヶ月かそれ以上身柄拘束される可能性があり、会社を首になるかもしれない、みっともない、という精神的圧力はかなり強烈、そのため、「話せばすぐ自由になれる」の言葉に「ウソの自白」をしてしまう場合が多いという。
警察署のなかでの取り調べは、「闇の中での取り調べ」で、「やっていない」といくら言っても、聞いてもらえない。しかも、痴漢で裁判になった場合、他に証拠がなくとも、被害者の供述証拠だけで有罪を認定しているのではないかと思われる判決も見られるという。だから、捜査官は、被害者の供述だけを調書にまとめればいいということになる。それに自白調書があればなおいいと。
この本は最後に「裁判所の内幕」として、刑事事件では、検察官が起訴した事件の99.9%に有罪の判決が出ていること。「裁判官は保身が第一」で、この保身のために裁判に手心が加えられてしまったり、変えられてしまうことと指摘しています。
「裁判官が法律のみに従って裁判するということは、現代の裁判で一番の根本です」と指摘し、同時に、この本に記載したことは「痴漢だけの話じゃない」と述べています。
本当に、そうだと思う。裁判官が国民のほうを向かないで、最高裁・権力のほうを向いている、そんな判決があまりにも多すぎる。
この本、読む価値あり。
著者:井上薫
出版社:NHK出版
定価:700円+税
発行日:2008年10月10日