32歳君のご機嫌が今日も悪かった
朝からムスッとしている
パチンコで負けて金がない事で面白くない事は知っている
それにプラスして
新人さんが俺と35歳君にすっかり打ち解けて楽しそうにしているのも
彼にとっては面白くない事なのだ
…
午前中に大きな仕事があり
それを終えて会社に戻った
普段の作業着に着替えて飯にしようぜって雰囲気
俺と32歳君は倉庫で着替えをする
新人さんは事務所の二階の和室で着替えをしている
35歳君はまだ仕事の現場に残っていたので
倉庫には32歳君と俺の二人だけだった
ずっと朝からご機嫌が悪いので
『どした~?何が面白くない?』
『…』
『パチンコで金が無いからか?』
『…』
『なんだよ~どうしたんだよ~何が面白くないんだよ~』
『…』
…
完全に俺をシカトする作戦のようで
俺は彼に対して珍しく…って言うか今回が初かもしれないが
ブチッと切れた
切れた音が頭の中で聞こえた
『…シカトか。ホントにオメェは気分の悪いヤツだな~』
って言葉を吐いた瞬間に
俺の心の中で我慢していた事
年下だけど先輩だと思って許してきたことの数々が一気にこみあげて来て
地震速報の時の非常ベルみたいなものが頭の中で鳴り響いた
…ヤバイ
このまま熱くなったら俺は彼に暴力をふるってしまう…
しかも軽い程度じゃ済まないヤツをやってしまう…
…
…
あのね…俺ね
普段から我慢して我慢している事が一気に決壊すると
自分で自分を止められなくなって超暴走してしまうんです
俗に言う『暴れる』です
コレになると最後の最後、ボッコボコにしてしまうまで自分を止められないので
ブチ切れ無いように気を付けているんです…
地震速報の非常ベルが聞こえてるうちに
俺はどうにか気持ちを切り替えようとして
『俺だからこうして言うのであって、他の人たちもお前のその態度にうんざりしてるぞ』
っていう忠告にとどめた
それをどう受け止めたのか知らない
彼は着替え終えると無言のまま自分の車に乗って
飯を食いに家に帰って行った
…
この非常ベルが鳴っても自分を止められなかった時
今まで何度かあるんです
…高校時代です
俺の二つ下の弟が中学生でした
超が付くほど学校では不良だった弟です
ちなみに俺は不良でも何でもないのですよ
…とある日
俺が自分の部屋でゴロゴロしていたんです
そこへその弟が来て
『兄(にぃ)の自転車借りるぞ!』
俺は何処へ行く予定もなかったのだけど
後で何か出かける用事が出来たら困るから
『ダメだ~貸さない~』って返事をした
『いや、使ってねぇならいいべ?借りるぞ?』
『だからダメだって』
『使ってねぇんだからいいべよ』
…このやり取りをしているうちに
脳内で例の警報音が鳴っていた
弟が自転車に乗って出発しかけたその瞬間
俺は部屋から裸足で外へでて
弟の胸ぐらをつかんで顔面をぶん殴っていた
もう死ねばいいと思って殴った
しかし怒りが最高潮に沸騰した状態で殴ったので
気持ちよく顔面にヒットしなかった
人の事を、しかも顔をこぶしで殴るのは初めてだった
殴られた弟は自転車を倒して逃げて行った…
なんか悪い事したな…と思ってたら
俺の左手の中に弟のワイシャツのボタンが入っていて
地面にも散らばっていた…
俺は部屋に戻って
何かしているうちに寝ていた
夕方、目が覚めて
その頃になって弟が家に帰ってきた
随分と顔面が腫れあがって変形している
『え?お前どうしたのそれ』
『さっき殴っただろうよ!』
…
ヒットしてなかったと思ったけれど
思い切りヒットしていたようで
弟の左目の横が変色してゴルフボールでも入っているんじゃないかと思うぐらい腫れて
ちょっと離れて顔を見ると
弟の顔に見えないぐらい変形している
俺は思わず笑った
『普通、笑うかよ~最低だなオメェ』
この一件があってから
弟は俺に歯向かわなくなったのだけれど
大人になって俺よりも体が大きくなり
お仕事も普通の仕事じゃない方面に行ってしまい
顔つきも映画の悪役以上に怖いのに
『喧嘩じゃ兄貴に勝てない』と言う
いやいやいや…もうお前に勝てない
勝つ自信が少しもない
…怒りで我を忘れて相手の事をボッコボコにした事を
俺は今でもとても反省している
だから今日も必死でこらえた
言葉使いはちょっと乱暴だったけれど
32歳君に手は出さなかった…
きっと想像するに
俺があの時ブチ切れていたら
スグそばにあった倉庫のシャッターを下げる棒
コレを手にしてメッタクソに殴りつけていたと思う
…
ホントに怒りに我を忘れるとそうなんです…
だから
もう20年近くそんなになった事がない
堪えてよかった
…
ただ、明日も明後日もヤツの態度が悪ければ
俺はカチンと来るかもしれない
警報音が鳴り響いているときに我慢できるようにしないと
新聞に載っちゃうかもしれない…(ち~ん
朝からムスッとしている
パチンコで負けて金がない事で面白くない事は知っている
それにプラスして
新人さんが俺と35歳君にすっかり打ち解けて楽しそうにしているのも
彼にとっては面白くない事なのだ
…
午前中に大きな仕事があり
それを終えて会社に戻った
普段の作業着に着替えて飯にしようぜって雰囲気
俺と32歳君は倉庫で着替えをする
新人さんは事務所の二階の和室で着替えをしている
35歳君はまだ仕事の現場に残っていたので
倉庫には32歳君と俺の二人だけだった
ずっと朝からご機嫌が悪いので
『どした~?何が面白くない?』
『…』
『パチンコで金が無いからか?』
『…』
『なんだよ~どうしたんだよ~何が面白くないんだよ~』
『…』
…
完全に俺をシカトする作戦のようで
俺は彼に対して珍しく…って言うか今回が初かもしれないが
ブチッと切れた
切れた音が頭の中で聞こえた
『…シカトか。ホントにオメェは気分の悪いヤツだな~』
って言葉を吐いた瞬間に
俺の心の中で我慢していた事
年下だけど先輩だと思って許してきたことの数々が一気にこみあげて来て
地震速報の時の非常ベルみたいなものが頭の中で鳴り響いた
…ヤバイ
このまま熱くなったら俺は彼に暴力をふるってしまう…
しかも軽い程度じゃ済まないヤツをやってしまう…
…
…
あのね…俺ね
普段から我慢して我慢している事が一気に決壊すると
自分で自分を止められなくなって超暴走してしまうんです
俗に言う『暴れる』です
コレになると最後の最後、ボッコボコにしてしまうまで自分を止められないので
ブチ切れ無いように気を付けているんです…
地震速報の非常ベルが聞こえてるうちに
俺はどうにか気持ちを切り替えようとして
『俺だからこうして言うのであって、他の人たちもお前のその態度にうんざりしてるぞ』
っていう忠告にとどめた
それをどう受け止めたのか知らない
彼は着替え終えると無言のまま自分の車に乗って
飯を食いに家に帰って行った
…
この非常ベルが鳴っても自分を止められなかった時
今まで何度かあるんです
…高校時代です
俺の二つ下の弟が中学生でした
超が付くほど学校では不良だった弟です
ちなみに俺は不良でも何でもないのですよ
…とある日
俺が自分の部屋でゴロゴロしていたんです
そこへその弟が来て
『兄(にぃ)の自転車借りるぞ!』
俺は何処へ行く予定もなかったのだけど
後で何か出かける用事が出来たら困るから
『ダメだ~貸さない~』って返事をした
『いや、使ってねぇならいいべ?借りるぞ?』
『だからダメだって』
『使ってねぇんだからいいべよ』
…このやり取りをしているうちに
脳内で例の警報音が鳴っていた
弟が自転車に乗って出発しかけたその瞬間
俺は部屋から裸足で外へでて
弟の胸ぐらをつかんで顔面をぶん殴っていた
もう死ねばいいと思って殴った
しかし怒りが最高潮に沸騰した状態で殴ったので
気持ちよく顔面にヒットしなかった
人の事を、しかも顔をこぶしで殴るのは初めてだった
殴られた弟は自転車を倒して逃げて行った…
なんか悪い事したな…と思ってたら
俺の左手の中に弟のワイシャツのボタンが入っていて
地面にも散らばっていた…
俺は部屋に戻って
何かしているうちに寝ていた
夕方、目が覚めて
その頃になって弟が家に帰ってきた
随分と顔面が腫れあがって変形している
『え?お前どうしたのそれ』
『さっき殴っただろうよ!』
…
ヒットしてなかったと思ったけれど
思い切りヒットしていたようで
弟の左目の横が変色してゴルフボールでも入っているんじゃないかと思うぐらい腫れて
ちょっと離れて顔を見ると
弟の顔に見えないぐらい変形している
俺は思わず笑った
『普通、笑うかよ~最低だなオメェ』
この一件があってから
弟は俺に歯向かわなくなったのだけれど
大人になって俺よりも体が大きくなり
お仕事も普通の仕事じゃない方面に行ってしまい
顔つきも映画の悪役以上に怖いのに
『喧嘩じゃ兄貴に勝てない』と言う
いやいやいや…もうお前に勝てない
勝つ自信が少しもない
…怒りで我を忘れて相手の事をボッコボコにした事を
俺は今でもとても反省している
だから今日も必死でこらえた
言葉使いはちょっと乱暴だったけれど
32歳君に手は出さなかった…
きっと想像するに
俺があの時ブチ切れていたら
スグそばにあった倉庫のシャッターを下げる棒
コレを手にしてメッタクソに殴りつけていたと思う
…
ホントに怒りに我を忘れるとそうなんです…
だから
もう20年近くそんなになった事がない
堪えてよかった
…
ただ、明日も明後日もヤツの態度が悪ければ
俺はカチンと来るかもしれない
警報音が鳴り響いているときに我慢できるようにしないと
新聞に載っちゃうかもしれない…(ち~ん